いい日旅立ち

日常のふとした気づき、温かいエピソードの紹介に努めます。

「声なき命のささえかた」~在宅看取り医のささやき~

2018-09-20 18:27:47 | 健康
人生の終わりをどのように迎えるか。
高齢者にとっても、それを支える人たちにとっても、大きな問題です。
在宅看取り医として活躍している金谷潤子医師の一事例を掲載します。

病院から退院した患者さんの家庭を訪問したときのお話です。

      ………

「声なき命のささえかた」~金谷潤子医師のお話~

急なアクシデントが続き、お元気だったお母様が応答もない状態になりました。
娘様は介護のためにお仕事をやめ、お父様もご高齢にもかかわらず、手厚く毎日尽くしました。
病院からお帰りになってまだ1週間。
でも、もう1週間。
早速お母様の発熱で、この数日はなおご家族のお疲れも蓄積されています。
点滴で何とか持ちこたえましたが、この先繰り返す可能性は濃厚です。
診察とご家族にお話しするため、夕方訪問しました。

「お母様は家に帰してくれただけで充分ありがとうと伝えたかったのではないでしょうか?
わざわざお熱を出して知らせようとしたのかもしれませんね。
小さなころから娘様を大切に育ててきたことでしょう。
優しいお母様ですから、娘様が夜中も必死に痰の吸引をがんばっているのをさぞ無理しているのだろうとご心配しているかも知れませんね。
ここはご自宅です。
病院ではありません。
病院は生命を少しでも長くたもつための治療をする場所です。
ご自宅ではお母様の人生の終わりをどういう風にされたいか……についてもう少し自由に考えることができます。
お母様が望まれるだろうという形をみなで考えてみませんか?」

訪問看護さんもお忙しい中お2人かけつけてくださいました。
娘様もお父様も訪問看護さんも涙されていました。
今は鼻から栄養の管が入り、意識のほとんどないお母様です。
意識のある時あれほど嫌がって自分で何度も抜いてしまっていた鼻の管は様子を見て卒業し、点滴で少しずつお迎えの準備をすることにしました。

「もちろん進路変更はいつでも可能です。
不安やためらいはいつでもお伝えください。
ただ、残念ながらお母様の命の灯火はかなり弱くなっているようです。
どうか、お母様のいる時間を普通にお過ごし下さい。
酸素飽和度や血圧や体温を日に何度も計るよりも、さりげなくお母様に以前のように話して差し上げてください。
『お母さん、今日は天気が良いね』
『お母さん、今日の晩御飯おいしいよ。一緒に食べられたらいいのにね』
『お母さん、あのときはすまんなあ』
そんな、普通の時間をお過ごしください。
ここは今「お母様もいる家」なんです。
おそらく新しい年は越せないでしょう。
どうか大切な時間をお過ごしください。」

おひとりのいのちです。
どんな方でも尊いいのちです。
そのいのちの声なき声に耳を傾けて、
自分のできることをいつまでも考えていきます。

          ………


金谷潤子医師は、このようなことを話したといいます。
「こんな医師に最期を任せたい」
という方も多いのではないでしょうか?












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