Saxophonist 宮地スグル公式ブログ

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何故、分かっちゃいるのにマウスピースを変えちゃうのか

2021年05月07日 14時47分00秒 | instruments

インプロビゼーションアドリブ・ソロとも言うけど、ボストン時代はこれを一生懸命勉強した。でも、ニューヨークに移って、ギグを始めたら大ベテランのミュージシャン達が意外とソロが毎回同じで、アドリブとは言えない様な形式美を重視したソロを取る事が多い事に気づいた。


何故ソロが毎回同じなの?と尋ねると、「美しいメロディを演奏する事の方が大事だからだ。」と返された。


これは、一生僕に付き纏う課題だ。


僕は極端な飽き性だ。だから、自分の演奏にもすぐ飽きてしまう。自分のやってる事なんて自分が一番よく知ってるのだから、自分の演奏をプレイバックする事なんて本当は全く興味が無い。ただ、客観的に聴いて、これで本当にプロとしてお金が取れるのか?の確認の為だけにプレイバックする。他人の演奏を聴いてる方がよっぽど楽しい。


そこで自分の演奏を聴いて、同じフレーズが何度も聴こえて来たり、これを演ったら次にこれを演るみたいな「型」が聴こえたりすると、すぐに飽きてしまい、非常に落ち込む。それが、たとえ自分にとって美しいものでも、飽きる事には変わりない。だから、先程の大ベテラン・ミュージシャンの言葉と自分の理想に整合性を持たせる必要があり、且つ、真逆のコンセプトなのでとても難しい。


インプロビゼーションで最も大切なのは、インスパイアされる事だと僕は思っている。だから、若い頃に完全にドソロのお仕事を頂戴しても断ったし、今でも苦手には違いない。誰かの合いの手やソロを聴く事で「あぁ、その手が有ったか!」と自分のソロに活かす事が出来た方がアイデアも次々と浮かび易いからだ。そういうコミュニケーションが取れた時の演奏は、流石に自分の演奏でも何度聴いても飽きない。


さて、表題のマウスピースに関してだが、アマチュア時代や若かりし頃は、雑誌等の情報に振り回された事も有った。でも、「このマウスピースは、こんな音が出る」なんて情報は、吹く人によって大きく異なるのだから、大枠で参考になっても、詳細ではアテにならない事の方が多い。結局、「コレをどう吹きこなすか?」に多くの時間を費やす必要が有る。そこには、それぞれのお店の部屋鳴りとか、バンドとのブレンドなど沢山の検証が必要で、その上で理想形に持って行かなければならない。そして、使用中のマウスピースってのは、そういう検証結果が良かったからこそ使っている筈だ。


で、僕の飽き性という性格に話が戻る。僕の場合も、検証や訓練を重ねた結果、「これで行こう!」とマウスピースが決まる訳だが、常に変革を求める自分の性格では、完全な満足には中々結びつかない。


そして、インプロビゼーションという話にも戻すと、自分の音色にインスパイアされて、新しいアイデアが湧き出す事も非常に多いのだ。「あ!今の音色とフレーズ、ボブ・クーパーがあの曲演った時みたいだ!」みたいな発見が演奏中に有ると、それっぽい演奏に向かって行ったりみたいな。だから、音色ってのは、インプロビゼーションにはとっても大切なのだ。


僕は日々もの凄い量のレコード(たまにCDYouTube)を聴いてるのだけど、かなり分析的に聴いてるつもりだ。このブログにも書いたけど、スタン・ゲッツの音色はかなり研究したが、最近、漸く自分が目指している音色が、近くはあるもののゲッツそのものではない事に気が付いて来た。


僕の分析では、ゲッツの音色の柔らかさって、息の音や早めのビブラートによって起こる、いわゆる「雑味」というオブラートにリアルな音を包んだ事によって、そう聴こえるけど、それを取り除くと意外と硬質な鋭い音だと感じる。特にアタックを付けたり、フォルテで吹いた時にそれが明らかになる(とは言え、メタル・マウスピースの様な極端なエッジが効いてるわけではない)。実は僕はあまりそういう時の彼の音は好きではない。50年代のクール時代の頃が理想形かな。でも、レコードを聴いてると、どうしても憧れてしまい、ついついそれに近づけようとしてみたりする。で、色んなマウスピースを試して、「あ!遂に発見!」となるのだが、そこから大抵スランプが始まる(笑)


そういう時って、インプロビゼーションが音色からインスパイアされて始まるという大切な事とかを、決して忘れている訳では無いのだけど、「新しい自分の発見」の方に軸足が置かれていて、全く新しいアイデアが生まれる事の方に期待し、夢見がちになってる様な気がする。でも、そうは問屋が卸さない。


普段練習しているフレーズや歌い方とかは、必ず音色とセットなのだ。そこには、倍音など音そのものに含まれる成分も有るし、今僕が最も凝っている「雑味成分」もそのセットに入る。それが失われると、途端にアイデアが枯渇し、思考停止になる。そして、同じフレーズの繰り返しになったり、指癖に頼ったりする事になる。


この様に新しい自分の発見ってのに常に憧れるのだが、大概は上手く行かない。そして、いつもその元凶となるのが、最もチェンジがお手軽なマウスピースという事になる。皆さんは如何だろうか。


まぁ、こんな寄り道もジャズをやる楽しみの一つではあるけど。


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