SSF 光夫天 ~ 詩と朗読と音楽と ~ 

◆ 言葉と音楽の『優しさ』の 散歩スケッチ ◆

涙はしょっぱい。でも悔し涙とうれし涙では 微妙に味が変わってくる。

2020-05-23 17:38:17 | 『コロナ:考』新しい試みです(2020年4月より)

夕刊(5月23日)のコラム(よみうり寸評)に、指揮者:小澤征爾さんと武満徹さんの対談集のことを皮切りに、『音楽は、結局 空気振動でしょ』や、生の音楽の響きのことが書かれてあった。まさに、今は、コロナ禍で残念ながら「それ」が叶わない。

音楽は当面、生の空気振動ではなく、電気信号を介したスピーカーやイヤホンで楽しむほかはない。

夏の甲子園も中止になった。テレビで、高校野球球児の「悔し涙」は、見ていて、たまらなくなる。高校野球だけではなく、ほぼすべてのスポーツ、文化活動などがそうである。今朝の新聞コラムは、タイトルの「涙はしょっぱい。でも悔し涙とうれし涙では微妙に味が変わってくる」という書き出しで始まった。これも動画にしてみようと・・・。今回もイラスト使用させていただきました。m(__)m<提供:みさきイラスト素材>

*今回の実験は、なれーしょんの音質を工夫してみました。よろしければ、ご覧ください。

(2分49秒)

(本文) ◆涙はしょっぱい。でも悔し涙とうれし涙では、微妙に味が変わってくるそうだ。

◆ある雑学本によると、体内で使う神経が別々であるらしい。悔し涙は交感神経が働いて水分が少なくなるため、味が濃くなる。うれし涙は副交感神経が水分を多めに出すことから、薄味になるという。

◆どちらの涙があふれた日々だったかは言うまでもあるまい。大切な家族を失った人、廃業した経営者、家賃の支払いや食費に困り果てた人、目標としたスポーツ大会をなくした若者たち…苦しむ人々を書けば、当欄のスぺースではとても間に合わない。

◆首都圏と北海道の緊急事態宣言が、週明け25日にも解かれる可能性が出てきた。かといって、すっかり見慣れた日本地図の色分けがなくなるだけで、国民の心や経済が負った傷は深い。まだ明るい気持ちにはなれないものの、少し前を振り返ればどうだろう? 人との接触を8割減らし、感染を抑え込む――そんなことが本当にできるのかと、いぶかったのを思い出す。案外、私たちはすごいのかもしれない。

◆心を折らず再生へとかじを切ろう。しょっぱさの薄い涙を流せる日を待とう。

【読売新聞 編集手帳 5月23日より】

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スズメの子

2020-05-20 21:22:48 | 『コロナ:考』新しい試みです(2020年4月より)

<雀の子 そこのけそこのけ お馬が通る> 小林一茶

新聞のコラムを見て、確かに「スズメの子」を見たことがあっただろうかと。おもしろいコラムだったので、動画を作成し、話者も小さな女の子で、初めて作ってみました。イラストをたくさん使わせていただきました。ありがとうございました。(提供:みさきのイラスト素材さん)

 

(本文)

◆スズメは年中そこらにいるため季語のくくりはない。ただ「スズメの子」となると、春に分類されている。

◆何年か前、この著名な一茶の句を眺めていてふと思った。そういえば、スズメの子を見たことがあっただろうかと。明治に活躍した俳人、藤井紫影にも散歩道で会ったらしいスズメの子の句がある。

<子雀の一尺飛んで親を見る>

◆綿毛のとれたばかりの羽で巣から降り、ちょこちょこと不安げに飛ぶ練習をする姿だろう。ものの本によれば、親と一緒にいるのは10日ほどらしく、どうやら今年も見る機会を逸しそうである。

◆しかし代わりにというと変だけれど、このごろ散歩道で多く見かけるのは人間の子供たちである。ある男子のグループが同じ広場に集まってくる。午前中はゴムボールで野球、午後はサッカーと思ったら、翌日は午前にサッカー、午後に野球をしていた。

◆勉強はいつしているのだろう? 心配になるものの、笑みがこぼれて楽しそうである。学校の休みが続く異常な春のもと、元気に外に出て、子供たちなりに飛ぶ練習をしているのかもしれない。

【読売新聞 編集手帳 2020年(令和2年)5月20日より】

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「検事は準司法官です」:故 吉永祐介さんの言葉

2020-05-19 19:52:09 | 『コロナ:考』新しい試みです(2020年4月より)

コロナ禍の中で、検察庁改正法案が、秋の臨時国会でやり直す方針という。自粛の不安、検査、隔離、ワクチン・治療薬・・・まだ先が見えない。

本日の新聞コラムを拝見し、先人の「歴史」をあらためて振り返りました。安堵できる生活はどのようにすれば、迎えることができるのか。

4月から始めた、新型コロナウィルスに関する「コラム」を動画にする作業。今後、取り組む作業の方向性が少しずつ、見えてきたのかな、と。

しばらくは、この作業を続けながら、じっくりと、考えていきたいと思っています。

 

 

 

(本文)

