27日ダート界に偉大な足跡を残した名馬カネヒキリが種付け中の事故によって死亡しました。色々情報が流れていますが、種付けに入ろうとしたとき繁殖牝馬によって竿を蹴られ尿が出せなくなり膀胱破裂で死亡という情報が自分の方には入っていますが真偽は不明です。
事故の要因を考える前に簡単な繁殖についての流れを紹介したいと思います。繁殖経験は3年しかなくもう12年も前のことですから記憶違いがあるかもしれませんが参考までに。
繁殖牝馬はいつでも種付けできるわけではありません。通常黄体期と発情期が周期的に入れ替わり発情期の最後に排卵するのですが、その排卵前に種付けを行います。精子は約2日間もつので排卵前日につけるのが良いのでしょうが都合よく排卵してくれない場合もあるので、種付け後に排卵促進剤をうつことが一般的です。
それではどのように排卵時期を見極めるのか申し上げると、その年に分娩(お産)をした繁殖は分娩後1週間程度で初回発情と呼ばれる排卵があり、そこで種付けをする場合もありますが、お産後すぐということで子宮の状態が悪い時があり総研(JRA総合研究所)は2回目以降の発情を推奨しています。初回発情が終わり黄体期に入るのですが黄体期は繁殖によって周期が異なるため(確か14日くらい)、生産牧場の多くはそれまで繁殖がどのように繁殖経過を送ってきたかを繁殖台帳(お産台帳)と呼ばれるものにつけており、それに基づいて発情期が来たかどうかを観察。多くの牧場は詩情馬みなさんが知るところの当て馬を養っており、繁殖を近づけて発情がきているかどうか確かめます。
発情期に入ると洗浄場やもしくは牧場に来てもらう形で獣医に子宮や卵子の状態を手を直接入れてもらうことによって診てもらいます。これが直腸検査略して直検で卵の成長や子宮の柔らかさなどから排卵するタイミングを判断してもらいます。ここでやっかいなのが排卵寸前の卵の大きさも繁殖によってかなりの個体差があるため、それまでの繁殖経過が重要になってきます。
さて本題です。
通常良い発情がきている場合繁殖牝馬が種馬を蹴るという行為は見られません。ではどうして繁殖牝馬は蹴るという行為に至ったのか。
・元々癖が悪い繁殖だった。
・上がり馬だった。
・良い発情が来ていなかった。
繁殖の中でも癖が悪い馬はいます。以前の種付けでトラウマがあり種付けそのものが嫌いで暴れる馬は少数ですが扱ったことがあります。そのような場合は種馬場のスタッフにその旨を伝えることで事故は回避できます。
上がり馬つまり競走生活を終えるなどして初めての種付けに臨む繁殖ですが、これまでの傾向も分からずなおかつ繁殖自身も初めての経験で恐怖から暴れる繁殖は少なくありません。ですから初めての種付けは比較的上手な種馬につけるようにする牧場が多いと思います。上手な種馬とは
・静かに入ってくる。
・慎重にやさしく乗る。
・乗るまでに時間をかけすぎない。
で下手な馬はこれをすべて逆にした種馬です。
発情にも良い悪いがあります。詩情馬につけてもあまり発情兆候を見せない繁殖はいて、そのような場合良い発情ではなくても種付けしてしまうケースは少なくありません。種馬場にいる詩情馬の前へ持っていき発情兆候を見せるかどうか判断しますが中には蹴る馬などもいます。そのような場合種馬場の獣医が直検し子宮の状態を確認し種付けの可否を判断しますが牧場で獣医のゴーサインが出てきている繁殖ばかりですから大方通ります。
このような繁殖牝馬がいることを想定して種馬場の中には対策を講じているところもあります。トップサイヤーが集まる社台スタリオンでは防具であり実際に挿入できないようになっている前掛けをつけた当て馬が実際に乗っかる寸前まで行きます。こうすることで種馬場のスタッフは発情しているかどうかということと主ともに繁殖牝馬の特徴を把握することができるわけです。世界の名馬が集まる日本軽種馬協会は“けばり”と呼ばれる(注:検索しても出てこないので違うかもしれません)全身固定具をつけて繁殖の動きを封じます。一見可哀想にも見えますが協会主催の後継者研修という場で「世界から名馬を売ってもらうためには万が一も許されないんです」と中西場長が仰っておられたのが思い出されます。
今回は種馬場での事故でしたが他山の石と思わず、日々馬の状態は変化し、僅かな兆候を見逃さないような万全の対策を講じる必要性を肝に銘じさせられる事案でした。
