On The Road

小説『On The Road』と、作者と、読者のページです。はじめての方は、「小説の先頭へGO!」からどうぞ。

第6話-3

2010-12-12 20:03:00 | OnTheRoadSSS
 警官達が車にケースを積み込むと、「運転できるよな?」と田村は藍原に聞いた。
 「免許を取るつもりがなかったので」
 藍原は首を振った。友達が教習所に通う頃、専門学校での勉強が忙しかったのと、妹を事故で亡くしたせいで運転が恐かったのが原因だ。
 田村は「使えねえ女」と呟いた。田村も運転が得意ではないからだ。近藤を手放したのは惜しかったかもと思いながら、田村は藍原を助手席に押し込んでロックをかけ、チャイルドロックもかけた。いつか運転手つきのベンツに乗る予定の自分には、運転技術など要るはずもないと思っていたが、大学時代にノリで運転免許を取得しておいてよかったかもな。

 田村は運転席に座り、近藤がキティのキーホルダーをつけたキーを差し込んだ。運転は5年振りだ。シートベルトを締めて、キーを回して、乱暴にアクセルを踏み込む。路上駐車されていた車が、雄叫びのようなエンジン音を発した。
 田村は近藤が欲しがったマニュアルの車に、中古車の出物がなくてよかったと思った。クラッチを踏んでギアを変えるなんて面倒なことをしながら、2時間もかけて空港まで行くなんて無理だ。途中で荷物も拾っていかなければいけないし。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。