SSF 光夫天 ~ 詩と朗読と音楽と ~ 

◆ 言葉と音楽の『優しさ』の 散歩スケッチ ◆

薔薇は春、芽を吹いて

2020-04-29 21:45:13 | 『コロナ:考』新しい試みです(2020年4月より)

新型コロナウィルスの不安、解消されないまま・・・

4月もあすで終わる。

 

【動画】薔薇は春、芽を吹いて(3分3秒)

【URL】

 

(本文)

薔薇は春、芽を吹いてぐんぐん茎を伸ばす。

 正岡子規に、名歌がある。

 『くれなゐの 二尺伸びたる薔薇の芽の 針やはらかに 春雨のふる 』

 

◆赤い色の、二尺ほど伸びた薔薇の芽は、まだそのトゲがやわらかく、

 そこに春雨が、しっとりと降りかかる…

 

  この意訳を読んで、ピンとこない方がおいでだろう。<二尺>である。メートル法に改めると約60センチ

 

最近、<社会的距離>という“新語”を聞くたび、子規の歌を思い浮かべている。

◆子供たちが学校で使う机の幅も、60センチほどである。社会的距離に従って、2メートルあいだを空けるとすれば、教室の面積が足りなくなるだろうと・・・

 

◆感染症の拡大に伴う臨時休校の長期化から、「入学・新学期の開始時期を、9月へ変更すべきだ」との声が聞かれるようになった。 杞憂に終わってほしいものだが、近々教室に元通りに机を並べられる状況ではないことを考えると、真剣に議論を始めることが必要だろう。教育のみならず、社会全体への影響は計り知れない。

 

◆このところ、カレンダーに目をやるのが、いささか怖い。気がつけば、子供たちに勢いよく芽を吹いてもらうはずの

 4月が、あすで終わる。【読売新聞2020年(令和2年)4月29日 編集手帳より】

 

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その心がけの結集が、戦いの幕を引き寄せるだろう

2020-04-28 13:02:09 | 『コロナ:考』新しい試みです(2020年4月より)

■その心がけの結集が、戦いの幕を引き寄せるだろう

(本文)【読売新聞 編集手帳 令和2年(2020年)4月27日より】

 

◆太宰治が、自身の帰郷を題材に綴った紀行小説『津軽』は、

 戦時中に発表された。 南方から戻った知人のT君が登場する。

◆戦地で一番うれしかったことは? 主人公の問いに、お酒が好きだった彼はビールの配給を挙げる。 「途中でコップを唇から離して一息つこうと思ったのですが、どうしてもコップが唇から、離れないのですね」 その心理は戦争の経験がない身にも、わかる気がする。

 もっとも周囲を銃弾が飛び交えば、T君とて、飲むのを中断したに違いない。

◆小説から現実に視線を移す。 今どこかで人が混み合えば、戦場の銃弾さながらにウイルスが飛び交う可能性が高まる。そんな場所で、遊興にふける人が絶えないのは、危険が目に見えないからだろう。 パチンコ店にナイトクラブ…地域ごとに様々な事例が報じられてきた。

◆政府が先週、休業要請に応じない事業者に、店名公表などの措置をとるための、指針を通知し、大阪府はパチンコ店の名前を公表した。 クラスター(感染集団)発生への、各地の危機感は強い。

◆見えない危険に目を凝らし、聞こえない音に耳を澄ます。 その心がけの結集が戦いの幕を、引き寄せるだろう。

 

 

【動画 】太宰治の小説『津軽』(戦時中)と大阪のパチンコ店(今)                   

【URL】 

 

コロナ対策として、日々感じたものを”ブログ”できたらと思考しているところです。

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軍艦マーチ 鳴りやむべし

2020-04-25 15:31:42 | 『コロナ:考』新しい試みです(2020年4月より)

~ 軍艦マーチ 鳴りやむべし ~

【動画】(3分6秒)

【URL】

 

読売新聞 編集手帳より ~令和2年(2020年)4月25日~

(本文)

