「きゃあ!?」
ガクンと前に進む体とその場に留まる足でピーンとなってしまう。どうやらアンゴラ氏の攻撃でうずくまってたおかしくなった人が草陰草案の足首を掴んでるようだ。そして……
「あああがああああああ!!」
大きく口を開いて首を伸ばしてくる。するとさすがの草陰草案も「きゃああああああああああああ!?」と叫んで思わず迫ってくる頭を何度も踏みつけた。
ガスっ――ガスっ――ガスっ――
「そのくらいで……」
なんかそんな引いたような声が届く。落ち着いてみてみると、草陰草案の足首を掴んだ人……ちょっと若ハゲ気味のおじさんは顔中が血まみれだった。きっと鼻血とかが出てるせいだろう。見た目ほどひどくはない筈……と草陰草案は言い訳する。
「えっとこれは……」
「いい、走れ!」
朝日倉三は余計なことは言わない。こんなことをやってしまっても、いつも通りだった。まあ状況が状況だ。女の子が知らないおじさんに足首を掴まれたらびっくりして顔を何回も踏んづける……なんてことは自然な事だろう。女の子の足首をいきなりつかむような不作法な奴の方がそれは非難されるべきだ。
「はあはあ……! まだあんなに……」
息を切らしつつそんな風にいう草陰草案。けどそれは間違いないだ。まだあんなに……じゃない。そもそもが今も現在進行形で被害者は増えてる。原因を……諸悪の根源をどうにかしないとこの状況が改善することは……ない。
「チャド氏、まだか?」
「近づいてるのは確かだ。それを強く感じる」
ダウジングの棒は最初よりも大きく広がってる。確かに近づいてはいるようだ。けど……それと同時におかしくなった奴らも多くなってる。けどこのままだと……
「駅の中に行く気?」
あそこはヤバい。てかこのままだとグルっと回って別口に来ただけだ。だってまだ電車は動いてて……まだ動いてるんだろうか? けど少なくともちょっと前までは動いてた。そして沢山の人達がこの駅に降り立っただろ。
でもその時には既に駅は封鎖はされてた。それこそ最初は別の出入り口に誘導とかもされたかもしれない。けど多くの人がこの駅構内に閉じ込められてるのは確実だ。
それにもしかしたら……
「まさか電車におかしくなった人が乗ったりしてないですよね?」
「そうなったら……」
草陰草案のふとした言葉に嫌な想像が皆に広がった。けどそれを否定するような事をミカン氏がいった。
「いえいえ、彼らがおかしくなったのは不思議な力のせいなのですから、流石に電車に乗って離れすぎたら正気に戻るのでは?」
「それは……」
「なるほど」
皆もそのミカン氏の発言は納得してる。けどさらに彼はこういった。
「ですが、これを引き起こした原因がこの先にいる……ということでよろしいんですよねチャド氏?」
「ああ」
そう会話をするとミカン氏はさらなる推測をいってきた。
「ならやばいかもですぞ。もしかしたらおかしくなった影響を受けた人ではなく、その元凶が電車にのって移動したとしたら?」
その言葉に皆の顔色が悪くなる。それにそれだけじゃない。もしものその可能性。それは勿論だけど動画を視聴してる視聴者にも聞こえてるわけで……もっと都市部の方にこの被害が広がるかもしれない……そんな可能性と共に不安が広まっていってしまう。