ただ直してるだけじゃない。合わせてるだけじゃない。だってこのままただ直してしまうと、システムに従って、再び私達を襲ってくるだろう。そんなのは元の木阿弥である。
だからそんな風にはさせることはできない。より内部に、より深く……私はただ親切心でこいつを直しているわけじゃない。直す過程で、ここのシステムに侵入してるのだ。
(アイ……ちょっとアイ! 反応しなさい!)
私はアイに語り掛ける。なかなか反応しないから、ちょっと強めな語気になってしまうよ。そうやって何回か呼びかけてると、ようやく反応が返ってきた。
(すみません。ちょっと夢中になってました)
(はぁ……全く。それで、それだけ夢中だったんだから、解析は出来たんだよね?)
私はアイにそう尋ねる。アイには先に私がここに来るまでのデータとログを渡しておいた。一応私もここに来るまでにシステム中枢に侵入しようとしてみたんだよ? けど流石に時代背景がこっちが最新だとしても、天才によって独自のカスタマイズをされたこの船のセキュリティをペーペーである私が正攻法で突破する……というのは流石に無理があった。
なにせシステムへの造詣? というのかな? そういう基礎から全く深さが違うからね。私はあくまでもマニュアルと脳の拡張という荒業で知識を叩き込んでるって感じである。
ようは詰め込み教育みたいな? でも、そもそもがあの世界で生まれた人は、きっとちゃんとした教育カリキュラムで色んなテクノロジーに触れてきたはずだ。それこそ幼少期からちゃんとした知識の下地とかを作ってただろう。
でも私にはそんなのないからね。ただ詰め込んで詰め込んで、基礎を固めてる感じ。それに比べてこの船の主は基礎から応用へと発展して、進化……まで行ってるんじゃないだろうか? それこそ天才……なんだし。
そうなると、まだまだ基礎の私ではよくわからない部分は多い。なのでそこでアイである。アイは元々G-01のアシスタントAIだ。AIといっても、ほぼ人格とかありそうな……そんな感じだし、自身で考え、自分の考えとかもってる。
てか、G-01から切り離して肉体を与えたくらいから、それは顕著になってる気がする。G-01に縛られてたしがらみ……それがなくなったのが大きいのかもね。
アイは元から私よりも圧倒的な知識があるんだから、この不可思議なシステムに興味を持ってくれると思ってたよ。
(まだまだ30%といったところですけど、同時に進めていくしかないわね)
(そうそう、とりあえずこの輪っかを通してこの船のシステムの中枢……ユグドラシルシステムへとアクセスするわよ)
(了解です)
私達は今は静かに、けどもう一つの戦いに興じてる。
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