[Pas de caractere (a) Chaperon Rouge et le Loup(シャプロン・ルジュ・エ・ル・ルー)]
セグウェイ社を昨年末に買収した英国の富豪が、セグウェイを操縦中に
川に転落して死んだそうである。日本では、
その構造上いわゆるブレーキを取り付けれないので
道交法の要件を満たさず、公道を走行できない。
縫い針の道も留め針の道も、公道ならばダメである。
その歯止めは大正解だった。
チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」の第26曲は、第24曲と同じく、
「パ・ドゥ・カラクテル」と題されてる。
"Pas de caractere(パ・ドゥ・カラクテル)"は、
「童話の登場人物の踊り」である。
第26曲は、
a)Chaperon Rouge et le Loup
(シャプロン・ルジュ・エ・ル・ルー=赤ずきんと狼)
b)Cendrillon et le Prince Fortune
(サンドリヨン・エ・ル・プロンス・フォルテュネ=シンデレラとフォルテュネ王子)
の二つから成ってる。そのa)。
"Chaperon Rouge et le Loup"
[Allegro moderato(アッレーグロ・モデラート=速すぎも遅すぎもしないアレグロ)、
2/4拍子、2♭(ト短調)]
第24曲の"Pas de caractere(パ・ドゥ・カラクテル)"と同じく、
「ト短調」である。このト短調という調性は、
このバレエの最後の最後に繰り出される
"Vive, Henri quatre(ヴィヴ、アンリ・カトル=万歳、アンリ4世)"
が打ち鳴らされる調である。そして、
あまり話題にされないが、じつはこのバレエ「眠れる森の美女」において、
チャイコフスキーが意味深く配置した調なのである。
森田稔大先生の著書「永遠の『白鳥の湖』」(新書館刊)で
ジョン・ローランド・ワイリーの分析が述べられてるとおり、
(プロローグの)導入曲において採られた「カラボスの動機」の
[ホ短調→変ホ短調→ト短調]
という進行、あるいは、それをもとに私が別解釈をした、
ベートーヴェンの弦楽四重奏第16番終楽章の
"Muss es sein?"……"Es muss sein!"
なのである。
ともあれ、
バレエ「眠れる森の美女」においては、
「ト短調」は以下のように鏤められてる。
・(プロローグ)「導入曲」
・(プロローグ)第3曲「パ・ドゥ・スィス」2)courante, fleur de farine
(クラント、フルル・ドゥ・ファリーヌ=流麗な、上質の小麦粉)
***♪ラ>♯ソ<ラ・>♯ソ>Nソ<♯ソ♪
・(第1幕)#6「ヴァルス」中間部終い
**♪ド│<レ>ド、>シ│>ラ<シ、<ド│<レ>ド、>シ│<ミッ<ファッ♪
そして、平行調の変ロ長調の属7を引き出し、
「怒りの日」の動機から作られたワルツの主題が再現されるのである。
**♪ドーー│>シーー│<ドー>ラ│<シ(<ド>ラ│<シー<レ│<ミー>♯ド)
・(第1幕)#8「パ・ダクスィヨン(c)オーロラのヴァリアスィヨン」オケによる前奏
***♪ラー、<シ│ー、<ドー、│<♯ド、<レ、<♯レ│<ミ♪
・(第2幕)#15「パ・ダクスィヨン(c)コーダ」
***♪ファ│>ミ●・●>レ│>ド♪
・(第3幕)#24「パ・ドゥ・カラクテル(乗馬ブーツを履いた雄猫と白い雌猫)」
・(第3幕)#26「パ・ドゥ・カラクテル(a)赤ずきんと狼」
・(第3幕)#30「フィナル(アポテオズ)」
このうちの、(プロローグ)「導入曲」と(第1幕)の二つは、
部分的にト短調になるもののうち、
重要なものを載せただけである。つまり、
ト短調は第3幕においてその威力を発揮するのである。
[Allegro moderato、2/4拍子、2♭(ト短調)]
横笛以外の木管群が主要主題をmpで吹く。節を吹くのはクラリネットである。
****♪ラーラー・>ミーミー│
<ラーラー・>ミーミー│
>レッ<ミッ>レッ<ミッ・>ドッ<レッ>ドッ<レッ│
>シッ<ドッ>シッ<ドッ・>ラッ<シッ<ドッ<ミッ♪
副次主題はト長調に転じてオクラーヴ・ユニゾンの両翼vnがmfで奏する。
****♪レーッレッレッ・レ>ド>シッ>ラッ│
>ソッ<ミッ>レッ<ミッ・>ドー<ソー♪
