SSF 光夫天 ~ 詩と朗読と音楽と ~ 

◆ 言葉と音楽の『優しさ』の 散歩スケッチ ◆

彼女の中で 形を 変えたにちがいない。 池江璃花子さん 未来と過去

2020-10-02 16:06:43 | 『コロナ:考』新しい試みです(2020年4月より)
「人は、変えられるのは 未来だけだ と思い込んでる。だけど、実際は、未来は 常に 過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」


        (毎日新聞出版)
    
 平野啓一郎
小説家。1975年愛知県生。北九州市出身。『日蝕』で芥川賞受賞。著書は、小説『決壊』、『マチネの終わりに』、『ある男』、新書『私とは何か 「個人」から「分人」へ』、『「カッコいい」とは何か』、エッセイ集『考える葦』など 





池江璃花子    Profile: https://www.rikako-ikee.jp/profile.html より

【読売新聞 編集手帳 令和2年(2020年)10月2日より】
BGM:Valentin Silvestrov-Piano Works  
Minako Tsukatani-Piano




ご覧いただきありがとうございました。
【イラスト /みさきのイラスト素材】


(編集手帳 本文)
◆未来と過去、今この時間もその境に立たない人はない。平野啓一郎さんは長編小説『マチネの終わりに』(毎日新聞出版)で、主人公の男性にこう言わせている
◆「人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?」
◆小説の描く男女の恋愛という枠を超え、万人への普遍性のある問いかけだろう。きのうテレビで、繊細な過去がみるみる形を変えるかのような競泳選手の泳ぎを見た。
◆白血病から復帰した池江璃花子さん(20)である。「日本学生選手権水泳競技大会(インカレ)」の女子50メートル自由形決勝で、4位に入った。昨年12月に退院してからまだ1年もたっていない。インカレへの出場を目標に定めたのは、まだ病床にいた頃だったという。
◆伸びやかに水をかきながら、白血病と知ったときの悲しみ、苦痛を伴う治療を受けた日々は彼女の中で形を変えたにちがいない。未来と過去の境に凜りんと立つ姿に、元気をもらう人は多いことだろう。