モニタ上のファルコ機が射程に入り、照準が固定され瞬いた。反射的に、フォックスは発射ボタンを押し込む。
プラズマ冷却弾が発射され、ファルコ機の軌跡を追って一直線に飛ぶ。狙いは正確だった。命中、するか。
ファルコは、桿をグッと握り締めると、渾身の力で引き上げた。
機首が空中を垂直におどりあがり、天を突くかたちになる。
(なっ)
生き物のようなその動きを見て、フォックスは思わず息を呑む。
ファルコは桿を引き上げたまま、左に半回させた。垂直に立ち上がっていた機体はのけぞり、寝返りをうつように宙返りし、アーウィンの頭上におどりでた。
(すごい)
そう思わずにいられなかった。微細な重力制御の助けなしに、あんな芸当をやってのけるとは。ヤツの体には、オレたちの知りえない感覚が、知りえない能力が備わっている。「飛ぶ」ということを知らない種族には決して理解できることのない能力が。
(お前がうらやましいよ)
ハッと気づくと、フォックスは桿を切った。そのまま直進しては、散布されたプラズマ冷却粒子のなかに飛び込んでしまう。アーウィンもプラズマエンジンを推進機関としている以上、自らが放った冷却弾で自滅する可能性があることは、常に頭に入れておかなくてはならない。