「悩む力」、題に惹かれて読んでみました。
深くうなずける箇所を抜粋致します。
P156-157
何が生きる力になるのか
・・いまの社会では、否応なく世の中から見捨てられた気分で孤立している人も
少なくないと思います。そうした人たちだけではありません。おそらく、活動的に
仕事をし、懸命に自己実現を果たそうとしている人の中にも、空虚なものが広がっ
ているのではないでしょうか。私自身、自分の生き甲斐とうものを考えてみて、い
ったい何があるのだろうと、答えが出ないことがありました。たぶん、お金や学歴、
地位や仕事上での成功といったものは、最終的には人が生きる力にはなりきれない
のでしょう。
では、力になるものとは何なのかと問うていくと、それは、究極的には個人の
内面の充足、すなわち自我、心の問題に帰結すると思うのです。
ここで私は再び、<夏目漱石の>『心』の先生のことを思いだします。
「自由と独立と己とに満ちた現代に生れた我々は、其の犠牲としてみんな此淋しみ
を味わわなくてならないでしょう」と先生は言いました。
先生はお金に困っているわけでもなく、厭世的ではあるけれども、ひきこもって
いるわけでもありません。その点では、何不自由なく生きています。その先生に死
を考えさせてしまうのは、やはり自我の孤独なのです。
・・・・
「人は一人では生きられない」とよく言います。それは経済的、物理的に支えあわ
ねばならないという意味だけでなく、哲学的な意味でも、やはりそうなのです。
自我を保持していくためには、やはり他者とのつながりが必要なのです。相互承認
の中でしか、人は生きられません。相互承認によってしか、自我はありえないので
す。
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