ミンスク市内にあるツム百貨店のショーウインドウが、11月23日クリスマス商戦向けに模様替えしました。男の子のマネキンが置かれ、サンタクロースへの手紙を書いているようです。つまりほしいプレゼントのリストを作ってます。そのプレゼントのリクエストを読んでみると・・・
「テレビ、アイフォン、家、本、ボート、車・・・」などいっぱい書かれています。
サンタさんに男の子がクリスマスプレゼントに家なんかお願いするか? とつっこみたくなりますが、まあ、百貨店の宣伝ですから、当店ではたくさんの商品を取り揃えております、と言いたいのでしょう。(家や車はこの百貨店では売ってないと思いますが。)
すると、そのお願いリストの中に「自由」という文字が・・・! ベラルーシの男の子がサンタクロースにお願いしたプレゼントの中に「自由」が入っていたのです。「サンタさん、お願い。クリスマスに『自由』をプレゼントしてください。」と考えている男の子がベラルーシに本当にいるとしたら・・・。
でもこれは結局、このショーウインドウをデザインした人の願望だと思います。
このサンタへの手紙に気づいた人たちがショーウインドウの画像を撮影。あっという間にネットで拡散されました。
「車」の次に「自由」と書かれていたのですが、ロシア語の「車」という言葉は読み方によっては「マーシャの」とも読めます。なのでこれは二つの言葉を合わせて「マーシャの自由」ではないか、という意見がネット上に現れました。マーシャは女性名「マリヤ」の愛称形なので、つまり野党幹部で勾留中のマリヤ・コレスニコワ氏のことを指しているとも言えます。つまり、「マーシャの自由」は「マリヤの自由」で、さらに「マリヤの釈放」「コレスニコワ氏の釈放」とも考えられます。
そして、11月24日、このショーウインドウを再びのぞくと・・・マネキンの男の子が持っていた手紙のうち「自由」と書かれていたところだけ切り取られてなくなっていました。切り口同士を糊でくっつけて、一枚の手紙のままであることに変わりはないのですが、途中で切れ目が入っていて不自然になっています。
今日はこの切れ目の入った手紙を撮影して、その画像がネット上で拡散されています。
マスコミがツム百貨店に、どうしてショーウインドウの展示物を作り直したのか取材申し込みをしましたが、ツム百貨店経営陣側からは「ノーコメント」という回答でした。
私から日本人のみなさんに伝えたいことを書いておきます。まず、ベラルーシの百貨店は国立国営です。民間企業の店舗が入っていることもありますが、基本的に国営企業、国営工場の製品が販売されています。百貨店の店員は公務員です。店員は国立大学の経済学部を卒業した人も多いです。「若い人が働いているなあ、学生のバイトかな?」と思ったら、国立大学経済学部の学生が、実習つまり授業の一環として、国営百貨店の中でレジ打ちをしていたりします。この実習期間を修了しないと卒業できなくなります。
次に百貨店のショーウインドウですが、これをどのようにデザイン、レイアウトするのかはデザイナーが担当していますが、デザイン事務所に外注されることはめったになく、芸術系の国立大学の卒業生が、百貨店に就職しているので、上からの指示に従い、「次はクリスマス商戦用レイアウトだからね。」「はい。」と言う感じで、仕事をしているのです。そして毎月決まった月給をもらっているわけです。
つまり、今回のツム百貨店のショーウインドウのデザインは、この百貨店にずっと勤めている従業員(公務員)の仕事ということです。百貨店経営陣もみんな公務員なので、マスコミからの取材申し込みに対して愛想も素っ気もなく「ノーコメント」と言えるのです。
私が心配しているのは、このサンタへの手紙を作成したツム百貨店の従業員が、経営陣からこっぴどく叱られ、解雇されることです。
一方で、「今回はこういうコンセプト、デザイン、レイアウトにします。」とその従業員が、説明したときに、上司がちゃんとサンタへの手紙の内容を読んでチェックしていなかった・・・とも言えます。
つまり、経営陣の従業員への監督ができておらず、従業員教育もできていなった(「政府を批判するような言葉を書いてショーウインドウのような人目につくところに置くのはダメですよ。」と事前に言っていなかった。)・・・ということです。ツム百貨店経営陣もあわてて手紙を一部切り取りましたが、これから政府から叱責されるかもしれません。
(念のため・・・この投稿ではサンタクロースへの手紙としましたが、ベラルーシではプレゼントをくれるのはサンタクロースではなく、マローズおじいさん、別名冬じいさんで、プレゼントをくれるのも1月1日です。ただしベラルーシにはカトリック信仰、つまりサンタクロース信仰もあります。)