植物のふしぎ

植物をはじめ、生物のふしぎな生態をレポートします。
🌷ガーデニング・家庭菜園・草花と自然🌷

エンサイの水挿し(節と発根の関係)

2024年10月17日 | 植物の生態

9月26日にエンサイの水挿しを開始して発根を観察して来ました。

この写真は開始から16日後である10月12日の様子です。上の写真に写っている4本の試料を順に説明しますね。

  1. 一番左:茎を節の上下で切ったもの
  2. 左から2番目:節の上下で切り、さらに脇芽を深く欠いたもの
  3. 左から3番目:脇芽が入らないように節の位置で切り取ったもの(節の一部を含む)
  4. 一番右:節に近い葉柄で切ったもの

結果は・・・

3番が翌日9月27日に発根、節全体を含む1番と2番は28日に発根を確認しました。節全体でなくとも発根することがわかりました。

一方、節を含まない葉柄で切断したものは発根しませんでした。そして1番では3番に比べて根の量が少ないのにも関わらず脇芽がすくすく成長していきました。

次に2番を拡大して撮ったのが・・

節より上部が枯れた以外は無事。これは脇芽を深く欠いた試料ですが開始から5日後の10月1日には節と葉柄が接続するあたりに小さな突起が現れ成長点(芽)の兆しが現れ、10月7日には はっきり芽とわかる状態になりました。その後、通常の脇芽よりはだいぶ成長が遅いものの、12日には小さな葉が観察できるほどになりました。

次に3番の試料を拡大した写真が・・

 

10月8日には突起が現れ成長点の兆しと判断しました。中央の突起部分をさらに拡大したのが右の写真です。カルス状のようであり はっきり脇芽とは言えないものでした。その成長は極めて遅く、本日17日に観察してもこの写真とあまり大差ないように感じました。この後どうなるのでしょう、芽として成長できるのかどうか。試料の中で一番発根量が多いのですがね。成長点が作れないとこのまま枯れちゃうんでしょうね。・・・養分足りないのかな?どうなるか知るために土に植えてみることにします。・・と思ったのですが土に植えると微細な変化も見られなくなるのでしばらくこのまま続けて観察していたところ・・変化があったので10月29日に続報「ビオラの水挿し エンサイの続報」を書きました。

1番と2番と4番は行末がはっきりしたのでここで観察中止です。

さらに・・葉柄からは発根しなかったので、切断面が中空になっているのが良く無いのかも・・・ということで葉の付け根(中空でない)で切って水に浸けておいたものも観察したところ・・

水挿し13日後の写真です。葉柄の切断面がカルス状にはなりましたが発根はしませんでした。その後間もなく葉は黄色くなり力尽きました。カルス状になったから もうちょっと条件良ければひょっとすると葉から直に発根するのか!?。今年はこれから寒くなっていくのでどうやってもうまくいかないと思うので追加実験はしませんけれども。


以上、まとめると、

  • 成長点の有無に関わらず発根には節が含まれることが重要とわかりました。
  • 脇芽(成長点)が欠けていた場合でも一つの節全体が含まれていれば新たに成長点が作られました。
  • 節組織の一部が含まれていた場合、発根はします。しかし新たな成長点ができるかは微妙なところ。この後、もう少しだけ継続して観察したいと思います。
  • 葉から直接根が出るという可能性?。何の役にも立たないゲテモノ見たさ。

今回の実験、家庭菜園に役立つ情報はというと・・一株入手できれば、脇芽を傷つけないように節の上下で切って挿し芽、あるいは水挿しでたくさん増やせます。まぁ、そうするまでもなく数株分の種まきすればいいことだし、成長がものすごく速いので少数でも食べきれないくらい採れますよ。

実験とは別の情報・・エンサイはヒルガオ科であり茎の先端が細くつる状になることがあります。その場合アサガオと同じく右巻きに巻きついていきます。アサガオのような白っぽい花が咲きます。害虫は少ないですが、現在、葉っぱに穴が。。何かに食べられています。芋虫とか見つからないのでバッタかな?

