アートセラピストのイギリス便り

アートセラピスト間美栄子のシュタイナー的イギリス生活のあれこれを綴った友人知人宛のメール通信です。

第115話 祈りの場所

2012-08-16 20:56:50 | Sacred places - 世界の聖地

 上方の窓から差し込む光がうつくしい、セントピエトロ寺院

 

 

*ロンドンオリンピックも終わりましたね。わたしは最後の3日になってやっと見てみたのですが、ジャマイカのBOLTの走りはすごかったですね。イギリスにはジャマイカ出身の1世、2世がたくさんイギリス人になって住んでいるので(過去の移民奨励政策による)、友達もいることもあり、ジャマイカというと訪ねたことはないけれど親しみがあります。

 日本ではお盆、そして終戦記念日ですね。わたしのお休みはいつも月曜と火曜なのですが、FACEBOOKにポストしている友人が多かったので、そうか、みんなお盆休みなんだなあ、と思いました。

 

第115話 祈りの場所

 

3.11以来、毎月11日になると、ああ、今日は11日だ、と思います。

それは、朝黒板に、患者さんたちと一緒に、チョークで日付と曜日を書き入れるときであったり、お昼休みに森のいつもの場所でピクニックをしているときであったりするのですが、一秒間の黙祷という感じでしょうか。

 午前中のグループアートセラピーセッションで、アドレナリンもドバドバ出ているので、自転車で田舎道を走り、フィールドを歩いて横切り、森の川沿いのフットパスに入っていくと、少しは体も落ち着き、わたしのいつもの場所の倒木のベンチにたどり着きます。

 (なんせあのドイツ人のボスが、「セラピールームでは飲食絶対禁止」というので、零下の真冬でも、わたしは、このピクニックをやらざるを得なく、おかげさまで、四季の定点観察ができ、凍った小川の写真も撮ることができるというわけで、まったくありがたいしだいです。)

 イタリアでは数多くの教会をおとずれましたが、大きな木の幹に囲まれ、アッシュの緑の葉のステンドグラスの天井を見上げて、鳥たちのさえずりを聞き、川の水が反射して光るのを見ていると、わたしのいつもの場所もテンプルなんだなと思います。

 わたしはぜんぜん「いい人」ではないし、セラピストとしての力量もたいしてなく、毎日なんとか患者さんたちとのセッションをやれているのは、私の力ではなく、神か、何か大きな力のおかげだと感じます。さっきのセッションはおもしろかったな、とか、あの患者さん、あんなこと言えるようになってすごいなとか、小さな奇跡に驚きながら、ほーっとしながら、テンプルで感謝の気持ちで祈っています。

 

 

    ミケランジェロのピエタ

 

先月の11日はバチカン、セントピエトロ寺院にいました。ミケランジェロのピエタの前でひざまづき、長い間祈っている、茶色の僧服を着た修道院僧がいました。(日本人カップルが通り過ぎ、若妻が「これ有名?」と聞いているのも見ました。有名だよ、と教えてくれる夫がいて、よかったね)

 十字架に磔にされ息絶えたキリストをおろして、聖母マリアが抱きかかえるというこの大理石の像は、聖母マリアが、息子を亡くすという運命を引き受けているかのような、かなしい、静かな、美しい表情をたたえています。

     聖母マリア

 

わたしは、聖母マリアの顔をじっとみながら、ひとの運命のふしぎを感じていました。

 

(間美栄子 2012815   http://blog.goo.ne.jp/nefnefnef

  (岩波書店が毎月11日に著名人の文章を載せています。http://www.iwanami.co.jp/311/index.html)



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