同業者やこの仕事に興味のある方はコメントくださいね。
事故の要因を考える前に簡単な繁殖についての流れを紹介したいと思います。繁殖経験は3年しかなくもう12年も前のことですから記憶違いがあるかもしれませんが参考までに。
繁殖牝馬はいつでも種付けできるわけではありません。通常黄体期と発情期が周期的に入れ替わり発情期の最後に排卵するのですが、その排卵前に種付けを行います。精子は約2日間もつので排卵前日につけるのが良いのでしょうが都合よく排卵してくれない場合もあるので、種付け後に排卵促進剤をうつことが一般的です。
それではどのように排卵時期を見極めるのか申し上げると、その年に分娩(お産)をした繁殖は分娩後1週間程度で初回発情と呼ばれる排卵があり、そこで種付けをする場合もありますが、お産後すぐということで子宮の状態が悪い時があり総研(JRA総合研究所)は2回目以降の発情を推奨しています。初回発情が終わり黄体期に入るのですが黄体期は繁殖によって周期が異なるため(確か14日くらい)、生産牧場の多くはそれまで繁殖がどのように繁殖経過を送ってきたかを繁殖台帳(お産台帳)と呼ばれるものにつけており、それに基づいて発情期が来たかどうかを観察。多くの牧場は詩情馬みなさんが知るところの当て馬を養っており、繁殖を近づけて発情がきているかどうか確かめます。
発情期に入ると洗浄場やもしくは牧場に来てもらう形で獣医に子宮や卵子の状態を手を直接入れてもらうことによって診てもらいます。これが直腸検査略して直検で卵の成長や子宮の柔らかさなどから排卵するタイミングを判断してもらいます。ここでやっかいなのが排卵寸前の卵の大きさも繁殖によってかなりの個体差があるため、それまでの繁殖経過が重要になってきます。
さて本題です。
通常良い発情がきている場合繁殖牝馬が種馬を蹴るという行為は見られません。ではどうして繁殖牝馬は蹴るという行為に至ったのか。
・元々癖が悪い繁殖だった。
・上がり馬だった。
・良い発情が来ていなかった。
繁殖の中でも癖が悪い馬はいます。以前の種付けでトラウマがあり種付けそのものが嫌いで暴れる馬は少数ですが扱ったことがあります。そのような場合は種馬場のスタッフにその旨を伝えることで事故は回避できます。
上がり馬つまり競走生活を終えるなどして初めての種付けに臨む繁殖ですが、これまでの傾向も分からずなおかつ繁殖自身も初めての経験で恐怖から暴れる繁殖は少なくありません。ですから初めての種付けは比較的上手な種馬につけるようにする牧場が多いと思います。上手な種馬とは
・静かに入ってくる。
・慎重にやさしく乗る。
・乗るまでに時間をかけすぎない。
で下手な馬はこれをすべて逆にした種馬です。
発情にも良い悪いがあります。詩情馬につけてもあまり発情兆候を見せない繁殖はいて、そのような場合良い発情ではなくても種付けしてしまうケースは少なくありません。種馬場にいる詩情馬の前へ持っていき発情兆候を見せるかどうか判断しますが中には蹴る馬などもいます。そのような場合種馬場の獣医が直検し子宮の状態を確認し種付けの可否を判断しますが牧場で獣医のゴーサインが出てきている繁殖ばかりですから大方通ります。
このような繁殖牝馬がいることを想定して種馬場の中には対策を講じているところもあります。トップサイヤーが集まる社台スタリオンでは防具であり実際に挿入できないようになっている前掛けをつけた当て馬が実際に乗っかる寸前まで行きます。こうすることで種馬場のスタッフは発情しているかどうかということと主ともに繁殖牝馬の特徴を把握することができるわけです。世界の名馬が集まる日本軽種馬協会は“けばり”と呼ばれる(注:検索しても出てこないので違うかもしれません)全身固定具をつけて繁殖の動きを封じます。一見可哀想にも見えますが協会主催の後継者研修という場で「世界から名馬を売ってもらうためには万が一も許されないんです」と中西場長が仰っておられたのが思い出されます。
今回は種馬場での事故でしたが他山の石と思わず、日々馬の状態は変化し、僅かな兆候を見逃さないような万全の対策を講じる必要性を肝に銘じさせられる事案でした。
同業者やこの仕事に興味のある方はコメントくださいね。
他山の石とする←が正しい