主要主題がmfで再現されるときには、
ホルン2管と弦楽合奏が抉りあげるような狼の咆哮をffで加える。そして、
ト短調→変ロ短調→嬰ハ短調
と減7上に転調を重ねてホ短調。
→[stringendo]
と急き込みながら、
[e-g-h]→[e-g-b]→[es-g-b]
と進み、
→[Piu mosso]
テンポを速め、主題が
****♪ラーラー・>♯レー♯レ│
<ラーラー・>♯レー♯レ│
>(N)レ<ミ>レ<ミ・>ド<レ>ド<レ│
>シ<ド>シ<ド・>ラ<シ>ラ<ド♪
と微変更されて危機感を煽る。その間、
ヴィオーラとチェロがクロマティックに抉りあげる狼の声を弾く。
さて、
フランスの伝承小咄の「おばあちゃんの話」では、
狼はおばあちゃんの家まで行く道を女の子に問うのである。
「縫い針の道」と「留め針の道」
である。女の子は「縫い針の道」を行くと言う。狼は、
ならば私は留め針の道にすると言う。
手で縫えば時間がかかるが、留め針なら手間はかからない。
果たせるかな、狼はおばあちゃんの家へずっと先に着く。
ところが、これには説得力がない。
なぜ女の子が「縫い針の道」かという理由が描かれてない。だから、
ペローは狼が「決めつけた」ことにするのである。
「私はこっちの道(留め針の道)を行くから、
お嬢ちゃんはそっちの道(縫い針の道)を行くがいい。
どっちが先に着くか競走だよ」
と。ここで、この咄の登場人物が
バレエ「眠れる森の美女」に採られた理由が見えてくる。が、
ピンとこない御仁に説明しよう。
留め針とは現在の「安全ピン」のようなものである。
「刺す」危険は少ない。が、縫い針は指に容易に刺さってしまう。
赤ずきん(少女に被せたのはペローだという)の「愚かな選択」は、
ペローによって「狼に図られた無知」に変ぜられた。
「オロル姫がスピンドルに指を刺してしまう不注意」
への警告、あるいは教訓なのである。ちなみに、
女の子が病気で寝込んでるおばあちゃんの家にお使いにいったのは、
おかあさんが焼いたガレットを持ってくことだった。
ガレットも粉を挽いたものをこねて焼く。ここで、
ト短調がfleur de farine(上質の小麦粉)との
「つなぎ」になるのである。
セグウェイ社を昨年末に買収した英国の富豪が、セグウェイを操縦中に
川に転落して死んだそうである。日本では、
その構造上いわゆるブレーキを取り付けれないので
道交法の要件を満たさず、公道を走行できない。
縫い針の道も留め針の道も、公道ならばダメである。
その歯止めは大正解だった。
チャイコフスキーのバレエ「眠れる森の美女」の第26曲は、第24曲と同じく、
「パ・ドゥ・カラクテル」と題されてる。
"Pas de caractere(パ・ドゥ・カラクテル)"は、
「童話の登場人物の踊り」である。
第26曲は、
a)Chaperon Rouge et le Loup
(シャプロン・ルジュ・エ・ル・ルー=赤ずきんと狼)
b)Cendrillon et le Prince Fortune
(サンドリヨン・エ・ル・プロンス・フォルテュネ=シンデレラとフォルテュネ王子)
の二つから成ってる。そのa)。
"Chaperon Rouge et le Loup"
[Allegro moderato(アッレーグロ・モデラート=速すぎも遅すぎもしないアレグロ)、
2/4拍子、2♭(ト短調)]
第24曲の"Pas de caractere(パ・ドゥ・カラクテル)"と同じく、
「ト短調」である。このト短調という調性は、
このバレエの最後の最後に繰り出される
"Vive, Henri quatre(ヴィヴ、アンリ・カトル=万歳、アンリ4世)"
が打ち鳴らされる調である。そして、
あまり話題にされないが、じつはこのバレエ「眠れる森の美女」において、
チャイコフスキーが意味深く配置した調なのである。
森田稔大先生の著書「永遠の『白鳥の湖』」(新書館刊)で
ジョン・ローランド・ワイリーの分析が述べられてるとおり、
(プロローグの)導入曲において採られた「カラボスの動機」の
[ホ短調→変ホ短調→ト短調]
という進行、あるいは、それをもとに私が別解釈をした、
ベートーヴェンの弦楽四重奏第16番終楽章の
"Muss es sein?"……"Es muss sein!"
