チャイコフスキー庵 Tchaikovskian

有性生殖生物の定めなる必要死、高知能生物たるヒトのパッション(音楽・お修辞・エンタメ・苦楽・群・遺伝子)。

「白鳥の湖#29終曲情景(4の4)」

2007年11月11日 00時39分02秒 | 瓢湖不充分白鳥の湖舞イアーリンク泡沫事件
4)[モデラート]は#29の結部にあたる。が、
チャイコフスキーは、当初、
この部分は想定してなかったふしがある。というのは、
カルマスのスコア(全集版の廉価版)の註釈によれば、
 3)の部分の終いの自筆総譜の一葉において、
 184小節め以降には音符はなく、
 小節の区切りを示す罫線が引かれてるだけであり、
 「白鳥の湖。4幕。チャイコフスキー作曲」
 と書かれてる。が、さらにそれは線引き削除され、その下に、
 「次の一葉を見よ」書かれてる、
ということだからである。そして、また、
次のような註が附されてる。
(作曲者自身の註)
 「もし、舞台の大道具係に充分な時間がなければ、
  §から§§までの24小節を繰り返してもいい」
これは、白鳥の一群が湖面に現れるという「情景」用の
ハリボテ運搬装置のためのものである。

→4)[モデラート]
「湖面に白鳥の出現」
§当該小節を[モデラート]部の1小節めとおく。
fffの強奏が静まり、コントラバスを除く弦楽4部がpで
8分音符のロ長の和音を刻む中、ハープのみがffで
ロ長の和音を8分音符に分散して爪弾く。が、その分散方式は、
7小節めからその分散が5連/2分音符に、
9小節めからその分散が6連/2分音符に、
11小節はまた4連/2分音符に、
12小節はまた5連/2分音符に、
13小節からまた6連/2分音符に、
15小節からは3連・4連/2分音符に、
17小節以降は4連・4連/2分音符に、
という具合に変化させてるのである。いっぽう、
15小節めに1番および2番ホルンがユニゾンで
ロ音の全音符をfで吹く(次小節の同音全音符にタイ)。
それに伴い、それまでpからクレッシェンドされつづけてきた弦群も
ここでfに達してる、という手筈になってるのである。
17小節ではこの2管のホルンがffでロ音の全音符を吹き、
18小節でやはりffのロ長主和音が全奏される。
19小節乃至20小節および21小節乃至22小節で
このコンビネイションがもう2度繰り返される。なお、
全音符全奏の際には、シンバルと大太鼓が全音符打し、
小太鼓がトレモロで「クレッシェンド&ディミヌエンド奏」し、
ティンパニがロ音を8分音符で8打する。そして、あらためて、
23小節、24小節でロ長主和音の全音符全奏が2度行なわれ、
§§を越した25小節乃至26小節では
ロ音のみのユニゾンの全音符全奏がタイでつながれる。
27小節、28小節はロ音ユニゾンの全音符全奏がなされ、
最後の29小節はやはりロ音ユニゾンの全音符全奏ながら、
1番トランペットおよび両翼vnはオクターヴ下のロ音を取り、
フェルマータが附されて全曲を終える。
全幕の終曲である第「29」曲の終いの部分が
「29」小節から成ってることは偶然ではないと思われる。

「白鳥の湖」の舞台は2幕で「月明かり」に照らされる。
「29」は月の朔望に頼る暦で重要な数である。月齢、つまり、
月の満ち欠けはは30日を超えない。よって、
整数部の最大は「29」なのである。いっぽう、
 29<月齢<30
であるから、
 365/29=12.586→13箇月
 365/30=12.167→12箇月
としたのが「陰暦」であり、閏月がときどき入るのである。
それはともかく、
「12」と「13」の最小公倍数を掛け合わせてみると、
 12*13=156
である。この156はまた、
 156=1*(5^3)+1*(5^2)+1*(5^1)+1*(5^0)
つまり、5進法の「1111」である。明日は「11」月「11」日。
「真矢」の暦が現在のメキシコのどこらへんのものかは知らないが、
「月明かり」に照らされる「白鳥の湖」の舞台は、
月日は百代の過客にしてツヴィカウ年もまた旅人なり、だから
「ドイツ」である。ルーターの宗教改革によって
新教が多数だったドイツでは、グレゴリウス「13」世が採用した
「カトリックの暦」に倣うのはかなり遅く、全州が完全に移行したのは、
チャイコフスキーがバレエ「白鳥の湖」を完成させた
1876年のちょうど100年前、ジョン・判子ックが
「独立宣言書」に捺印でなく署名した1776年のことである。また、
ヘンリー8世が離婚したくてカトリックから離反した英国……
現在の統治者は「エリザベス2世」……でも、新暦を採用したのは、
「ドイツ」のハノーファー育ちで、アトランタが州都のジョージアの
州名の由来となったジョージ2世の治世だった1752年のことである。

ところで、このバレエ「白鳥の湖」の最後の曲#29の終いの調
ロ長は、「ローメオとジュリエッタ」「マンフレッド交響曲」
「悲愴交響楽主章」などの終いにチャイコフスキーが採った調である。
この世では成就しない恋や達成できない幸福を、
実際には存在しない「あの世」という仮想世界で実現する、
という淡い希望をたくしたのがこの調なのである。ロ長(h dur)は、
「この世」でどんなに不幸だったとしても、「あの世」ならそれ以上に
悪化(acca)することはない、とでも「イータ」いのであろう。

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