チャイコフスキー 騒がしい舞踏会の中で
最近では、TBSが深夜にやってる「ビジネス・クリック」が
ミーハーオヤジな私の注目度大なTV番組である。といっても、
クリック・ガールのうち、私が好きなのはオスカーの
橋本愛実女史だけであるが。声が愛らしく、
スタイルは申し分ない。そして、なにより、
顔、その大きいけれど
度がすぎない程度の大きさの瞳が魅惑的である。
Алексей Константинович Толстой
(アリクスィェーィ・カンスタンチーナヴィチ・タルストーィ)という伯爵詩人の
無題の詩にチャイコフスキーが曲をつけたのが、
作品38の「6つのラマーンス」の第3曲である。
いくつかの媒体でこの詩が「訳されてる」のを
見ることができるが、その訳詞家が
ロシア語専門家であるなしにかかわらず、
とんでもない意訳・異訳がけっこう見受けられる。
「舞踏会のざわめきの中で」
なんていうタイトル訳もそのひとつである。そこで、
以下に私の逐語大意を記しておく。が、ときどき、
マイケル・ジャクスンとさかなクンの顔を区別できないときがある
拙脳な私が解するものなので、あらかじめ、
かなりの誤大意があるのは、いたしかたないことと、
悪しからず了承いただく。
"Средь шумного бала(騒がしい舞踏会の中で)"
(括弧内:拙カタカナ発音・拙逐語訳)
Средь шумного бала, случайно,
(スリェーチの中で・シュームナヴァ騒がしい・バーラ舞踏会、スルチャーィナ偶然、)
В тревоге мирской суеты,
(フの中で・トリェヴォーギェ雑踏・ミルスコーィ世間の・スイェティーせわしなさ)
Тебя я увидел, но тайна
(チビャー君を・ヤー私は・ウヴィヂェール見かけた、ノがしかし・ターィナ謎めいたものが)
Твои покрывала черты.
(トヴォイー君の・パクルィヴァーラ見えなくしてた・チェルティー顔を)
Лишь очи печально глядели,
(リーシのだが・オーチ瞳は・ペチャーリナ悲しげに・グリャヂェーリ見つめていた)
А голос так дивно звучал,
(アしかし・ゴーラス声は・ターク強調の副詞・ヂーヴナ美しく・ズヴチャール聞こえた)
Как звон отдаленной свирели,
(カークのように・ズヴォーヌ音・アトダリョーンナィ遠くから聞こえる・ズヴィリェーリ葦笛の)
Как моря играющий вал.
(カークのように・マリャー海・イグラーユシシィ踊ってる・ヴァール高波が)
Мне стан твой понравился тонкий
(ムニェ私には・スターヌ体が・トヴォーィ君の・パヌラーヴィルシャ気に入った・トーヌキィすらっとした)
И весь твой задумчивый вид,
(イそして・ヴィェーシ何よりも・トヴォーィ君の・ザドゥームチヴィィ物悲しげな・ヴィート顔つきが)
А смех твой, и грустный и звонкий,
(アだがしかし・スミェーフ笑い声が・トヴォーィ君の、イそして・グルースヌィ寂しげな・イかつ・ズボーンキィよく通る)
С тех пор в моем сердце звучит.
(スから・チェーフその・ポール時・ヴに・マイェーム私の・スィェールウツェ心・ズヴーチト響いてる)
В часы одинокие ночи
(フに・チャスイー時・アヂノーキエひとりぼちの・ノーチ夜)
Люблю я, усталый, прилечь
(リュブリュー好む・ヤー私は、ウスタールィィ疲れた、プリリェーチ・身を横たえる)
Я вижу печальные очи
(ヤー私は・ヴィージュ見える・ペチャーリヌィィ悲しげな・オーチ瞳を、)
Я слышу веселую речь
(ヤー私は・スルィーシュ聞こえる・ヴィショールユ明るい・リェーチ話し声を)
И грустно я так засыпаю,
(イそうして・グルーストナ悲しく・ヤー私は・タークこうして・ザスィーパユ砂を撒く(★))
И в грезах неведомых сплю
(イそうして・ヴの中で・グリョーザフ夢想・ニヴィェーダムィフ神秘的な・スプリュー眠る)
Люблю ли тебя, я не знаю,
(リュブリュー好きだと思ってる・リかどうか・チビャー君を、ヤー私は・ニない・ズナーユ解る)
Но кажется мне, что люблю!
