はじめに気づいたのはペッピーだった。
ファルコ機周囲の空間が、凝縮されたように歪んで見える。
「気のせいか!? ヤツの機体が……ゆがんでいる?」
ペッピーの言葉に、フォックスとスリッピーの二人も、高速飛行するファルコ機を肉眼で凝視した。ペッピーの言うとおり、ファルコ機が……ファルコ機をつつむ空間全体が、かげろうのように揺らめいている。
「ひえっ! こっちに向かってくるよ!」
スリッピーが悲鳴を上げた。その通り、ゆらめく空間を纏ったまま、ファルコ機がスリッピー・ペッピーの二機へ猛然と近づいてくる。
熟練の兵士としての勘がペッピーの身体を支配し、接近するファルコ機に照準を合わさせた。間髪入れず、プラズマ冷却弾が発射される。
身をひるがえす。そうとしか表現しようのない動きでファルコ機が上方に旋回し、2発の弾丸をかわした。苦々しく、ペッピーが舌打ちする。
(当てられんか。今のヤツには)
「スリッピー! とにかく逃げろ! ヤツから離れるんだ!」
「ひぁ!? ああああっ?」
ペッピーは、機を空中静止の状態から解き放ち、さらにブーストを開いて上空へと発進させた。
だがスリッピーは? 恐怖と混乱で、慣れ親しんだはずの機器の操作法も吹き飛んでしまっている。指と視線はもたもたとうろつくだけで、事態を好転させる措置はなにも取れていなかった。
「スリッピー!!」
フォックスとペッピーが叫んだ、その刹那。
ファルコ機は、スリッピー機を撫ぜるようにかすめて飛び、機体周囲の重力場は、アーウィンの構造上もっとも脆弱な部分――重力を微細に制御するためのグラビティ・ブレード――を、もぎ取っていった。
初めてにしては、うまくやれたな……
ファルコはクチバシの端で少しだけ笑った。