なのである。
ともあれ、
バレエ「眠れる森の美女」においては、
「ト短調」は以下のように鏤められてる。
・(プロローグ)「導入曲」
・(プロローグ)第3曲「パ・ドゥ・スィス」2)courante, fleur de farine
(クラント、フルル・ドゥ・ファリーヌ=流麗な、上質の小麦粉)
***♪ラ>♯ソ<ラ・>♯ソ>Nソ<♯ソ♪
・(第1幕)#6「ヴァルス」中間部終い
**♪ド│<レ>ド、>シ│>ラ<シ、<ド│<レ>ド、>シ│<ミッ<ファッ♪
そして、平行調の変ロ長調の属7を引き出し、
「怒りの日」の動機から作られたワルツの主題が再現されるのである。
**♪ドーー│>シーー│<ドー>ラ│<シ(<ド>ラ│<シー<レ│<ミー>♯ド)
・(第1幕)#8「パ・ダクスィヨン(c)オーロラのヴァリアスィヨン」オケによる前奏
***♪ラー、<シ│ー、<ドー、│<♯ド、<レ、<♯レ│<ミ♪
・(第2幕)#15「パ・ダクスィヨン(c)コーダ」
***♪ファ│>ミ●・●>レ│>ド♪
・(第3幕)#24「パ・ドゥ・カラクテル(乗馬ブーツを履いた雄猫と白い雌猫)」
・(第3幕)#26「パ・ドゥ・カラクテル(a)赤ずきんと狼」
・(第3幕)#30「フィナル(アポテオズ)」
このうちの、(プロローグ)「導入曲」と(第1幕)の二つは、
部分的にト短調になるもののうち、
重要なものを載せただけである。つまり、
ト短調は第3幕においてその威力を発揮するのである。
[Allegro moderato、2/4拍子、2♭(ト短調)]
横笛以外の木管群が主要主題をmpで吹く。節を吹くのはクラリネットである。
****♪ラーラー・>ミーミー│
<ラーラー・>ミーミー│
>レッ<ミッ>レッ<ミッ・>ドッ<レッ>ドッ<レッ│
>シッ<ドッ>シッ<ドッ・>ラッ<シッ<ドッ<ミッ♪
副次主題はト長調に転じてオクラーヴ・ユニゾンの両翼vnがmfで奏する。
****♪レーッレッレッ・レ>ド>シッ>ラッ│
>ソッ<ミッ>レッ<ミッ・>ドー<ソー♪
主要主題がmfで再現されるときには、
ホルン2管と弦楽合奏が抉りあげるような狼の咆哮をffで加える。そして、
ト短調→変ロ短調→嬰ハ短調
と減7上に転調を重ねてホ短調。
→[stringendo]
と急き込みながら、
[e-g-h]→[e-g-b]→[es-g-b]
と進み、
→[Piu mosso]
テンポを速め、主題が
****♪ラーラー・>♯レー♯レ│
<ラーラー・>♯レー♯レ│
>(N)レ<ミ>レ<ミ・>ド<レ>ド<レ│
>シ<ド>シ<ド・>ラ<シ>ラ<ド♪
と微変更されて危機感を煽る。その間、
ヴィオーラとチェロがクロマティックに抉りあげる狼の声を弾く。
さて、
フランスの伝承小咄の「おばあちゃんの話」では、
狼はおばあちゃんの家まで行く道を女の子に問うのである。
「縫い針の道」と「留め針の道」
である。女の子は「縫い針の道」を行くと言う。狼は、
ならば私は留め針の道にすると言う。
手で縫えば時間がかかるが、留め針なら手間はかからない。
果たせるかな、狼はおばあちゃんの家へずっと先に着く。
ところが、これには説得力がない。
なぜ女の子が「縫い針の道」かという理由が描かれてない。だから、
ペローは狼が「決めつけた」ことにするのである。
「私はこっちの道(留め針の道)を行くから、
お嬢ちゃんはそっちの道(縫い針の道)を行くがいい。
どっちが先に着くか競走だよ」
と。ここで、この咄の登場人物が
バレエ「眠れる森の美女」に採られた理由が見えてくる。が、
ピンとこない御仁に説明しよう。
留め針とは現在の「安全ピン」のようなものである。
「刺す」危険は少ない。が、縫い針は指に容易に刺さってしまう。
赤ずきん(少女に被せたのはペローだという)の「愚かな選択」は、
ペローによって「狼に図られた無知」に変ぜられた。
「オロル姫がスピンドルに指を刺してしまう不注意」
への警告、あるいは教訓なのである。ちなみに、
女の子が病気で寝込んでるおばあちゃんの家にお使いにいったのは、
おかあさんが焼いたガレットを持ってくことだった。
ガレットも粉を挽いたものをこねて焼く。ここで、
ト短調がfleur de farine(上質の小麦粉)との
「つなぎ」になるのである。
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