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セイタカアワダチソウ・盛者必衰の理

2024年10月15日 | 植物の生態

10月の連休は全国的に天気が良かったですね。私は長野県小布施町に行ってきました。小布施は観光客で大混雑でした。町の中心部も人がたくさんだったしハイウエイオアシスの駐車場にも満車で入れませんでした。

実はハイウエイオアシスの近くにあったセイタカアワダチソウの群落がどうなったか見たかったのですよ。2007年に訪れた時は大豊橋(たいほうはし)から松川の河川敷にあったセイタカアワダチソウの大群落を見ました。その時の写真が・・

2007年10月13日午後3時半頃の写真です。河川敷だから当然植物の手入れは誰もしてないのですが、群落を作って一斉に咲いている様子は実に綺麗でした。

そして17年後の今年、10月14日午後1時頃はどうなっていたかというと・・

が〜ん。セイタカアワダチソウの群落は消滅していました。全滅したわけではなくて所々にチラチラ生えてはいましたけれど・・。「セイタカアワダチソウの花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる草も久からず・・」ですね。なぜこうなるかは有名な話です、以下に簡単にまとめておきます。


セイタカアワダチソウは根や地下茎からcis-デヒドロマトリカリアエステル(cis-DME)という化学物質を作って土壌中に放出しており、これにより他の植物は発芽や成長ができなくなるという現象が起きます。植物が特殊な化学物質を作って他の植物をコントロールする作用をアレロパシー(他感作用)といい、松川河川敷のセイタカアワダチソウもまさにアレロパシーで他の植物が成長できない間に土地を独占してしまったのでしょう、それが2007年。こんな化学兵器使われたら他の植物は全然太刀打ちできないのではないかとも思えます。なのに現在は群落消失している・・自然はそんなに甘くはなかった、盛者必衰なのでした。まず、群落作ると害虫や病原菌が集まってしまいます。それらに抵抗できる形質を持った新たな遺伝グループが代替わりできれば良いのですが、セイタカアワダチソウって自分が出したcis-DMEによって発芽できなくなるんですって。だから徐々に衰退していくしかないのですよ。

それからつる植物であるクズがセイタカアワダチソウの毒攻撃に対抗できると考えられます。2024年の写真の中ほど右から濃い緑色の植物が覆って来ていますが、それがクズです。クズはつるを伸ばして遠征してくるので土壌中のアレロパシー物質は物ともせず他の植物に覆い被さって地上を制覇してしまいます。この攻撃にはセイタカアワダチソウも勝つことはできないでしょうね。とはいっても全面クズに占領されるわけでもなく・・クズはクズなりのウィークポイントがあるのでしょう、バランスをとって他の植物と共存しているのですね。人間の社会でも永遠にオールマイティが存在しないように植物の世界でも皆が折り合いをつけて共存していっているのが面白いです。


追加情報

Googleマップのストリートビューって過去の年代のも見られるのご存知ですか?それでこの地点の過去の状況を調べたのですよ。そうしたら、河川敷に対して色々と人の手が加えられていたことが分かりました。まず、2014年7月〜2017年7月の間のどこかで車止めが設置されていました。これにより自動車が河川敷に降りられなくなり雑草の勢いが強まったと推測できます。2019年6月〜2021年7月の間では河川敷に生えていた樹木や雑草が刈り払われました。それから2023年12月までの間でも新たに除草整地されていたことが分かりました。知らない間にかなり人の手で撹乱されていたのですね。それに河川敷だから当然大水の時には植物が流されてしまったこともあったでしょう。この地に関してはセイタカアワダチソウの群落消失は、害虫や病気だけでなく、人為的あるいは自然災害的な事象も関係していたのかもしれません。

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キキョウの蜜はどこにある?

2024年10月11日 | 植物の生態

キキョウの中心部の構造がぱっと見でよく分からないし蜜はどこにあるのかと思って拡大してじっくり見てみました。

すると・・

各雄しべの根元が三角形に広がって雌しべを囲んでドーム状になっていました。蜜はこの中にたっぷり入っており、ポリネーターは各雄しべ間にできたスリットに口を差し込んで蜜を吸うことになります。写真で分かるようにスリット部分に毛が生えていました。解剖して調べたところドームの内側の見えない所でも同様に毛が生えていました。キキョウは花が横向きに咲くのでこの毛が蜜がこぼれ出ることと雨の侵入を防いでいると考えられます。さらにこの構造はポリネーターが蜜を吸うのに少し手間取ることになります。それにより花の中心部分に提示された花粉と柱頭に近づけさせる役割もあるように感じました。植物は必要とあらばちょうど良い場所にある器官の形を変えて流用させているのですね。植物の柔軟性に感心しました。

 

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ツユクサ・なぜ雄しべの形が3種類もあるの?

