アートセラピストのイギリス便り

アートセラピスト間美栄子のシュタイナー的イギリス生活のあれこれを綴った友人知人宛のメール通信です。

第七話. 闇と光、スパイラル

2008-10-05 12:53:45 | シュタイナー

* 木々の葉がみな散って、川の向こう岸の家々のともしびが遠く窓から見えるようになりました。こちらは緯度が高いので、近頃は午後4時には、もう暗くなっています。冬至に向かって、もっともっと夜の時間が長くなっていきますが、私はこの暗い季節がそんなに嫌いではありません。自分に向き合うことが春夏と比べてずっとやりやすいし、この季節にまつわるいい思い出があるからでしょうか。

冬休みに日本から友達が遊びにくるので、その人たちのために「味わってみるべき食べ物リスト」をなずなと作ってみました。なかなか尽きることがなく、とても長いリストになったのは、イギリスにはいろんな国の人が住んでいるので、世界中の食べ物が手に入るからなのでしょう。でもクリスマスにはちゃんとローストディナーを料理するつもりです。

今年はほんとうにお世話になりました。お会いできた方も、できなかった方も、どうもありがとうございました。
どうぞ、よいお年をお迎えください。
          

第七話 闇と光、スパイラル

真っ白な紙に絵を描くとき、色を塗っていくとだんだん光が失われるような気がして怖くなります。(白い絵の具は使わないので 白は紙の色を残す)
初めの頃はそこでおわりにしていたので、とても色の薄い、ぼんやりした絵ばかり描いていました。そんなわたしも四年も描き続け、やっと、むしろ色を濃くすることによって、残された白は輝きを増す、ということに気づきました。そして今は、人の人生もこんな風に、どんな経験も、きっと輝きを増すためにあるのだろうと思うのです。

マットさんの農場で働いていた青年から偶然、ウエールズにシュタイナーの農場があると聞き、次に流れ着いたわたしの旅の宿は、ストーンサークルのある荒野の中の農場でした。
どこを走っているのか分からないままバスを乗り継ぎ、やっと降り立った薄暗いバス停には、迎えに来てくれるはずの人の姿はありません。一時間ほどして髭のドイツ人が来てくれて、濃い霧の中、狭い田舎道をさらに走っていきます。車中、彼が「今夜‘Pray ’(おいのり)がある」というので、さすがにスピリチュアル、と思っていたら、それは Play で、キリストの生誕と羊飼いたちの、ちょっとユーモラスな劇でした。

この農場で私は昼間は牛の世話などをし、夜は農場のはずれに住んでいた92歳のバーバラーと一緒にシュタイナーの本の読書会、というひと月を過ごしました。
そこで学んだのは、だんだん暗くなっていくのはスパイラルに(らせん)入っていくのと同じで、一番暗いところに到達すると、そこが折り返しで、それからこんどはスパイラルの外にぐるぐる回って出て行く、というリズムの繰り返し、それは一年の自然のリズムであり、人間の精神のリズムであるということでした。そして折り返し点、クリスマス、 キリストの生誕とは、冬至と等しく、光の誕生であるということ知ったとき、光と闇とは戦う間柄ではなく共生しているのだとわかったのです。

強風で停電となったクリスマスはろうそくの灯で読書会、帰り道、広い野原に放し飼いになっている黒い肉牛たちの気配を感じながら、真っ暗な道を星を見上げながら歩いているとき、この日のために私の今までの人生があったのだと思いました。

 (間 美栄子 2007年12月15日 )



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