『君戀しやと、呟けど。。。』

此処は虚構の世界です。
全作品の著作権は管理人である紫草/翆童に属します。
無断引用、無断転載は一切禁止致します。

『愛しい想い』 vol.27

2006-06-17 16:02:21 | 小説『愛しい想い』
「久し振り」
 深夜の待合室は、怪談話にはカッコウの場所だった。
 在り得ないことの連続は、私を一人のお莫迦なオバサンと化した。
「あなた、誰?」
 やっと言葉が戻った時、私たちは1時間もの時間をただ黙って過ごした後だった。

「北野優一。魅子の婚約者だよ」
 …
 …
 …
 …
 …
「優一・・、ずるい。そんな云い方するなんて」
 私は、心の奥に無理矢理押し込めてきた、優一という人間への思い出と執着と、そして愛情を一気に放出した。
 涙は、きっと涸れない。

 私を婚約者なんて云うなんて、冗談でも許さない。
 優一が結婚したことを、私が知らないとでも思っているの。
 私は祝ってなんか、いないわ。
 相手の人が、優一の隣に並ぶ女の人が憎くて憎くて堪らなかった。

 私の中に押し込めていた、最后の嫉妬が醜く吹き出してきた。

 きっと一番逢いたかった人。
 でも、一番逢いたくなかった人。
 隣に入った彼女を母と呼んだ。
 なら、いつか優一の奥さんも来るでしょう。
 私は、これ以上、大人の仮面を被って、鉄火面のように取り繕うことなんかできない。一度、溢れてしまった想いは、自分ではどうすることもできない。

「優一」
「ん!?」
「私を殺して」

「いいよ」
 優一の瞳に、迷いはなかった。。。

            To be continued
コメント    この記事についてブログを書く
« 父の日 | トップ | 『愛しい想い』 vol.28 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

小説『愛しい想い』」カテゴリの最新記事