普通ならもっと夢と希望を持たせるような事をいうのが定石だと思う。だってそっちの方が魅力的だからだ。誰かを動かすには魅力的な言葉が必要だ。心が湧きたって、思わずうごきたくなるような……そんな魅力的な言葉。
でも彼はそんなことは言わないらしい。私は思う……
(そういうとこだぞ)
――ってね。そういう現実的なところが彼が孤独になってしまった所というか? いやわからないけどね。周りに理解されない天才すぎる目標と、なぜか現実的なやり方。
それは実際、とてもありがたいような気がするが、彼に見えてる『結果』がその過程を行くことで到達できると考えられるのは彼だけだったのかもしれない。天才はいつだって荒唐無稽というか、他者には理解できない事を言いまくって夢を語るイメージがある。
それこそ天才にはついていけない……みたいなイメージに繋がってるというか? でも彼は場合はそうじゃないんだから、かなり付き合いやすい天才のような? そんな気がしないでもない。
でも実際には彼は一人……ここで余生を過ごしたんだよね。人生とはわからないものだ。
「いつか、私は私を知ることができるんですか?」
『その時は来るだろう。一つ言っておく。確かに君は禁忌から生まれたかもしれない。でも……既に君の自我は確立されてる。だから……君は君の思うように生きればいい。その場所に、その役目に縛られる必要はない』
きっと何か私が知らないことを色々と知ってそうな彼の言葉は、心にずっしりと響く。なんか色々とわかってます……風なのがむかつくが。でもここに、この場所に私は確かに縛られてると言えるだろう。なにせ私はここから出ることもできないんだから。
けど彼は、それに縛られることはないという。つまりはその内……私は自由に馴れるときがくる?
『私は案外後悔してないんだ。ここまで来たんだ。私の過去は見たんだろう?』
「そうですね……でも、それは本当ですか?」
ちょっと信じれない。だって禿げ散らかしてた時、かなりやけになってなかった? それなのに後悔してないとか……ね。
『私はたどり着いた。完成はしてないが……道筋は見えてる。プチュオクミか……それもまた可能性か』
なにか一人語ってる。私を見る目が、なんか優しいのもぞわぞわするというか? いや、いやらしい目じゃない。それはわかる。期待? 哀れみ? それはきっと全く違う感情だけど……でも、彼にはもう時間なんてものはない。だって彼自身はもう……
「ここでなにしてたんですか?」
『もちろん研究だよ。私にはそれしかないからね。そしてそれを君に託したい』
彼はそういってきた。
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