(ノがやはり・カージェツァ思える・ムニェ私には、シトー~であると・リュブリュー好きだと思ってる)
(★)目に(エメラルドの)粉末を撒く→砂男/眠りの精→寝つく
[モデラート、3/8拍子、2♯(ロ短調)]
***♪ラー・ーー・>ラー│<シー・ーー・>シー│
<<ミー・ーー・>ミー│<ラー・ーー・>ラー│
<<ドー・ーー・>ドー│<♯ソー・ーー・>♯ソー│
<ラー・ーー・●●│●●・●●♪
というpfの前奏に導かれる。このとき、pfのバスは、
***♪ラー・ーー・ーー│>♯ソー・ーー・ーー│>(N)ソー・ーー・ーー│
>♯ファー・ーー・ーー│>(N)ファー・ーー・ーー│>ミー・ーー・ーー♪
というクロマティカルな下降で支える。
[con tristezza(コン・トリステッツァ=悲しみをたたえて)]
***♪【ミー│<ファー・<ソー・<ラー】│<シー・ーー・>ミー│
●●・●●・<ドー│>シー・ーー・>ミー│
●●・●●・ミー│<ラー・<シー・<ドー│
<レー・>シー・>ラー│>ソー・ーー、ソー│
>ファー・>ミー・>レー│<ラー・ーー・>ドー│
●●・●●・ドー│<ラー・ーー・>シー│
●●・●●・シー│<ミー・ミー・ミー│
>レー・>シー・<ミー│>ラー・ーー・ーー│●●・●●♪
最後のパラグラフで、
[poco meno mosso(ポーコ・メーノ・モッソ=速くの度合いををやや少なく=やや減速して)]
となり、歌が終わるとまた、pfの後奏が、
[Tempo primo(テンポ・プリーモ=初めのテンポで)]
前奏とほぼ同じフレイズを弾いて曲を閉じる。
そういえば、バレエ「白鳥の湖」(第3幕)第19曲
「パ・ドゥ・スィス」のヴァリアスィョン中、
[Andante con moto(アンダーンテ・コン・モート)、2/4、2♭(ト短調)]
の後半、2管のオーボエのユニゾンが、
[con anima(コン・アーニマ=魂をこめて)]という指示で、
***♪【ミーーー・ーーーー│ーーーー・<ファーー<ソ│
<ラーーー】・>レーーー│●●●●・<ラーーー│
<シーーー・>ファーーー│●●●●・<シーーー│
<♯ドーーー・>ラーーー│●●●●・●●●●♪
と吹き始める。この、
王妃が座し、廷臣・女官らが控え、
各国からの招待客らが参堂し、
貴族の娘らが王妃の座をかけて集い踊る、
騒がしい舞踏会の中で、
ズィークフリート王子は、
スルチャーィナ(偶然)、誰を見つけた、のだろう。この
ヴァリアスィョンの次のヴァリアスィョン、
[Moderaro(モデラート)、6/8、3♭(変ホ長調)]で、
[con grazia(コン・グラッツィア=上品さをたたえて)]
という指示のもと、vnプリーモが弾く
**♪『ソ・<ミ>レ>ド│>シー、シ・<レ>ド>シ│>ラー』、
ラ・<ド>シ>ラ│>ソーー・ーーー│ーー♪
という節は、「オネーギン」2幕において、
決闘で友人を殺し、外国でおとぼりをさまして
数年後に舞い戻ってきたオネーギンが、3幕で
グレーミン公爵が主催する「騒がしい舞踏会の中で」、
「あのタチヤーナの姿を見いだした」場面で、
クラリネットによって、万感胸に迫る思いで吹かれる節、
**♪『ソ<ミ・>レー・ー>ド|>シ<レ・>ドー・ー>シ|
>ラ』>ソ・<ドー・ー>シ|>ラ>ミ・<ラー・ー>ソ♪
なのである。ズィークフリート王子は、
同一曲で囲い込みされた2幕という
夢の中で出会った「オデット」の、
生身の姿を見いだした、のである。
チャイコフスキーの音楽は、じつに怖い。
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