花の江戸子、なにわをゆく ２２

～豊かな時間～

この地に引っ越してきてなぜだか毎日ワクワクしていた。

この社宅のまわりは梅田から１５分という立地でありながら
本当に何もないところで

おいしいパンやもない！
有名で人気のケーキやもない！
こじゃれた店のひとつもない！
・・・という有様。（当時のはなしです。）

都会育ちの「花の江戸子」としては当初、愕然とした。

でも人間おかしなもので「不便」であれば
便利にしよう、より良くしよう！と考える。

パンやがないならパンを焼こう！おいしく焼こう！

ケーキがいまいちなら自分で作っちゃおう！
コアントローやキルシュ・・・好きな香りをチョイスして。

生地やさんめぐりが好きな私。
こじゃれた服じゃないけれど、どろんこあそびにぴったりの服。
ミシンを引っ張り出してチクチク、チクチク


「不便」なおかげで毎日楽しかった。
都会の忙しさの中、便利さの中、忘れかけていた時間だった。

そこから生み出される「豊かな時間」は
鼻持ちならないステータスより私にとってずっと魅力的だった。

そうこうしているうちに
「本当の豊かさ」とは？
「豊かな育ち」とは？
と考えるようになっていた。

こどものこどもらしいゆったりとながれていく時間。
あたたかいナニカにつつまれている空間。
きっと力になるであろう夢中になる瞬間。

そんなことを「大切」にしているものに出会いたかった。

そんな私が心揺さぶられたのが「シュタイナー教育」だった。