アガガガガ……ガガガガガ
それは地獄の門から発せられてる音だ。鬼達二人が準備を終えて二人で何かを唱えだすと、地獄の門に刻まれてる大きな顔? に見える顔の表情が変わった。大きな両開きの扉はそれが閉じると一つの顔になる……みたいなデザインをしてる。その顔もきっと鬼をモチーフにしてるんだろうと思われる。
その顔は元は怒ってるような……そんな風に小頭には見えてた。でも儀式を初めてすぐにその顔が変化しだした。てか、小頭にはそういう機能があるんだ……と思った。まさかあの門の顔が変化するなんて……今はなんか困惑してるというか? 目玉がグルグルと回ってる。
どのくらいの進捗とか、順調なのかどうか? とか小頭にも育代も判断は出来ない。だから見守るしかできないわけだけど……
「門から出てた色々な物が引っ込んでいってる?」
門から出てこようとしてた者たちが門の中へと押し戻されていってる。これは上手く行ってる……という事なんじゃないだろうか? そんな風に思ってる小頭だ。
「小頭、大丈夫よ。もうすぐ、全て終わる」
そういって小頭の手を握ってくれる育代。今の育代の姿だとおばあちゃん感は薄い。何が起きてもいいように若返ってるんだろうけど、でもつながった手からはおばあちゃんを小頭は感じる事が出来る。
「うん……」
そう答える。もうすぐでまた昨日までの日常が戻ってくるはずだ。まだ一日も経ってはない。起きて兄が鬼になってて、そして町にも妖怪が溢れる世界になってた。それからまだ一日も経ってないのがちょっと不思議だった。でも、このままこんな世界になってしまっても困る。
それが普通になったらどうなるのかも想像できない。明日も明後日も明々後日も……兄が鬼男のままで、都会に帰っても、実はそこにも沢山の妖怪がいて? それは小頭には想像できなかった。
だって確かに小頭は鬼男を受け入れてはいるが、でもそれでも兄ではない。小頭の兄は野々野足軽だけだ。そう思ってる。
おかしなことに門がなんか苦渋でも飲んだみたいな……苦々しい顔になった。そして門がまた開かれる。何かが出てくることはない。
「上手く調整は済んだって事ですか?」
「もっちろん。私達が頑張ったからね」
育代の言葉に鬼女が胸を張ってそうこたえる。それに対して育代は「はいはい」と軽く流してた。そして今度は育代が命令を追加して、門へと妖怪たちを進める。門の中へと列をなして入っていく妖怪たち。
かなりたくさん妖怪たちはいるからこれも時間かかりそうだなって小頭は思った。でも順調……そう、順調だ。