新潟久紀ブログ版retrospective

新潟暮らし推進課27「糸魚川商工会議所拡大水曜会(その1)」

●糸魚川商工会議所拡大水曜会(その1)

 人口減少問題対策に関する県庁の部局横断的な検討組織であるワーキングチームの取りまとめや、UIターン促進施策の推進の担当などをやっていると、人口減少問題の深刻さについての住民意識が未だ高くない状況において、市町村の担当部署へ意識啓発や対策事業の促進を働き掛けることが多いのであるが、時には、意識の高い地域や団体などから課題認識や先進事例の共有などのためにお招きのお声掛けを頂くこともある。
 平成31年度の初め早々に、糸魚川地域選出の県会議員の方から、糸魚川市の商工関係者の会合で人口減少問題についてテーマにするので講話をお願いできないかというお話を頂いた。このオファーは願っても無いものだった。地域の問題意識の熟度やご迷惑も考えずにずけずけと乗り込んで説法するようなことはしたくないと考えており、そうした押し掛け商法は控えていたのだが、やはり、市町村役場を介してでは無く、地域住民の生の声から人口減少問題に関する意識の状況を把握して臨場感ある施策の立案と推進に繋げたかったので、二つ返事でこちらこそお願いしますと応じたのだ。
 糸魚川市というとなかなか感慨深いものがある地域だ。最も印象深いのは平成28年12月に失火から市街地の大半を焼失した糸魚川大火。当時の私は燕市役所へ出向しており、丁度市議会の対応で忙しくしていた頃だったのだが、何かの説明で副市長室に入ったときにテレビでリアルタイムで放映されていた大規模な延焼の様子を見て、ひととき呆然とするのみだったことを思い出す。報道はリアルタイムの空撮が当たり前となっていて、内陸から海に吹き下ろす強風の中では、海沿いまで災禍は免れまいと明らかに判りつつも誰も何もできないことも明白という残酷さが、遠く離れた地に居る人までも呆然とさせる。東日本大震災のあの日に、遠い沖から一筋の白波がゆっくりと押し寄せることを、そしてそれが明らかに津波として沿岸の人々を少なからず死傷に至らしめることを、ヘリからの生中継で知りつつも誰一人何もできないという徹底的な無力感に陥らせた"あの"経験だ。
 また、糸魚川市といえば、やはり"親不知(おやしらず)"という地名からも連想させるような、ある種の隔絶感を感じさせるようなイメージがある。農業政策に関連する業務に携わっていたころ、新潟県を所管する国の出先機関である北陸農政局に頻繁に出向いていたのだが、それが所在する金沢市に向かうにあたり、当時のJR信越本線鉄道の特急に乗ると、糸魚川の地で電圧の切り替えで一時停電するのだが、ああ糸魚川は東日本と西日本の境目なのだなあと都度思ったものだ。糸魚川市から県庁との距離を考えると、北陸新幹線の開通効果もあるのだが交通手段によっては、いちばん速く行けるのが長野県庁、次が富山県庁で、石川県庁、群馬県庁、時間帯によってはさらに埼玉県庁と続く。我が新潟県庁は6番目になるという特異さ。こんなトリビアも直ぐ思い浮かばせるのが糸魚川だ。
 更に、「古事記」において、この地に居たと思しき沼河比売(ぬなかわひめ?)に出雲国(今の島根県)の大国主命(おおくにぬしのみこと)が求婚に来たなどとされる「奴奈川姫の伝説」に加えて、ヒスイの産地であるなど、神秘とロマンを感じさせることも非常に魅力的だ。
 長々と書いてしまったが、一度その名を聞けば延々と様々な情報や想像が頭に広がり関心を高める糸魚川の地から、思いがけずお招きのオファーを頂き、非常に有り難い思いで準備を進めることにしたのだ。

(「新潟暮らし推進課27「糸魚川商工会議所拡大水曜会(その1)」編」終わり。県職員として11箇所目の職場となる新潟暮らし推進課の回顧録「新潟暮らし推進課28「糸魚川商工会議所拡大水曜会(その2)」」に続きます。)
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