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映画レビュー キュア

2022-07-22 11:30:00 | 映画レビュー
#CURE #黒沢清 公開日: 1997年12月27日 

× × ばつ バツ 罰 跋 魃 X x エックス ←たくさん出てくるコワいもの・・・

人様にオススメしてぜひ、見てほしいって映画もあれば 逆に絶対にオススメできない
映画ってのもある。
ましてや、カップルで映画館デートとか、親子で動画配信鑑賞なんてしたら、親密な関係が
一気に決壊して「なんで、こんな映画見せるのよッ!」(怒)と激怒されること必須の映画が
この作品「CURE」だ。

監督は黒澤清、俳優仲間とか監督同士の中で特に評価が高く、「黒澤さんの映画なら
大変だけど何はさておきオファー受けなさい」って言われて出演しちゃう前田敦子さんみたいな、
ミュージシャンズ・オブ・ミュージシャン的な評価の監督さんである。

本作はその中でも彼の評価を固めて、和製セブン、とかセブン超え、とか賛されたサスペンス、
ホラー犯罪映画。もちろん血まみれの惨殺死体とか、そういうグロいものも沢山出てくるが、
それだけじゃなくて、人や自分の心の中の澱んでいる暗闇や泥濘の源泉みたいなもの(フクシマ
原発の中の放射能デブリみたいな感じ)をサルベージして晒しだされるような気持ちの悪さを
感じさせる類の映画なのです。










プロットはある記憶喪失の男:萩原聖人が何故か修得していた催眠暗示の能力を悪用し、奴に
関わる人間達の精神・負の欲求を操り、その近しい者を殺させ、喉をX字に切り裂かせる。
最初は加害者被害者に何の関連性も無いのに異様に手口が極似しているこの連続殺人事件に
ある共通の男が接していることに辿り着いた刑事:役所広司が犯人を追う、というもの。

極めて計算されてあちこちに散りばめられた意味深なカット。
平常な場面で何時も通りの言動をしている人物:隣人がいきなり拳銃の引き金を引き
ナイフを躊躇なく身体に差し入れてくる怖さ。殺人がホラーの異空間の中ではなくて
日常の隣側、背中越しに続いていることがわかってぞっとする。
現在進行形の京都の放火事件もきっとこのような禍々しさと同じ構造にきっとあるのだろうと
不謹慎にも納得してしまった。
そう、現実が虚構も時間も乗り越えて、この映画の毒に侵食されているようなキモチ悪さだ。

繰り返すが、決して本当にオススメしない映画だ。ただし、今自分が居るこの平和な日常に
違和感を持ちながら、そのからくりを見出してみたいと思っている奇特な僕のような御仁にだけ
ピンポイントで適合する映画だとお伝えしておく。




1997年日本インターネット映画大賞日本映画作品賞受賞作
監督: 黒沢 清 原作者: 黒沢 清 音楽: ゲイリー芦屋 映画脚本: 黒沢 清 
キャスト/高部賢一:役所広司/間宮邦彦:萩原聖人/佐久間真:うじきつよし/高部文江:中川安奈
/宮島明子:洞口依子/花岡徹:戸田昌宏/花岡とも子:春木みさよ/大井田巡査:でんでん
/桑野一郎:螢雪次朗/安川刑事:大鷹明良/藤原本部長:大杉漣/精神科医:河東燈士


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