「月桃ムーンピーチ」は南大東空港に一番近い宿屋である。元々は「ピットイン新城」という名称で、新たな空港の建設のために、島外から来訪する作業員を相手にした宿屋であった。新城さんという人が経営していたが、かなり前に宿泊業務は廃業していた。前回の旅行の時は、奥さんが焼き芋を製造して在所集落にある商店に卸していた。新城さんは、月桃という南国特有の植物の繊維からカバンやアクセサリーなどの民芸品を制作し、販売をしていた。しかし、高齢になったので、民芸品の販売も廃業していた。自宅の周囲にある塀には、宣伝を兼ねた色々なイラストが描かれていたが、11年後には色あせていた。
2017年頃、島外から移住してきた女性が宿泊業を再開したい、と申し出たので新城さんが建物を貸すことになったらしい。新しい宿屋は「月桃ムーンピーチ 本館」の名称で、素泊まりの簡易宿泊所として開始した。二段目の写真が宿屋で、前回私が訪問した時に、この場所は車庫であった、と記憶している。プレハブ造りの仮設住宅のような建物で、壁が薄いため盛夏の時にはクーラーで部屋を冷やすことができるかどうか疑問である。
三段目の写真は、宿泊者が共有するロビーである。ソファー、椅子などが無造作に置かれていて、ここで宿泊者同士が歓談したり食事をしたりすることができる。この光景を見た時、1970年代のヒッピーの生活を思い出した。ヒッピー達(自称)は温暖な徳之島や諏訪之瀬島に移住し、掘っ建て小屋で生活していた。この光景は、そのヒッピー達の生活とソックリであった。年中暖かい環境では、このような開放されたロビーでも快適なのかもしれません。
四段目の写真は客室で、床には安いリノリューム板が敷かれていた。高さの低いベッドの他に、小さな冷蔵庫、テレビが置かれていた。Wifiは通じるようです。
この宿屋は空港の滑走路脇に位置していて、商店街、歓楽街のある在所集落とは島の反対側になる。宿屋の周囲は砂糖きび畑であり、何もありません。日用品を購入したり、飲食するためにはレンタカーで在所集落まで出掛けなければなりません。このため、午後11時には在所集落の飲食店から施設まで車で送迎するサービスをしているそうですが、そこまでして宿泊したい旅行者がいるかどうか疑問です。
ネット上のブログには、ここに泊まった旅行者が「周囲が畑のため夜中になると蚊が進入してきて寝れなかった」という感想を投稿していました。なお、ここの経営者は、最近になって在所集落に「月桃ムーンピーチ 別館」という宿屋を開設した、という情報がありましたが、私は確認できませんでした。