2024年10月10日 | 植物の生態

今回はツユクサの話題。ツユクサは大変身近な草花なので見過ごしがちですが、詳細に観察すると美しく興味深い構造をしています。庭の片隅に生えていたツユクサは以前道ばたで見たものより花が小型で若干様子も違っていました。でも今回はこれで観察することにします。

写真の番号順に各部位の名称 

1:花弁(青色2枚)2:π字型雄しべ(3本) 3:人字型雄しべ(1本) 4:柱頭 5:花柱 6と7:O字型雄しべ(2本 6:葯 7:花糸) 8:花弁(白色1枚) 9:萼片(白色3枚)

少し様子が違う花もありました。それが・・

白矢印の先に雌しべが短くくるりんと巻いていました。巻かずに短い突起になることもあるようなのですが、これは雌しべの機能が失われた雄花なのだと思います。今回観察した区域ではおよそ4割が雄花でした。花序の中で雄花になりやすい花の位置があるようなので開花の進み具合でもその割合は変わるのでしょうね。


次に雄しべのタイプ(O 人 π)別に詳しく見ていきたいと思います。まずはO字型雄しべから・・

雄しべのうち花糸が一番長く雌しべと同じくらいの長さです。この雄しべが花粉を一番多く出しており、受粉の中心的役割を担っています。花粉は黄色で葯は地味な感じです。花糸は色素を持っておらず白です。

花粉を顕微鏡で見てみると・・

ゼリービーンズみたいな形です。ややべとつく性質のため花粉同士がくっついていました。花粉表面には細かな突起が覆っており写真ではざらついたようにも見えます。


次に人字型雄しべの観察・・

左の写真が花の前に面する側、それをひっくり返して花の後ろに面する側から撮ったのが右の写真です。この雄しべの花糸は薄紫に染まっており葯の黄色と補色の関係になっていました。また葯には赤紫色の模様もついておりO型雌しべより綺麗で存在感があります。

花粉は葯の淵の溝からでていました。花粉の大きさはO字型雄しべと同じでしたが色がオレンジがかっていました。


最後にπ字型雄しべです・・

最も特徴的な形をしておりそれも3本並んでいるので大変目立つ雄しべです。今回調べた葯には模様が無かったし花糸の色素も無いように見えました。個体差、あるいは地域差があるのかも。過去別の場所で撮った写真も載せておきますね。π字型葯に模様があることと花糸が濃い紫色をしているのがわかります。

次に花粉の所在ですが、「脇の下」!?のオレンジ色の部分から花粉が出そうな雰囲気があるのですが・・

O型、人型で見られるようなゼリービーンズが見当たりません。スライドグラスに押しつけて付着している粒子を出してみたところ・・

こんな感じ。なんとも・・形がいびつで雰囲気的に受精できそうにありません。


なぜツユクサは雄しべのタイプを3種類もつ必要があるのでしょうか。形が異なればそれぞれに役割があるはずです。

まず、π字型は青色の花弁の前で鮮やかな黄色のため非常に目立ちます。ポリネーター(訪花昆虫)へのアピールを専門に担当していると考えられます。

長い雄しべのO字型は花粉量が一番多く、顕微鏡で観察した限り健康的な花粉でした。なので受粉の中心的役割を担っていると考えられます。

では人字型はどんな役割があるのでしょうか。実はこの花は蜜を出していません。ポリネーターの中心は花粉をなめ取るハナアブです。人字型雄しべの花粉はその時のエサの役割があるのではないかと考えています。人字型花粉をなめている間に虫のお尻にO字型花粉を付着させるという具合です。それを考えるとO字型雄しべは地味であっても虫の体長に合った長さになっていることのようです。

まとめるとツユクサは、π字型雄しべの看板で虫を引き寄せ人字型雄しべで餌を与えている間にO字型雄しべの花粉をくっつけて運ばせるという戦略をとっている植物でした。


ツユクサは開花時、既に柱頭に自分の花粉をつけていることも多いのですが、花を閉じる時にも自家受粉をする工夫があります。インターバル撮影で動画を撮ってあるので近日報告しますね。

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西洋アサガオの青い花・閉じる前に赤くなる変化

2024年10月09日 | 植物の生態

10月に入ってからも庭のフェンスに絡みついた西洋アサガオはたくさんの花を咲かせています。

毎年こぼれタネで勝手に生えてくるアサガオなので品種は?園芸ノートを見返したら2016年にヘブンリーブルーの種を買って育て始めたとなっていました。でも普通よく見るヘブンリーブルーとはちょっと雰囲気が違いますよね。曜の色が濃くてやや赤紫が勝っています。タネの袋は捨ててしまったし最初の年からこんな花だったかは覚えていません。写真撮っておけばよかった。

