またまた、「串ん子」である。 賑やかになった、いわゆる裏なんばにあるのだが、マスターの元気な顔を見るのが、ひそかな楽しみ。
で、鰯があるか、聞いてみると、「ちょうど一人前、いいのがあります」と、「では、それ」と注文。
そういえば、40年以上前には、大阪で生の鰯なんか、食べるという習慣がなかった。 で、あるとき、知人に教えられて、九州は長崎の北のはて?(生月)という島に、一緒に行くことになった。(当然夏休みかなんかで、あったはず) 当時は、橋もなく、平戸からまた船で渡るという旅である。(今では立派な美しい橋が出来ていて、車で20分かな。(はやっ!)
当時は、ひっそりとした、漁業と農業で成り立っているような、こじんまりした島で、島の人たちも、ユックリとしたテンポで暮らしていた。そこのある知人を訪ねると、主人は、朝から漁に出かけていて、もう少ししたら戻るという。 しばらく待っていると、物静かなおじいさんが、帰ってきた。 おしゃべりはしない無口なタイプで、挨拶しても「ふーん」とひとこと。 代わりに奥さんが、何かと声をかけてくれたりして。
そうこうしていると、まあ軽く食事でもと、出してくれたおかずが、鰯の刺身だった。 「コレなんの魚ですか?」と聞くと「さっき釣ってきたイワシ・・・」という。ご飯と一緒に軽く醤油につけて食べると、ビックリくりくり! 美味しい~い、甘いし柔らかいし、変な生臭みもない。 「これ、美味しいですね」というと、とてもうれしそうな顔で、「都会では食べられないかも」との返事。 足が速いからとのこと。
この時のうまさが忘れられなくて、大阪で鰯の刺身を居酒屋で見つけたら、つい注文してしまう。 マスターにその話をすると、「今は便利が良くなって、クール便ですぐ届くしね~」と。 でも、私はもう亡くなったその時の漁師さんが、美味しいと食べる私を見て、嬉しそうな顔をしていたのをいつも想い出すのでした。