「偶然じゃない? それってどういう……」
そういう小頭。だってこの鬼とお兄ちゃんである野々野足軽の繋がりなんて思いつくなんてことはない。てかあるだろうか? 本当ならそもこそ交わることなんてなかったはずだ。だって世界が・空間が・次元が違う。いや、そうなのか小頭にはわかんない。だってあの門の向こうが何なのか、全く持って小頭にはわからないからだ。
「それはわからない。だが、なんとなく感じる。あいつは、大丈夫だ」
なぜかとても信頼できるように感じた小頭だ。そこに根拠なんて無いはずなのに……別の世界に飛んだなんて本当ならもう一生会えないことも覚悟しなくちゃいけないことのはずなのに、小頭はきっと足軽は戻って来る、と思ってる。それを今、確信できたといってもいい。
「そっか……」
「それでいいのか?」
「いいもなにも、あんたたちも戻りたいんでしょ? こっちも動く。向こうも……お兄ちゃんは帰ろうとしてる。そうでしょ?」
「そうだな」
こっちにもやれる事がある……というのが小頭にとっても大きいのかもしれない。別の世界に行ってしまったら、基本やれることなんてないだろう。けどこっちには鬼や魑魅魍魎がでてる。そして世界をつなげてる門まである。
どうにかなるような要素は色々とある。だからこそ、動くことで、兄を取り戻す事ができるかもしれない――という希望が小頭には感じれるのだ。
「ねえ、お兄ちゃんだけが、門の向こうにいってるの? あなたは幾代ちゃんと入れ代わったんでしょ?」
「うん? ああ、そうだな。確かに私はその女と入れ代わってる。多少の記憶もあるからな」
「なら、やっぱり幾代ちゃんも向こうに……」
「いや、いるよ。女はこっちにいる」
鋭くそういう鬼女。それに対して小頭は「本当?」と返す。だってね。足軽は門の向こうにいってしまったんだろう? なら一緒にいただろう幾代がこっちにいるのはおかしくないだろうか? そう考えるのは普通だ。
(なにかがあった?)
そう考えるしか無い。なにかがあってお兄ちゃんである足軽は門の向こう側へ、幾代はこっち側に残った。そういうことだろう。そしてそれなら小頭たちが探すのは、幾代だということになるだろう。
てか小頭が知らなかっただけで、きっと二人は幾代の元を目指してる。なにせ鬼女は幾代を感じる事ができる……はずだ。鬼男がそうなんだから、きっと鬼女だってそうだろう。
「幾代ちゃん……」
一体何があったのか、小頭は幾代に問いただすつもりだ。