ゆるふわ読書日記

徒然なるままに読んだ本を紹介していきます。
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カント『プロレゴメナ』

2021-09-09 20:20:00 | 
イマヌエル・カント(1724-1804)の『プロレゴメナ』(1783)。正確な表題は「およそ学として現われ得る限りの将来の形而上学のためのプロレゴメナ(序論)」。
『純粋理性批判』を著した後のカントが、その内容を説明するために書いた著書である。『純粋理性批判』が綜合的方法で書かれ、本著は分析的方法に依っている。個人的には、綜合的方法で書かれた書物の方がスリリングだと思えるが、それでもカント哲学の端々が垣間見られて非常に充実した内容である。
『純粋理性批判』が「アプリオリな綜合的判断は可能か」を問うものであったのだが、それが与えられていることを前提とし四つの問題が提示される。
一 純粋数学はどうして可能か
二 純粋自然科学はどうして可能か
三 形而上学一般はどうして可能か
四 学としての形而上学はどうして可能か
これらを論述していくことで、解決されたと結論付けるのである。
空間と時間は純粋直観(感性の形式)であることや、物自体の設定が無ければ、現象は成り立たないこと、純粋悟性概念(カテゴリー)はあくまで経験を対象とする、といったカントの形而上学が再び顕にされる。理念が理性の本性に具わっているのは、なおカテゴリーが悟性に具わっているのと同じであるとされるが、厳密に両者を区別しないと仮象の原因となる、など理念と理性の考察に至るまでを論述する。結果、先験(超越論)的な四件の問題は、解決されたと結論付けられる。短文で紹介するには、私の手に余る著書であるが、最後に一文を紹介しておこう。「人間が理性的になり賢くなるのに遅すぎるということはない。(p.11)」