悪逆皇帝天誅の日から半年が過ぎた頃、藤堂は千葉と入籍した。式も無く華やかな宴も無い。それでも千葉は満足していた。ただ傍にいる。今の関係が自分達にはふさわしい。
「藤堂中佐」
「千葉」
結婚してからも二人はそう呼び合っている。だから彼らを知る者も、結婚したことに気が付かない者の方が多かった。
今日2人はかっての藤堂の道場の跡地にいた。道場そのものは跡形もなく消し飛んでいたが、小さな離れが無事残っていた。たった数日の休暇。
それでも入籍を知った扇がせいいっぱい手を回してようやく実現した。
「この大変なときに休暇など」
渋る藤堂に「少しでも2人だけの時間が女性には大事だから」と
半分命令のように休暇を押し付けた。
四聖剣1の剛の者などと言われた千葉だが、こうして2人きりになってふとした拍子に「きょうしろうさん」
少したどたどしく呼ぶ声に、(私の妻なのだ)とようやく実感する藤堂である。