『君戀しやと、呟けど。。。』

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『残り香』5

2009-01-30 11:17:43 | 作品b 【掌編】
「あなたは…」
 絶句する彼女の躯からは、あの日と同じ香りが漂っていた。
 再び逃げ出そうとする彼女の腕を、思わず掴んだ。
 悲鳴を上げられても無理はない。それをよく分かっていた心算だったのに、失敗した。

 救護室で彼女を介抱していると、派遣の上司という人間が来た。
 彼は複雑な事情を知らないようだ。
 自分が介抱しているからと引き取ってもらい、意識の戻るのを待つ。

 やがて彼女は目を覚ました。
「話をしたい。今は、それだけだ」 
 驚きすぎたのだと、後に彼女は語った。それでも確かに、彼女は頷いた。
                        【終わり】

                             著作:紫草
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