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初期胚を凍結保存するメリット

みなさま、こんにちは

当院では初期胚(培養2-3日目)で凍結保存することが多いのですが、患者様から

「えっ、全部胚盤胞で凍結保存しないんですか?」

とご質問されることが、よくあります。もちろん、胚盤胞まで育った受精卵は殻から出てきて子宮の内膜に着床するだけの状態なので、そこまで育つかどうか分からない初期胚よりも妊娠率が高いです。
それでも当院が、初期胚での凍結保存をお勧めする理由をご紹介いたします。

確実に移植をするため
 当院の卵巣刺激は、内服薬主体のマイルドな刺激方法となっています。そのため、注射でガンガン刺激する方法と違って、採卵数が少なくなります。患者様個々の卵巣機能にもよりますが、多くても5個程度の採卵数になります。その中には未熟卵子も含まれ、さらに正常に受精する卵子は限られてきます。結果的に移植に使える受精卵の数がどんどん少なくなります。少ない受精卵を胚盤胞まで培養して、胚盤胞にならなかった場合、その心理的・身体的・経済的な損失は大きくなるのではないでしょうか。
当院では、確実に移植が行えるように、早い段階で受精卵を移植・凍結保存することを、第一選択として行っています。

胚盤胞に育つ初期胚がある程度見極められるため
 当院では、タイムラプスインキュベーターを用いて、受精卵の発育状況を動画で観察しています。この機械を導入する前は、朝1回だけ培養器から受精卵を取り出して顕微鏡下で観察していました。現在では、15分毎に機械が受精卵の写真を撮影し、それを動画にすることで受精卵の分割の仕方や速度が分かるようになりました。それにより、正常な分割をしている受精卵が選択できるようになり、それ以上培養を続けなくても妊娠しやすい受精卵が見極められるようになっています(100%ではありませんが)。

グレードが低い胚盤胞は凍結しないため
 当院では、グレードが低い胚盤胞(3CCや4CCなど)は凍結保存の対象としていません。融解後の生存率が低い可能性があり、また妊娠率も低いためです。そのため、初期胚の段階で移植し、お腹の中で胚盤胞になってくれれば、廃棄することなく有効的に使用できると考えられます。

二段階胚移植ができるようにするため
 良好な胚盤胞を複数回移植しても、なかなか妊娠しない場合、二段階胚移植という移植方法が有効です。これは初期胚を1個移植し、数日後に胚盤胞を1個移植する(合計2個)方法です。最初に初期胚を移植するのは、受精卵から発せられる物質が子宮の内膜に作用し、着床しやすい環境を整えてくれることを期待するためです。受精卵を2個移植するため、多胎妊娠の可能性が上がりますが、原因不明の着床不全の方には効果的であると考えています。(初期胚の代わりに培養液を移植する方法もありますが、当院では凍結培養液の管理が煩雑になってしまうため、現在のところは実施しておりません。)



 ただし、初期胚の時点で異常な分割がみられた場合は、培養を継続し、胚盤胞になったら凍結保存することもあります。初期胚の凍結個数は1-2個程度にとどめ、残りは胚盤胞まで育てています。初期胚移植でなかなか妊娠に至らない場合や患者様が胚盤胞での凍結を希望された際も、胚盤胞にならなかった場合のリスクをご了承の上、培養を継続することもあります。患者様によって、受精卵の状態や治療内容が変わってきますので、臨機応変に対応させていただいております。

長くなりましたが、初期胚凍結のメリットについてのお話でした。
治療について分からないことや変更してほしいことがあれば、いつでもご連絡くださいね






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