「死なせないから。信じて。俺達を信じて」
緑川は声にならないように気をつけて、藍原に念じた。自分の力には自信はないが、催眠術を使える藍原ならきっと微弱な自分の念を受け止めてくれるはずだ。
PKOで派遣されていたのに、自分を信じてくれた現地の少年を守れなかった。少年が自分を裏切ったとか言うのは別問題だ。長男の少年には守るべき家族があった。自衛隊に入った緑川を、「息子を軍隊に入れることになるなんて」と涙ぐんで見送った母のことも、ちょっと頭をかすめた。
「空港までの短いランデブーだ。さっさと歩くんだ」
田村は藍原の腕をつかんでピストルを突き付けたまま、銀行の外に出た。車のそばにはジェラルミンケースを2つ載せた台車があって、間抜けな顔の警察官が2人で番をしている。
田村は歩道の濡れた部分を大きく避けて、金と車に向かった。
「連番ではない紙幣で2億円あります」
間抜け面が言った。
「ちょっと開けてみて」田村が言うと、背の低い方の警察官がケースを開けた。「下から17枚目を出してみて」警察官は一枚ずつ数えて1万円札を出した。
「もう一つのケースは上から22枚目」
どちらも古い額面1万円の日本銀行券だった。
緑川は声にならないように気をつけて、藍原に念じた。自分の力には自信はないが、催眠術を使える藍原ならきっと微弱な自分の念を受け止めてくれるはずだ。
PKOで派遣されていたのに、自分を信じてくれた現地の少年を守れなかった。少年が自分を裏切ったとか言うのは別問題だ。長男の少年には守るべき家族があった。自衛隊に入った緑川を、「息子を軍隊に入れることになるなんて」と涙ぐんで見送った母のことも、ちょっと頭をかすめた。
「空港までの短いランデブーだ。さっさと歩くんだ」
田村は藍原の腕をつかんでピストルを突き付けたまま、銀行の外に出た。車のそばにはジェラルミンケースを2つ載せた台車があって、間抜けな顔の警察官が2人で番をしている。
田村は歩道の濡れた部分を大きく避けて、金と車に向かった。
「連番ではない紙幣で2億円あります」
間抜け面が言った。
「ちょっと開けてみて」田村が言うと、背の低い方の警察官がケースを開けた。「下から17枚目を出してみて」警察官は一枚ずつ数えて1万円札を出した。
「もう一つのケースは上から22枚目」
どちらも古い額面1万円の日本銀行券だった。