土佐のくじらです。
征夷大将軍と言えば、後の室町幕府の足利将軍、そして江戸幕府の徳川将軍など、全国の支配者のイメージがありますが、
正式には官職・・・つまり、朝廷が与える職種の一つであり、今で言うならば、防衛大臣か自衛隊の幕僚長ポストでしかありません。
その証拠に、初代征夷大将軍の、坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)は、一人の将軍でしかありません。
しかし頼朝以降、征夷大将軍=実質上の日本国王というポストに立ち、武士政権というものが日本に長く定着する元となっております。
後の足利将軍も徳川将軍も、この頼朝の前例があればこそ、将軍=実質的な日本国王になれたのです。
それは、古来の日本人は全員農民だった・・・という、当時の職業区分の当たり前がそうさせているのですね。
農民が、実際に武具を手に取り、護衛をしたり、戦に出た姿が武士だったのです。
つまり、武士・・・というのは、そういう身分・・・ではなくて、当時の一般ピープルこそが武士なのです。
普段の日常では、農作業をしていて、いざ合戦になると武具を持って駆けつけるのが、当時の武士の姿ですから、今で言えば、日常的には各自の仕事をしており、時折政治活動をしたり、政治に興味を持っていて、時折意見を言ったりするレベルの市民が、当時の武士階級に当たると思っていただければ良いのですね。
武士=農民=一般ピープルですから、武士が天下を治める形である当時の社会というのは、以外ですが結構、民主的な社会なのですね。
さて、征夷大将軍は天皇より委譲されていますので、戦という名目があれば絶対権力者です。
”戦に備える”という名目であれば、あくまで”その分野に関して”であれば、何でもできる立場・・・です。
すなわち、攘夷の元、朝敵と戦をする権限と、武士の誰を取り立て、誰をどこに配置するかと言う権限が、征夷大将軍にはあるわけです。
実質上の権限は、実はこれだけです。
源頼朝は、このたった2つの権限を、それまでの歴史にない、統治の原理として使うわけです。
それはまず、
全国を警護する目的で、配下の御家人を地方に配置します。
これが”守護”と呼ばれるものです。
今で言うと自衛隊の、地方への部隊配置・・・みたいな感じですね。
そして、全国の農地を警護する目的で、御家人を”地頭”として地方に送ります。
今で言うところの警察官ですね。
頼朝の偉いところ凄いところは、この地頭に、徴税権、つまり税を取り立てる権限を与えたことです。
決して、税を使う権限・・・ではありません。
取った税は、国司や荘園主に送り届ける義務がありました。
税を取り立てる権限ですから、警察官である地頭には、税務署の仕事もさせたわけですね。
なぜそれが可能かというと、武士=農民ですけど、農民=武士だからです。
当時の農家は=武士ですから、農家=武士の土地を担保している将軍頼朝には、構造上逆らえなかったのですね。
武士は将軍には逆らえませんので、税金の取立ても命じられればするし、農民も御家人が税の取立てに来れば、応じざるを得ないのです。
しかし地方の農民=武士も、それまでは、遠くの国司や、荘園主に年貢を届けていましたから、その手間も省けて、一石二鳥でした。
今では、各地方都市レベルで税務署がありますが、それを毎年、東京の国税局本庁に届けていたら大変ですよね。
その税の届出業務を、地頭が代行したのです。
(これで頼朝の旗揚げ時の公約、「都に年貢を、納めに行かなくて良くする。」も達成しております。)
そういった、現場での実際の税の流れの中に、頼朝配下の御家人である”守護・地頭”を入れることで、実質的に地方の国司や荘園主も、頼朝の意向を無視できなくなったのですね。
なぜなら、国司や荘園主といった旧勢力からすれば、生活費(税)を届てくれるのは、頼朝の配下の武将(地頭)だからです(笑)。
現代で言えば、銀行に当たるかも知れませんね。
銀行には、自己資本というのは存在しません。
全て我々の預貯金を資本としていますから、銀行自体は金を稼いでいません。
しかし、運転資金など各種借り入れには、銀行からの借金が必要ですから、銀行は威張っていますよね。
また、JA(旧農協)みたいな感じでしょうかね。
JAは、農作物の販路を握っていますし、実質上農家は、資金の借り入れや種や肥料の買い付け先を、JAに絞られています。
JA自体は農作物を生産はしていませんが、その販路などを握ることで莫大な権限を、実質上握っております。
またいつか書きたいとは思っておりますが、TPPの問題なども、本質論的に言えば、結局はJA問題となってしまいます。
そのように、権限=富と考えるならば、その富の流通経路を握ることで、実質的な権限を握ってしまえるわけです。
これを頼朝は、日本国内の統治の仕組みとし、配下の武士の権限を強めつつ全国統治し、そして武士社会を実質的なものにしてしまったのです。
いやはや、恐るべき政治家であります(笑)。
組織とか世の中の仕組みというのを、知り尽くしている政治家ですよね。
この、御家人と守護地頭システムの構築で、日本は一気に武士の世の中になり、そして着実に日本の歴史に、前例として定着していく訳です。
(続く)
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