天下御免のすっとこどっこい

自分が読み返して「楽しかった」と思えることを書き綴っています。

『手討』市川雷蔵主演

2012年07月16日 | 時代劇(テレビ・映画)
京都みなみ会館で催されている「市川雷蔵映画祭2012」。
昨日(7/15)『薄桜記』に続いて『手討』(1963年大映)を観ました。

 青山播磨…市川雷蔵
 お菊…藤由紀子
 新藤源次郎…若山富三郎
 近藤登之助…成田純一郎

 監督…田中徳三


青山播磨にお菊といえば番町皿屋敷。そんなお話かと思いきや…ところがどっこい。
家光のころの江戸の初期。すでに戦乱の世は姿を消しつつあり、旗本たちの不満が噴出しだしたころ。
外様大名の勢力を抑えるのに苦慮していたため、旗本の立場を犠牲にせざるを得なかった幕府、そしてその犠牲となってしまった青山播磨とお菊の悲恋物語となっておりました。

家光や旗本諸侯の前で加賀前田藩主が能を舞っていた。その折、大あくびをしてしまった旗本新藤源次郎。
立腹した加賀藩主は老中に働きかけ、源次郎は切腹を言い渡される。
大久保彦三と青山播磨が異議を申し立てても、すでに太平の世となりつつある今、旗本の世は終わったと反対に思い知らされた二人。
結局、源次郎は加賀前田藩上屋敷門前で切腹。
それをきっかけに不満を持つ旗本たちは徒党白柄組を結成。
前田藩の行列を馬で横切った白柄組。前田は島津、伊達藩と共に白柄組の身柄明け渡しを幕府に要求。
解決策として播磨に前田藩の縁者との婚姻進めようとした。
見合いの茶会で断った播磨。
婚姻を言い交わしていた侍女のお菊は嫉妬から、家宝の絵皿を故意に割る。
故意で割ったと知った播磨はお菊を手討に。そして、縁談を断ったことから、白柄組の責任を一身に受け、切腹。切腹の場までの一室には花嫁衣裳を身に着けたお菊が静かに眠っていた。

よくできた脚本です。感心しました。(エラソーですが)
ぐいぐい物語にのめりこんでしまいました。
前田家の門前で潔く切腹する若山富三郎さん、前半少しの出番ですが強烈な印象を残しています。
雷蔵さんに良かったとほめられたらしい青山家の腰元(?)お仙の真城千都世さん、本当に1,2場面しか出番がないのですが、ちょっと嫉妬深い気のきつそうな女性が良かったと思います。
「お菊さんは粗相で割ったんじゃないわよ。」みたいなセリフの表情が良かったよかった。

前半はラブラブな播磨とお菊。
来世でも一緒と約束はしてくれていたが、見合いの席に行ってしまった播磨の心が信じられず、お菊さんがお皿を柱に打ち付けてしまう場面。気持ちが手に取るようにわかって、同情してしまいました。
しかし、女心と男心は違うもの。そして、粗相でなく、故意に割ったと分かった播磨。「皿とお菊がどちらが大事か試したのじゃな。」「お許しください。」「許せ?お前はそれでよかろう。裏切られた播磨の心はどうなるのじゃ。」みたいなやり取りの場面がいちばんのみどころだと思います。
雷蔵さんのお菊があまりにも好きすぎて許せない、そんな目が良かった、本当よかった。

手討になったお菊。兄夫婦が「どうしてお手討なんてなったんだ。」と悲しんでいたかと思うと、死装束の播磨をみて、「良かったなあ、お菊。」と今度はうれし涙。手討にした張本人が目の前にいるのに。
歌舞伎的な演出に思わず笑ってしまいました。面白い。大好きです。

最後は切腹の場まで播磨が廊下を歩く場面。庭には関係者が涙を流し、さて、場が目の前に、右に目をやると婚礼衣装をまとったお菊が眠っている。
切ない、やるせない、なんともいえない気分になりました。

本当何もかも救いようのない、私の大嫌いなジャンルのお話でしたが、傑作だと思いました。
こんな感想は初めてかも知れません。
観てよかったです。

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