★
欲望に 負けて拾った 小さな子
晩夏に連れて帰った 子猫
真っ黒で やせっぽっちで
でも 擦り寄ってくるのが可愛くて
思わず胸に抱いたのは 俺
その小さくて捨てられてた子は 産まれてまだ一年くらいだった
『避妊をした方がいいでしょう』
そんなことは分かってる
二匹以上に増えたら 困る
事務的に話を聞いて 入院の手続きをする
控え室で 妻が呟いた
「赤ちゃん、産みたかったよね…」
そして こんなに愛嬌たっぷりなのに と
手術後 一晩いなくって
その夜 真っ暗な台所で泣いていた妻
声を殺して 肩震わせて
一匹の つい先日まで存在すら知らなかった猫のために
涙を流す…
こいつは そういう奴
そんな悲しい背中に 声をかけることはできなかった――
★
著作:紫草
欲望に 負けて拾った 小さな子
晩夏に連れて帰った 子猫
真っ黒で やせっぽっちで
でも 擦り寄ってくるのが可愛くて
思わず胸に抱いたのは 俺
その小さくて捨てられてた子は 産まれてまだ一年くらいだった
『避妊をした方がいいでしょう』
そんなことは分かってる
二匹以上に増えたら 困る
事務的に話を聞いて 入院の手続きをする
控え室で 妻が呟いた
「赤ちゃん、産みたかったよね…」
そして こんなに愛嬌たっぷりなのに と
手術後 一晩いなくって
その夜 真っ暗な台所で泣いていた妻
声を殺して 肩震わせて
一匹の つい先日まで存在すら知らなかった猫のために
涙を流す…
こいつは そういう奴
そんな悲しい背中に 声をかけることはできなかった――
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著作:紫草