イギリスの旅の最終地はロンドン。
ロンドンを訪れるのは実に約30年ぶりだ。
ここでの2日間の滞在ホテルは
サッカーの聖地と称されるウェンブリースタジアムが
すぐ目の前に見えるヒルトン系のホテル。
このサッカー専用スタジアムでは
イングランド代表やクラブチームのカップ公式戦などが行われ
私たちの滞在中もアーセナルとトッテナムによる
FAカップ準決勝の試合が行われていた。
そのサッカーの聖地のおひざ元のホテルだけあって
ロビーには各クラブチームのユニホームが飾られていた。
ロンドンで最初に訪れたのは大英博物館。
30年前には無かった新しい建物(グレート・コート)が
英国を代表する建築家の設計で2000年に増設されたらしいが
歳月の流れとともに多少の違和感を感じながら中に入って行った。
この博物館でいちばんの見どころロゼッタストーン。
さすがの人気ぶりで人混みのため
仕方なく後ろ側からしか写せなかったのだが…(笑)
1799年、ナポレオンのエジプト遠征でロゼッタで発見されたことで有名だ。
紀元前196年、プトレマイオス5世によって出された勅令が
ヒエログリフ(神聖文字)、デモティック(民衆文字)、ギリシア文字の
3種類の文字で刻まれた石碑の一部だそうで
この石板がヒエログリフ解読の糸口になったという
古代エジプト研究にとってとても貴重なお宝なんだそうだ。
おそらく30年前にも見たと思うが…全く私の記憶にはなく(笑)
なぜか、パピルスの巻物の記憶の方が鮮明に残っている。
ここには、かつて大英帝国が産業革命後の絶大な力によって
戦争や植民地から持ち帰った(略奪?)とされる
古代エジプト、メソポタミア、ギリシア、ローマなどの
貴重な歴史的文化遺産が数多く展示されている。
中でも古代ギリシャのパルテノン神殿の彫刻群は
ギリシャ彫刻としても最高の美しさと評価が高く
神殿の東破風に飾られていたこの馬の頭部像は
紀元前400年代に製作されたらしいが
まるで生きているような細工が施されていることに驚く。
こちらは紀元前に栄えたアッシリアの守護獣神像。
冠をいただいた人面に5本の脚を持ち
見上げるほどの高さと立派な翼の雄牛像は
何と一枚岩から造られたもので
当時の職人の腕をうかがい知れる展示品だ。
これはかの有名なイースター島のモアイ像。
11~17世紀、ポリネシアンたちの信仰の対象として
これも一枚岩で造られた貴重なものだが
1860年代に英国海軍が持ち帰ってきたのだそうだ。
そして展示ケースで子どもたちが熱心に見ているのは
完全な形と赤い毛髪で有名なミイラのジンジャー。
エジプト原始王朝時代の紀元前3100年ごろに埋葬された
18~20歳くらいの若い男性だという。
このミイラは長い間、自然死だと考えられていたが
7~8年前に同博物館が最新のCTスキャンで分析した結果
刃物のようなもので刺し殺されたことが判明し
「ミイラ殺人事件」として世間の話題になったそうだ。
このジンジャ―以外にも多くのミイラが展示された部屋には
やはりどこか霊的な雰囲気が感じられ
私はまじまじと観察する気にはなれなかったが
写真の小学生たちの目にはどう映ったのだろうか…。
それにしても…
このグレート・コートの明るさはどうだ。
古代エジプトを始めとする数々の世界中の歴史的文化遺産を
一堂に集めて展示しているあの薄暗い展示室とは
全く好対照の底抜けの明るさに満ちている。
まるで略奪の暗い過去の歴史を払拭するかのように
暗い過去から明るい未来へと人々を誘う。
歴史と伝統を重んじるイギリスにしては
一見相応しくないように思われたこの新しい建物には
そんな贖罪の意味もあるのかも知れない。
入場料無料で人々に開放しているのと同じように…。
しかしたとえそれが略奪だったとしても
そのお陰できちんとした管理のもとで保存された状態で
今こうして私たちが見ることができるのだ。
矛盾しているように思うが…そこは感謝しかない。
ものごとには全て功罪があるのだ…と
大人の自分が子どもの自分に言い聞かせる。(笑)
こうした様々な複雑な思いを抱きながら
大英博物館をあとにした。
次に向かうのはナショナルギャラリーだが
続きは次回ということで…。