◆ロッキード事件など政界疑獄の捜査を指揮した故・吉永祐介さんが、検事総長の就任記者会見で語ったのは汚職摘発への意欲ではなかった。

組織の説明から始めたのである。「検事は準司法官です」と。目の前で聞いていたので、よく覚えている。準司法官とは法律にある言葉ではない。三権のうち行政の一部でありながら、司法に準じる権限を持つ微妙な位置を国民に理解してもらいたかったのだろう。

◆当時はゼネコン汚職事件のさなかで、検事が取り調べ中に暴行事件を起こし、検察権力への国民の信頼が揺らいでいた。

◆政府からの独立性――吉永さんが微妙な足元を気にしたことは確かだろう。独立性の揺れる日が来るなら検察が暴走した時かと思っていた身には、必然が見当たらないことに疑問を禁じ得ない。政府と準司法官の関係を変えかねない検察庁法改正案である。幹部の定年を内閣が延長できるとした特例規定に、政治家の顔色をうかがうようになっては困ると世論の反発は強い。

◆政府は今国会の成立を見送り、秋の臨時国会でやり直す方針という。

 ただ 涼しい季節が来ても、世論は 冷えては いまい。

【読売新聞 編集手帳 2020年5月19日より】

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ご褒美は、豆ご飯

2020-05-14 23:02:00 | 『コロナ:考』新しい試みです(2020年4月より)

【動画作成(2分34秒)】

【URL】https://youtu.be/SWUqOSfWSdA

(本文)

◆空豆は若い緑のサヤを空に向けて立つことから、その名がついた。「5月の豆」とも呼ばれ、今頃の時節に焼いたり、ゆでたりしたものがビールのお供になる。

◆例年なら、居酒屋などで飛ぶように売れたのかもしれない。何日か前、近所の青果店で袋詰めを勧められた。今年は暖冬のため実がふっくらして上出来に育ちながら、需要の低迷でかなり安いのだという。農家の方々はさぞ残念なことだろう。

◆気温が汗をかくほどに高くなるなか、39県で緊急事態宣言が解かれる見通しになった。居酒屋で味わう冷えたビールとのコンビに、間に合った地域があるということだろう。

◆とはいえ、加減よく踏み出していただきたい。宣言の解除は安全宣言ではないのだから…と、とりあえず申し上げておくものの、何日も続けて感染者を出さなかったのは地域の努力の成果にほかならない。緩みは禁物だが、頑張った人にはご褒美が必要である。

◆それにしても青果店で手にとった空豆の値は生産者が気の毒になるほどだった。素十の句を思い出す。<豆飯に一汁あればよからんか>。豆ご飯なら、どの地域の人も旬に間に合う。

【読売新聞 編集手帳 2020年(令和2年)5月14日より】

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「看護の日」に ちなんで・・・

2020-05-13 23:19:00 | 『コロナ:考』新しい試みです(2020年4月より)

      神戸赤十字病院 「今日の散歩スケッチ」by Furusaka yasushi

古くからの友人(神戸市在住)が、『最前線で働く人に感謝 COVID-19』の想いから、

日常の散歩の折、描いたものを、送ってくれました。とても、嬉しかったですね。

いただいたメッセージは、

「今日の散歩スケッチは、神戸赤十字病院。院内感染で苦労した病院です。まだまだ大変、応援したい思いで描きました!」

 

今回の動画は、古くからの友人が送ってくれたスケッチを見ながら、作ってみました。BGMは、数年目に魅せられたピアノの音と、ナレーションは、AI TALK 3(話者:のぞみ)を使用しました。

よろしければ、ぜひ、ご覧ください。

【動画作成 3分45秒】

【URL】https://youtu.be/NVxk-oU4N40

 

 

(本文)

◆毎年5月12日は「看護の日」。ナイチンゲールの生誕日に由来する。きのうがその日だった。

◆日本看護協会が募集する作文の今年の入選作に、感謝の思いを伝える言葉遊びを見かけた。作者は山口県の中野淳子さん。腸炎で入院中の体験をもとに、タイトルは<魔法の言葉「かんごしききます」>としてある。

<魔法の言葉「か ん ご し き き ま す」>

*(か)変わりないですか

*(ん)んーと、中野さん

*(ご)ご飯全部食べられましたか

*(し)失礼します

*(き)今日担当の○○です

*(き)気分はどうですか

*(ま)また何かあれば言って下さい

*(す)すぐ行きます――

§「ききます」は「聞く」「効く」のどちらにもとれるように平仮名なのだろう。

◆今この時間にも感染防護服に身を包み、魔法の言葉をかける人々がいるにちがいない。無事に退院する患者を見送ることもあれば、助けられなかった患者の最期を看取みとることもある。生死を分ける現場に身を投じる医療従事者の辛苦はいかばかりだろう。感染はピークを過ぎたのか減少傾向にある。病棟で身を粉にして働く人の頑張りが大きいことは言うまでもない。

§  効いています。

 

◆まだ緩んではいられない。

現場の負担を減らす努力なら、みなできる。

【読売新聞 編集手帳 2020年(令和2年)5月13日(水)】

 

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