荻伏共同育成場日誌

北海道浦河町にある競走馬育成牧場・荻伏共同育成場の場長が日々の風景をお届けする徒然日誌。

ゴールドシップのゲート内での出来事についての一考察

2015-06-30 07:50:36 | 日記
第56回『宝塚記念』で大本命ゴールドシップがゲート内で立ち上がり大きく出遅れたことは本当に残念な出来事でした。『天皇賞(春)』での枠入り不良、ゲート再審査からの先入れは当然のことであり、ギリギリまで厩務員が枠内にいてなだめており、そのときは問題なさそうにも見えました。しかし、ゲート入りが完了し発走直前と同時に立ち上がり、着地したところでゲートが開けられたものの、もう一度立ち上がり大きく出遅れ、結果的に大敗しました。

【原因】
 横山典騎手は「分からない」とコメントしております。実際のところはゴールドシップ自身しか分からないと思いますが、いくつか検証したいと思います。
まずは先入れ。上述の通り、前走枠入り不良だったので先入れは当然です。そして、次回も確実に先入れです。これを破れば競馬の公平性は失われます。なぜなら枠入りを待たされる馬は自分に非がないにもかかわらず不利な状況に置かれてしまうからです。ゴールドシップは自らの枠入り不良という行為によって先入れになったわけです。さて、先入れは影響があったのかと言えば、大なり小なりあったと思います。本当に狭いのですよ、ゲートって。ゲートが良くない馬にとってみれば苦痛だと思います。
次に隣枠のトーホウジャッカルがチャカついたこと。上述の通り、ゲートはとても狭く、隣の馬はかなり近くにいます。パドックで尾にリボンをして最後方を歩かせているように、ゴールドシップは他の馬が近くにいるとテンションが高くなると推察されます。近くにいるだけでテンションが上がるのに暴れられたら、さらにテンションが上がると考えられます。
逆になぜ発走直前まで大人しくしていたのか考えると、まずは厩務員がついていたからということと、もう一つはテンションが上がっていなかったことが上げられます。隣枠で暴れたこともありますが、それだけではなく枠入りが完了し騎手が手綱を詰め重心を移動すると馬は出走態勢に入り気合も入ってきます。それがゴールドシップの場合過度の気合いになってしまった可能性があります。1998年の同じく『宝塚記念』でメジロブライトも立ち上がり脚をひっかけてしまったように、テンションが上がりすぎると馬は立ち上がるという行為によって発散する方法を求めることがあります。

【対応策】
 今後、発走再審査が行われ無事通過すれば、秋のG1戦線に出てくるでしょう。但し、須貝調教師も仰っているように、トレセンでの練習は全く問題ないとのこと。実際、本当にゲートが嫌いな馬はメンコをかぶせても枠入りを嫌がります。
今回のことでよく引き合いに出されているのが2000年『皐月賞』でのラガーレグルスです。その前々走『共同通信杯』でとんでもない出遅れをしたものの前走の『弥生賞』では問題なかったラガーレグルス。しかし『皐月賞』ではゲートが開くと同時にひっくり返り競走中止。ラガーレグルスもトレセンでのゲート試験は問題ないタイプで、実際通過したのですが、JRAは『東京優駿』で同じような事態が起こらないために実際の競馬場で発走再審査を行いました。京都競馬場での1回目はクリア。2回目の東京競馬場でも外枠のときはクリア。しかし、1枠に入れた時、ラガーレグルスは『皐月賞』と同じことをしてしまいました。その場に立ち合わせた人は観客の中に傘で柵を叩いた人がいたとか。それの善し悪しはさておき、このような形での発走再審査をゴールドシップに行うかどうかです。それは関係者である人たちの声ではなく、馬券を購入してくださるみなさんの声が反映されるべきではないかと思います。「このようなキャラだからあのように出遅れたとしても仕方ない」と考える人が多いならば、このような厳しい処置は必要ないでしょう。逆に「多額の金銭を無駄にしているのだから納得のいく再審査をクリアしてからにしてほしい」と考える人が多いならば、競馬場での再審査も考慮に入れるべきでしょう。

【総括】
これは自身の考えで批判される方もいらっしゃるかもしれませんが、スターターも横山典騎手も須貝調教師も非はないと考えております。スターターは脚が接地したことを見計らって開けています。もう1回立ち上がることは想定外だったでしょうし、新聞等で報じられている通り、横山騎手から開けてよいとのサインもあったと思われます。その横山典騎手ですが、あの状況では脚をひっかけずに制御することが精一杯だったと思います。スタートやり直しを指摘する人もいらっしゃいますが、あの状況で後ろ扉を開けられるのは、乗っている人間からすると余計に大きな惨事を招くのではと考えざるを得ません。管理する調教師の責任を問う声もありますが、上述の通りトレセンではやらないのですから、対策は競馬場でやる以外他ありません。余談になりますが某種牡馬産駒はトレセンにおいてゲート入りが非常に悪いらしく、管理する調教師は口々に″こちらでしっかりやっておいてくれ″と言われるのですが、育成場ではそんな素振りさえ見せないので対策の取りようがありません。
長々と検証してまいりましたが、結論としては今回の件に関してファンの皆様がどのように思っているのかが最も重要であり、それに対して主催者であるJRAがどのように対処するのかという結論以外ないと思われます。ファンの皆様には多様な意見があると思われますが、その中で最も支持されている意見は何なのか集約し、それを実行するのが主催者としての役割ではないでしょうか。


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