SSF 光夫天 ~ 詩と朗読と音楽と ~ 

◆ 言葉と音楽の『優しさ』の 散歩スケッチ ◆

終戦の翌年の春の或る夜の「告白」

2015-10-07 12:38:33 | 「尾崎喜八を尋ねる旅」
この詩は、『自註 富士見高原詩集』 冒頭の「詩」です。

詩人 尾崎喜八の長野県富士見在住時代のものを集めた『花咲ける孤独』という詩集があります。
今ではもう絶版になっており、1969年11月7日(立冬の日)、富士見高原で得た詩からだけ総数七十篇を選んで『自註 富士見高原詩集』という題を与えて新しく出版しています。
改めてこの詩集を出す気になったについては別に一つの理由があります。

それは「自註」であります。

自註とは、作者自身が自分の詩に註釈を施し、或はそれの出来たいわれを述べ、又はそれに付随する心境めいたものを告白して、読者の鑑賞や理解への一助とするという試みです。

私は、まず詩を読み、更に註を読めば、尾崎喜八という人間の心と生活と芸術とを一層よく理解でき、そして今、『尾崎喜八の詩による男声合唱曲集』を題材とした、詩のフォーラム「尾崎喜八 アラカルト20選」の教材作成(①詩・自註②朗読③楽曲)に大いに役立てることができるものと思っています。(光夫天)


告白

若葉の底にふかぶかと夜をふけてゆく山々がある。

真昼を遠く白く歌い去る河がある。

うす青いつばさを大きく上げて

波のようにたたんで

ふかい吐息をつきながら 風景に

柔らかく目をつぶるのは誰だ。

鳥か、

それとも雲か。


疲れているのでもなく 非情でもなく、

内部には咲きさかる夢の花々を群らせながら、

過ぎゆく時を過ぎさせて

遠くやわらかに門をとじている花ぞの、

私だ。


【自註】
祖国は戦争に敗れた。物質の上でも、精神の面でも、無数のもの、さまざまなものが崩壊した。

いわゆる「銃後」の国民の一人として、詩という仕事によっていささかでも国に尽くしたいと思った私の念願も、『此の糧』や『同胞と共にあり』の二冊のささやかな詩集と一緒に今はむなしい灰となった。

その無残な荒廃の跡に立って、私は元来人間の幸福と平和に捧げるべき自分の芸術を、それとは全く反対の戦争というものに奉仕させたおのれの愚かさ、思慮の浅さを深く恥じた。

私は慙愧と後悔に頭を垂れ、神のような者からの処罰を待つ思いで目を閉じた。

そしてもしも許されたなら今後は世の中から遠ざかり、過去を捨て、人を避けて、全く無名の人間として生き直すこと、それがただ一つの願いだった。

そんな時、終戦の翌年の春の或る夜、ふと私からこの詩が生まれた。

起死回生の勢いも潔さも見られないが、それはこの場合当然な事であり、むしろ悪夢から覚めた詩人の良心の、まだどことなく頼りない音をひそめた最初の歌の調べというべきであろう。



※【ご参考】富士見町 高原のミュージアム(富士見高原の文学) 
http://www.alles.or.jp/~fujimi/kougen/bungaku.html

「関西学院グリークラブフェスティバル」と「新制中学部の誕生と草創期」

2015-10-01 18:14:25 | 関西学院
第46回関西学院グリークラブフェスティバル
2015年10月4日(日)開演14:00~ 入場無料
関西学院中央講堂(125周年記念講堂)
<出演>
関西学院中学部グリークラブ・関西学院高等部グリークラブ
関西学院グリークラブ   ・新月会(OB)

関西学院のあゆみ
=新制中学部の誕生と草創期=
 (1947年4月~1953年3月)
現在、平常展が行われています。
展示期間:2015年7月27日(月)~10月10日(土)
(於 関西学院大学博物館)

昭和23年度 当時の教員
右側:『矢内日記』の扉の絵

前列中央 矢内正一先生

<ご案内>
関西学院グリークラブフェスティバルは、
中学部、高等部、大学、新月会(OB)を含めた演奏会であり、
関西学院グリークラブならではの「縦のつながり」の演奏会です。

関西学院大学博物館は、昨年(2014年)学院125周年を記念して開館しました。
現在「新制中学部の誕生と草創期」と題して、昭和22年に新制中学部が発足した経緯を展示しています。

関西学院は1889(明治22)年、旧制中学部の前進の普通学部と神学部の2学部で神戸の地に誕生しました。従って旧制中学の発足の経緯は学院史の中には必ず登場します。それに引き換え太平洋戦争終結の翌々年、新学制に基づいて関西学院がまったく新しい思いで、「学院の運命を背負って」発足した新制中学部については、これまで詳しく取り上げられたことはありません。

今回の展示に、今田 寛先生(新制中学1期生、元グリークラブ顧問)が、論文を寄稿されています。
関西学院新制中学部誕生物語~資料に基づく回顧~
1.時代背景
2.関西学院新制中学部発足までの143日
3.初年度の教師陣
4.新制中学と旧制中学
5.矢内先生とキリスト教
6.結語と余話

皆様、もしよろしければ、ぜひお越しください。(光夫天)