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冒険者というものは、とにかく物を流通させることに長けた者である。とは、誰の言葉だったか。
モンスターを倒し、戦利品を手に入れ、狩りや採集で遠い土地の珍しいあれこれを自国に卸して、貿易・交易のまねごとをする。
足りなければ商人から買い付けたり、自ら工作・錬金して目的のものを開発し使っていく。
そんなやりとりの中で手に入れたのが、いま私の目の前にある、エクシオンシールドだ。
いつ手にしたかは定かではないが、冒険を始めてから、クレアシールドとともに、状況により使い分けてきた。
敵に囲まれた際に、一番に私の身を守ってくれる盾だ。自分で念入りに手入れをして、幾度となく強化してきた。
私はこの旅の相棒を、手放そうとしている。
冒険者が経験を積み実力が認められてくると、手にする装備もまた変化していくものだ。エクシオンシールドの出番が少なくなってきたことは、否めない。
思い出とともに倉庫に眠らせておこうか、と一瞬そんな考えが頭をよぎったが、たぶん、このエクシオンシールドは、それでは満足しないだろう。
この攻撃力は補助武器としては目を瞠るものがあり、さらにまだ改良の余地も残っている。
そして、それだけの価値が高い売値となって跳ね返ってくる。それはつまり買い手に、それだけの価値を必要とし、生み出すことができる冒険者がいて、彼、彼女の命を守るに足る道具であることの証なのだ。
このエクシオンシールドには、それだけの価値があるのだ。
願わくは、この盾の声をしっかりと聞き取ってくれる人間の手に渡って欲しい。
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闇の狭間から湧き上がる強敵を倒して回っていた。定期的に現れるようで、私も同じ怪物を複数回倒したこともある。
覚えているだけで、アヒブズグリフォン、ローニン、古代遺跡群、やっかいな溶岩洞窟の主や兵の墓に現れた骸骨の親玉みたいなのも倒した。
その前は砂漠ナーガに砂漠フォガン、フィラ・ク監獄の制圧など、ずっと戦い続けていた。だからだろうか、星の墓場と呼ばれるところで、依頼であるモンスター討伐をしていた最中、体が言うことを聞かなくなる場面が度々あった。
ここのモンスターは攻撃力が高いことが有名で、まともに盾で受け止めることすら避けるべきなのに、足がもつれ、体が回転せず、地面にたたきつけられる場面が、少なくない回数あった。
目の前が真っ赤になった。剣を握る手に力が入らなかった。
それでも最後に立っていたのは私だった。
だが、そこで何かが私の中でプツンと切れ、気づいたら馬上で揺られながらエフェリアの海岸を進んでいた。
潮風、波の音、夕日の暖かさ、砂地の柔らかさ。何度もその感触を味わっていたはずなのに、今日初めて体験したかのような穏やかな感動が私の胸に広がった。
探索拠点の兵士に挨拶し、大ヒトデを避けながら波とたわむれ、調子に乗りすぎて突然の波に愛馬が驚いて海に落とされたりもしたが、その時の私はおそらく、頬が緩んでいただろう。
オルビアの海岸に着いたとき、今日はぐっすり眠れるだろう、と確信した。
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