(あれは……)
後ろ姿でわかってしまう。鬼男の記憶が呼び起されて、その後ろ姿の少女との記憶が溢れる。
「ふふ、兄さま――はここにいます」
チリン……彼女の白い髪には片側に小さな鈴が結ばれてた。それは証で……彼女が普段から身に着けておかないといけないもの。動くたびに「チリンチリン」となるから、「うるしゃーい」といってたこともあった……と鬼男は一瞬で思い出してた。
目の前の鬼男がその存在を確かめるように白い髪の少女を抱きしめる。強くじゃない。彼女の事を壊さないように、あくまでも優しくだ。二人には強い絆……が感じられる。そしてそれからの光景が鬼男には見えた。成長していく彼女を見守る鬼男。
仕事から帰ると彼女の相手をしたり、勉強を見たり。休みの日には遠出をしたり……いつの間にか彼女は大きく成って、白無垢の姿が目に映る。彼女は正面でその姿を見せてくれてる。思わず鬼男の目から一筋の静がこぼれた。
けどそこで彼は自分の頬を殴り飛ばした。ふらついて……よろける。けどそれに彼女が反応することはない。それを見て……鬼男は確信した。
「こんなことは……こんな未来はない」
そうつぶやく。目の前にはまだ、白無垢の彼女がいる。今日はいつもよりも頭に大量の鈴をつけてる。さっきまでその顔も鮮明にみえてた。でも今は……その顔が見えない。靄がかかったようになってる。でも彼女はいう。
「ほら、兄さまみて。私綺麗かな?」
あったかもしれない未来。でも、もうありえない未来。自分の中の願望……でもそれを勝手にのぞかれてる嫌悪感。拳を握った鬼男の腕に赤い文字が浮かぶ。それが拳から腕……肩に行き、そして胸にも広がっていく。
怒りに呼応してるようだった。そしてその角がいつもよりも大きく、そして長くのびる。輝く角からバリバリとエネルギーが放出される。
そしてそのまま怒りをぶつけるように床に向かって拳を叩きつける。
「ぬあああああああああああああああああああああああ!!」
その瞬間、目の前の世界が崩壊した。そして感じる腕にある重み。ハッとする鬼男の腕には小頭が抱かれてた。そして彼女はスヤスヤと寝てる。しかもとても幸せそうな顔をしてる。
「むにゃむにゃ……お兄ちゃんのバカ」
そんな寝言を彼女は言ってた。その寝言を見て安心を一瞬覚える鬼男。でも次の瞬間、頭がこう訴えてくる
『違うだろ!?』
――と。