プロポーズ小作戦6
天子に付けられた教育官は世界中から星刻がよりすぐった超一流の教師である。その教師達は毎日星刻に天子の御学業の報告をする。
ここ数日教師達からは、天子の努力や能力を賛辞する報告が続いている。。
女官や文官達も、このところすっかり落ちつかれ天子様らしくご成長ですわと報告してくる。
「ここ数日大変明るくおなりで、食欲もでていますし、そうそう、お召し物のサイズが変わられました。天子様もお年頃ですから」。お付の高級女官が報告する。
本来ならそれらの報告は星刻を喜ばせるはずだ。だが、彼はここ数日荒れていた。
医師は点滴を取り替えようと、ノックしようとした。
ガッシャーン
突然の大きな音に医師の動きが止まる。
(やれやれまたか)
何の音か、見なくてもわかる。病室の高貴な患者が点滴台を叩き割った音だ。
初めてのときは驚いたが、何事にも慣れてくるものだ。
数分後、医師がそっとドアを開けると、高貴な患者は青白い顔で横たわっていた。
気を荒げすぎて吐血したらしく、床やシーツに鮮血の色がある。
医師は無言で点滴台を新しいものに代え、新しい輸液をつけた。
血圧も脈拍も体温も自動的に計測されるため、この部屋でやることは少ない。
医師は無言のまま部屋を去った。
医師は思う。
正直なところ、英雄だかなんだか知らないが、あの意固地な青年を扱うのはもう疲れた。
医師はブリタニア人である。大司馬だろうと、異国人の医師には青年に仕える理由は無い。
しかも一度もまともに診察させない。薬を交換し出血が多い場合には輸血する。熱が出れば解熱剤を打つ。ただ単に医療行為をする道具として使われている。
人身売買目当てで密入国した身ではあまり公然と文句も言えないが、そろそ一ヶ月である。本国の組織とも連絡がとれず、ストレスも溜まってきた。館の女を適当につまみ食いしてウサ晴らししているが、早く本業に戻りたいものだ。
星刻は天子付の高級女官からの報告書を破り捨てた。床に落ちた紙が血溜まりで赤黒く染まる。
『ここ数日とてもおきれいに』
『天子様もお年頃』
そんなことは報告されなくてもわかっている。
天子様のように愛らしく美しい方が他にいるわけが無い。
彼女がもう小さい子供ではない事ぐらい知っている。
ジノが来てから、天子からの電話が無くなっていた。
天子に付けられた教育官は世界中から星刻がよりすぐった超一流の教師である。その教師達は毎日星刻に天子の御学業の報告をする。
ここ数日教師達からは、天子の努力や能力を賛辞する報告が続いている。。
女官や文官達も、このところすっかり落ちつかれ天子様らしくご成長ですわと報告してくる。
「ここ数日大変明るくおなりで、食欲もでていますし、そうそう、お召し物のサイズが変わられました。天子様もお年頃ですから」。お付の高級女官が報告する。
本来ならそれらの報告は星刻を喜ばせるはずだ。だが、彼はここ数日荒れていた。
医師は点滴を取り替えようと、ノックしようとした。
ガッシャーン
突然の大きな音に医師の動きが止まる。
(やれやれまたか)
何の音か、見なくてもわかる。病室の高貴な患者が点滴台を叩き割った音だ。
初めてのときは驚いたが、何事にも慣れてくるものだ。
数分後、医師がそっとドアを開けると、高貴な患者は青白い顔で横たわっていた。
気を荒げすぎて吐血したらしく、床やシーツに鮮血の色がある。
医師は無言で点滴台を新しいものに代え、新しい輸液をつけた。
血圧も脈拍も体温も自動的に計測されるため、この部屋でやることは少ない。
医師は無言のまま部屋を去った。
医師は思う。
正直なところ、英雄だかなんだか知らないが、あの意固地な青年を扱うのはもう疲れた。
医師はブリタニア人である。大司馬だろうと、異国人の医師には青年に仕える理由は無い。
しかも一度もまともに診察させない。薬を交換し出血が多い場合には輸血する。熱が出れば解熱剤を打つ。ただ単に医療行為をする道具として使われている。
人身売買目当てで密入国した身ではあまり公然と文句も言えないが、そろそ一ヶ月である。本国の組織とも連絡がとれず、ストレスも溜まってきた。館の女を適当につまみ食いしてウサ晴らししているが、早く本業に戻りたいものだ。
星刻は天子付の高級女官からの報告書を破り捨てた。床に落ちた紙が血溜まりで赤黒く染まる。
『ここ数日とてもおきれいに』
『天子様もお年頃』
そんなことは報告されなくてもわかっている。
天子様のように愛らしく美しい方が他にいるわけが無い。
彼女がもう小さい子供ではない事ぐらい知っている。
ジノが来てから、天子からの電話が無くなっていた。