この写真は10月1日 7時52分に撮影。朝の花は青色でした。それが花が萎む少し前になると花の色が変わってくるのですよ。

13時13分の写真が次です。

花が萎み始めています。光線の違いで撮影の色温度は異なるものの明らかに花の色が赤っぽくなっていました。

これはどういうことなのでしょうか。

花弁をちぎって観察してみると・・

左の瓶は花弁をちぎっただけのもので右の瓶は花弁をすりつぶしたものです。すりつぶして1分くらいで赤紫になり、花が萎む時と同じような色の変化をしました。

次に花弁の断面を顕微鏡で観察しました。

アサガオの花弁は非常に薄く弱々しいため切片が作りにくくて苦労しました。ややしっかりしている曜の付近からどうにか切片が作れました。写真の左側に見える白い塊は曜に走る条の部分です。

色素が貯められているのは表側(写真の上側)と裏側の表皮細胞でした。表側に比べて裏側の細胞は平らで非常に薄い層に見えます。

表側の表皮細胞を拡大してみると・・

このように表側の表皮細胞は鋭角円錐形をしています。色素が貯められているのはその一層であり、その下の組織には色素は観察されませんでした。

花弁裏側の表皮は非常に弱く、ピンセットで触れるくらいで簡単に剥がれます。次の顕微鏡写真は、そのようにして試料を調整した後に透過光で観察したものです。

この写真は朝9時に撮影。青い色素で埋め尽くされていました。所々の赤い細胞は、裏側の組織を剥がした時に表皮細胞も壊れてしまったところです。無理に剥がして観察しているので仕方がない点ではあります。赤くなった細胞はその後間も無く色素を失い透明になりました。

次に、午後になり花の色が変化し始めた頃に同じように観察しました。

すると細胞ごとに青から赤紫に微妙に色が異なった色素を持っていました。これは色の変化は全細胞一律ではなく細胞ごとに行われていることを示しています。

写真は載せませんが、この後、萎む前に花が完全に赤紫色になった時は全ての細胞で赤紫色になっていました。

以上の観察から、

  1. 西洋アサガオは開花から午前中は青色を保つが午後になると次第に色が変化し萎む前には赤紫色になること
  2. 色素は花弁の表皮細胞が持っており、特に表側の表皮細胞は鋭角円錐状で貯蔵している色素の量も多いこと
  3. 色を変化させるタイミングには表皮細胞ごとに微妙なずれがあるが最終的には全ての色素が赤紫色になること
  4. 細胞が傷つくなどした時も青い色素は間もなく赤く変わること

がわかりました。


アサガオの色素については研究が進んでいますので分かっている事を以下にまとめておきますね。

西洋アサガオの青い色素はヘブンリーブルーアントシアニンで1987年に名古屋大学で構造が決定されたそうです(T. Kondo et al. Tetrahedron Lett., 28, 2273, (1987))。そして花の色が青から赤に変化する理由が1995年に同じ研究室で明らかにされました(K.Yoshida et al. Nature 373,291(1995))。簡単にいうと、花が蕾から開き始めると表皮細胞中の液胞のpHが7.7に上昇し青色になること、そして赤紫色の花弁ではそれが6.6であったこと、そして色素を持たない表皮以外の細胞では花弁が青色の時でもpHが約5.5であったこと。さらに、エネルギーを消費しながらpHを高く保っているのでそれが失われた時には周囲の細胞に影響されてpHが下がり赤くなるということ。

驚くのは、この実験に1個の細胞に挿入できる微小pH電極を用いたということです。ちっちゃ〜い電極作るのも大変だったろうし、それを生きた細胞に挿入してpHを調べるのはもっと大変だったのではないかと想像してしまいます。美しい切片を作るのもままならない私としては、すごい!としか言いようがない感じ。


西洋アサガオではpHを高く保つことで青色になっていましたが、他の植物では別の方法で青色を得ています。有名なところではアジサイの青はアルミニウムが関係しています。ツユクサでは、アントシアニン+フラボンにマグネシウムが結合した錯体で青の色素にしているんですね。同じように見えて三者三様で複雑なんですね。

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