◆自宅から駅に向かう途中の歩道に、カラスが時々えさをあさりに来るゴミ置き場がある。人や自転車は散らばった生ゴミをよけるため、危うくも、道路側にはみ出して行く。

◆だが、今年初め頃、近所の高齢の女性が、ほうきで片付けているところに行き合った。安心して歩道を進むことができた。収集車が来るまでの数時間のこととはいえ、女性のおかげで、事故に遭わずに済んだ通行者が、いたのではないかと思った。

見知らぬ人にそれとは気づかないまま、助けられている―― そんなことが今、じつは、至る所で起こっていそうである。

◆感染を広げないため我慢して家を出ない人、苦渋の決断で店を休んだ人…息を吸い込んで苦しさを感じないでいられるのは、100%自分の心がけによると言える人はいまい。

何とか、医療崩壊の寸前で踏みとどまれているのは、医療従事者の、命がけの戦いはもちろん、市井の人が誠意を束ね続けているからでもあろう。

◆ところが、である。パチンコ店の開店に合わせ、朝から密な行列を作る人たちもいる。誰かに助けられていることに、気づいているのか、いないのか。

軍艦マーチ、鳴りやむべし。


本当は 火星人など いない

2020-04-22 21:59:03 | 『コロナ:考』新しい試みです(2020年4月より)

~ 本当は 火星人など いない  ~

【動画】(2分49秒)

【URL】

 

(本文)【読売新聞】  編集手帳 2020年4月22日より

◆プーチン氏が、ロシア大統領に就任した頃、国民の口にのぼった、小話だという。

◆<大統領が首相に聞く。

「危機から脱出する方法を、二つ思いついた。

   一つ目は火星人が来て助けてくれるのを待つこと。

 二つ目は自力で危機から立ち直ること」。
 

    首相は答えた。

  「二つ目は、非現実的だから、検討するべきではありません」>

(菅野沙織『ジョークで読むロシア』日経プレミア)

 

◆じつは、この小話は現実になる。

 原油価格が急騰し、経済危機を救う、火星人の役を果たしたのである。きのうの衝撃的なニュースは、これが原点かもしれない。

◆米国の、原油先物市場で取引価格がマイナスになった。

 保管費を減らすため売り手が客に、金を払ってまで引き取らせる、異常事態だ。コロナ禍で、需要が激減しながら、ロシアとサウジアラビアは互いに増産を主張して、減産協議を決裂させた。後に合意したとはいえ、暴落に歯止めはかからず産油国全体の危機に至った。

◆本当は、火星人などいない。――とは、そもそもの感染症対策にも言えることだろう。
我々が今取り組むことは現実的な策と信じたい。

 国民一人ひとりができることをこつこつと。

 

 

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もやし 萌やし 上を下へと大騒ぎ

2020-04-21 17:40:17 | 『コロナ:考』新しい試みです(2020年4月より)

もやし 萌やし 上を下へと大騒ぎ

【動画作成】(2分43秒)

 

(本文)【読売新聞】 編集手帳 2020年4月21日より

◆詩人の、まど・みちおさんに、「もやし」と題する、極めて短い作品がある。

     <うえを/したへの/おおさわぎ>

◆3行だけのこの詩はおおよそ、次のように解釈されている。
 もやしは栽培時、規則正しく上向きに伸びている。だが、出荷されるときは、袋に入り、上を下への大騒ぎに見える――お店の棚にその野菜を見かけると、小学校の教室のにぎやかな風景を浮かべる。

◆子供たちはどんなにかそこに戻りたいことだろう。今はみんなで一緒に勉強することもなければ、合唱することもない。全国的な休校措置が取られて、ひと月半が過ぎた。

◆新型ウイルスの感染者の数に、気持ちの揺れる日々が続く。
きょうは何人だった? まだ減らないんだね。
なかなか、朗報の響かない空のもと、そんな親子の会話が無数に繰り返されているだろう。
「もやし」は漢字で「萌やし」と書く。
たまたま、歴史的な感染症の危機に、学齢期を迎えたばかりに、集団に身を置いて、草木のように芽吹く時期を、一日一日と失う、子供がいることを、胸にきざもう。

◆上を下への大騒ぎを、早くさせてあげたいものである。
 先生は少し困りはするけれど。