それは、確かある私鉄の駅で、起きた悲しい出来事である。
極貧な私が、電車通勤をしていたときのこと。
いつものように、Y駅行きの電車に乗ろうと、ホームに向かっていくと、
急行列車の発車をしらせるベルが、けたたましく鳴った。
それと同時に、家路へと急ぐ人々が、一斉に走り出した。
私も、必死になって、負けじと、猛烈な勢いで、走って、走って、走った!
おそらく、そのときの私は、瞬間速度でいうと、100メートル15秒くらいで、走っていたのでは、ないかと思う。
我ながら、なかなか、いい走りだ!
と調子に乗りすぎたのが、いけなかったのか、私は、なんと次の瞬間、
ホームの柱に、頭をガツン!とぶつけてしまったのだ。
一瞬、めまいがしたが、それでも、負けじと、必死になって走り、やっとの思いで、車両に乗り込む。
まわりを見回していると、私の後に、
最終ランナーとして、走りこんできた、青年と偶然、眼があってしまった。
よく頑張った!いいぞお!
私は、青年をみて、少し、笑いかけた。
が! 次の瞬間、
青年の顔色が、一瞬にして変わったのだ。
”うっ、うわああああー”
青年は、私の顔を見た瞬間、叫び声をあげ、なぜか、私の前から逃げるように、走り去ったのであった。
一体、青年の身に何があったのか、わけがわからず、私は、同じ車両に、乗り込んだ人々を、問いかえるような、気持ちで、みつめる。
ところが、事態は、よくなるどころか、悪化した。
なんと、みんなオゾマシイものでもみたような顔で、私のほうを見つめ、
去っていこうとするのである。
なっ!なんだってんだあああー。
いくら中年男が、ひどい形相で、走ってたからって、馬鹿にするこたあ、
ないだろうよ!ふんっ!
そんな風に、強気で言ってやりたい!
だが、実際には言えない。
なんて、考えてるのも、つかの間、
ふと、私は、額のあたりに冷たいものがあるのをを感じた。
なんだか、妙な感じがして、自分の額に手をふれてみる。
次の瞬間、掌に生暖かい感触を覚えた。
そう、私の額からは、だらだらと、血が流れ落ちていたのであった。
気がつくと、車両にいる誰もが私をじっと凝視しているではないか!
とてもではないが、ここには、いられない!
そんな気持ちで、いっぱいになり、恥ずかしさと、なぜか、
少し敗北感を覚えた私は、次の停車駅で、列車を後にしたのであった。
その後、トイレで、自分の顔をみて、さっき悲鳴をあげた青年の気持ちが、痛いほど、よく、分かったのは、いうまでもない。
そこには、確かに、オゾマシイという言葉がぴったりな血まみれの中年男が
たっていたのであった。
極貧な私が、電車通勤をしていたときのこと。
いつものように、Y駅行きの電車に乗ろうと、ホームに向かっていくと、
急行列車の発車をしらせるベルが、けたたましく鳴った。
それと同時に、家路へと急ぐ人々が、一斉に走り出した。
私も、必死になって、負けじと、猛烈な勢いで、走って、走って、走った!
おそらく、そのときの私は、瞬間速度でいうと、100メートル15秒くらいで、走っていたのでは、ないかと思う。
我ながら、なかなか、いい走りだ!
と調子に乗りすぎたのが、いけなかったのか、私は、なんと次の瞬間、
ホームの柱に、頭をガツン!とぶつけてしまったのだ。
一瞬、めまいがしたが、それでも、負けじと、必死になって走り、やっとの思いで、車両に乗り込む。
まわりを見回していると、私の後に、
最終ランナーとして、走りこんできた、青年と偶然、眼があってしまった。
よく頑張った!いいぞお!
私は、青年をみて、少し、笑いかけた。
が! 次の瞬間、
青年の顔色が、一瞬にして変わったのだ。
”うっ、うわああああー”
青年は、私の顔を見た瞬間、叫び声をあげ、なぜか、私の前から逃げるように、走り去ったのであった。
一体、青年の身に何があったのか、わけがわからず、私は、同じ車両に、乗り込んだ人々を、問いかえるような、気持ちで、みつめる。
ところが、事態は、よくなるどころか、悪化した。
なんと、みんなオゾマシイものでもみたような顔で、私のほうを見つめ、
去っていこうとするのである。
なっ!なんだってんだあああー。
いくら中年男が、ひどい形相で、走ってたからって、馬鹿にするこたあ、
ないだろうよ!ふんっ!
そんな風に、強気で言ってやりたい!
だが、実際には言えない。
なんて、考えてるのも、つかの間、
ふと、私は、額のあたりに冷たいものがあるのをを感じた。
なんだか、妙な感じがして、自分の額に手をふれてみる。
次の瞬間、掌に生暖かい感触を覚えた。
そう、私の額からは、だらだらと、血が流れ落ちていたのであった。
気がつくと、車両にいる誰もが私をじっと凝視しているではないか!
とてもではないが、ここには、いられない!
そんな気持ちで、いっぱいになり、恥ずかしさと、なぜか、
少し敗北感を覚えた私は、次の停車駅で、列車を後にしたのであった。
その後、トイレで、自分の顔をみて、さっき悲鳴をあげた青年の気持ちが、痛いほど、よく、分かったのは、いうまでもない。
そこには、確かに、オゾマシイという言葉がぴったりな血まみれの中年男が
たっていたのであった。