島に住む人達に食料品を供給する唯一のスーパーは、JAおきなわが運営する「Aコープ南大東店」である。在所集落の南のはずれに位置し、住宅街からは少し離れているので不便であるが、生鮮食料品の品数が多いのはここしかない。在所集落にある3軒の雑貨店でも食料品を販売しているが、弁当、菓子類、飲料水が主で有り、生鮮食品は僅かしか扱っていない。ただ、Aコープは午後7時で閉店するが、雑貨店は午後11時まで営業しているので、夜間などに足らない食料品を購入する場合に利用されているようだ。
一段目の写真はAコープが入居している建物で、平屋の右半分はJAおきなわの事務所に利用されている。Aコープ南大東店は、イオングループが運営するスーパー「まいばすけっと」の大きめの店舗と同じくらい広さであった。二段目の写真は店内の陳列棚で、各商品の数量は少ないが、種類は意外と思えるほど多かった。多品種少量販売といったところでしょう。Aコープの反対側には巨大な石造りの倉庫があり、相当の量の食料品が備蓄されているため、品切れになることはない。ただ、台風や強風により定期船が到着しなくなると、生鮮野菜の棚が真先に空っぽになり、煙草が品切れになるとのことです。
三段目の写真は野菜の棚で、本州から搬送されてきたものが主流で、中には北海道、東北で収穫された野菜も多く見かけられた。島の農地で野菜を栽培できるのではないかと考えるが、年中熱帯のような気候のため高原野菜などは栽培できない。島で栽培している野菜はカボチャ程度なのです。もしかしたら、少量ではあるがキュウリ、トマトなどを栽培している農家もあると思われるが、自家消費程度ではなかろうか。
四段目の写真は精肉を販売するショーケースで、ほとんどが冷凍肉のようです。那覇から食肉のブロックを仕入れ、奥の部屋で小分けにして販売していると思われた。島では食肉牛を2百頭(2021年)飼育しているが、屠殺場が無いため島内での消費には回っていないのです。養豚している農家は皆無のようなので、豚肉は全量島外から搬入していると考えられる。山羊は66頭、ニワトリ500羽(2021年)が飼育されているため、山羊肉と鶏肉は島内で流通しているようです。特に、山羊肉については島の飲食店ではヤギ汁とか焼き肉などに料理されているので、観光客には珍しがられている。
このように、食料品の殆どを島外に頼っているため、商品の価格には運送費が上乗せされる。北海道、長野などで生産された食料品は一旦東京などに出荷され、東京、大阪あたりからフェリーで那覇にまで搬送され、さらに南大東島まで船で搬送されている。これでは食料品の価格が本州に比べて割高になるのは避けられず、離島の宿命と言える。島に住んでいる人達からは「物価が高くて困ってしまう」という愚痴をしばしば耳にした。観光で短時間だけ滞在する旅行者にとって島の物価には関心が無いが、日常的に食料品を消費する居住者には大変な問題である。
Aコープでメモしてきた食料品の価格を一覧にしてみた。いずれも2023年9月24日の税抜き価格である。
野菜
長野産白菜 1/4カット 120円
長野産キャベツ 1玉 330円
北海道産玉ねぎ 2個 250円
メキシコ産アボガド 1個 230円
ゼスプリのキウイ 1個 178円
調味料の元
日本ハム 回鍋肉の元 398円
日本ハム 八宝の元 424円
日本ハム エビチリの元 307円
ミマヤ かつおぶし顆粒 1Kg 693円
キューピー シザースサラダドレッシング 480円
缶詰類
デルモンテ カットトマト 400g 146円
キッコーマン 濃い口醤油 500ml 257円
キャンベルスープ 300g 193円
雪印 北海道バター 200g 566円
クノール カップスープ コーンクリーム 3袋 249円
飲料水
ペプシコーラ 600ml 110円
ファンタオレンジ 500ml 128円
コカコーラ 350ml 93円
それぞれの価格は馬鹿高くはないが、少しずつ高いのである。しかし、それぞれが積もり積もれば生活を圧迫してくる。離島であるからといっても、ノンビリとした生活が送れるとは限らないのである。
なお、Aコープでは鮮魚はあまり扱っていなかったが、南大東村漁業組合では不定期にとれたての鮮魚を直売しているらしい。島の周囲ではマグロ、サワラ、ナワキリの恰好の漁場であり、島の飲食店では生のマグロを食べられることで有名である。