植物のふしぎ

植物をはじめ、生物のふしぎな生態をレポートします。
🌷ガーデニング・家庭菜園・草花と自然🌷

ガウラの花が風でゆらゆら・茎の断面が丸い理由

2024年10月25日 | 植物の生態

小布施町には約900mに渡って道路沿いにガウラが植えられていてる所があって、花が風でゆらゆらしてとってもいい感じなのです。「矢島沖」信号あたりから北東方向の谷街道沿いです。写真で紹介できればよかったのですが・・・あいにく撮ってませんです。小布施町には ここ以外にも沿道花壇があちこちにあってどこも手入れが行き届いていて感動ものです。先日訪問した時も「小布施橋東」信号の近くにある山王島委託花壇は相変わらずお花が溢れてきれいでした。実はこの花壇の前を通勤していたことがあって、毎日それを見るのが楽しみでした。小布施町はオープンガーデンを実施している家も多くて その案内で一冊の本になっているくらいです。花好きな人が多い町なんですね。

そんなこんなで自分でもガウラを育ててみたくなって鉢植えにしたんですよ。でも・・・とにかく茎がびよ〜〜んと伸びて傾いちゃうんです。だから全然見栄えがしない、というかなんというか。小さな株ではダメなのかなぁ。沿道花壇みたく群生させてお互いが支え合うようにした方がいいんでしょうね、きっと。あるいは寄せ植えにして他の植物に支えてもらうとか?とにかく丈夫な植物なので持ち主からの愛を失ってもけなげに咲いてはいますけれど。。

これがガウラの花。花の後ろに突き出た「距」があったんだ。今日初めて知りました。雌しべの先端もなんかかわいい。これまで見向きもせずにゴメン。じっくり観察して「愛」も復活、ちょっとだけ大切にしたいと思います。

・・・と日を改めて距だと思っていたものをよく見てみたらそうではなかったぁ。つぼみの時に花を包んでいたものでした。いわゆる萼が花弁のように分かれて広がらずに筒状のまま花の後方に反っているもののようです。口先だけで愛を語ってはダメですね。相手のことをよく見てあげなくちゃ・・です。


非常に前置きが長くなりました。今日のテーマは茎の断面の形です。

ガウラの茎の断面を見てみると・・

右がガウラで左がニシキギです。ガウラでは、茎の断面はやや歪みはあるものの丸い形です。一方、ニシキギは丸の茎に褐色板状の「翼」が4枚ついています。ガウラの茎は曲がりやすくできているため、どの方向からの力でもしなやかに受け流せます。ニシキギは翼があるのでそれを破損せず曲げることができません。

ニシキギの「翼」はこんな感じ。他の植物では見られない特徴です。ただしこんなに大きな翼を持つのは園芸用に選抜されたものであって、山に自生しているニシキギはそうではないらしいです。いずれにしても翼の役割は茎を曲げる力から守っていると見てよさそうです。


次に庭にある植物をいくつか取ってきて断面を調べてみました。

オヒシバとナシの断面は「丸」でツユクサは平らな面がある丸、カヤツリグサは三角、シソとバジルは共にシソ科で四角でした。バジルの試料は、斜めに伸びた茎が起きあがろうとしていた部分を使用したので少し歪みが見られます。樹木で言うところのアテ材。

カヤツリグサとシソとツユクサにはどのような事情があって丸ではないのでしょうか。カヤツリグサは、根元にある葉と上部にある苞葉の間には節がなく茎の途中から葉を出すことがありません。すなわちその間、茎を丈夫にする役割もある節が一つもないのです。そのため曲がったり潰れたりしにくい三角形が採用されたのではないかと考えました。

三角形には構造的に強くても葉を出す方向に制限がかかるというデメリットがあります。そこで、茎の途中に多数の節をもち、葉っぱをたくさん出して光合成効率を上げたいシソ科の植物は茎を丈夫にしつつも葉を出す方向に困らない四角を採用したのだと思います。

ツユクサの丸い断面に含まれる平らな部分は、構造力学的な理由ではなくて成長過程にあるように思われます。ツユクサは節の部分で二股、あるいは三股に分かれて成長します。その分かれた後の茎で向かい合う面が平になっていました。


以上まとめると茎が丸い理由は、どの方向からの力もしなやかに受け流しやすい形であること、そして葉を出す方向に制限を受けないので植物種ごとの事情に応じて自由に葉序を決められるということです。丸以外の形を採用している植物にはそれぞれ異なる事情があるらしく、以下は私の想像・・カヤツリグサでは茎の途中に節がなくても茎を丈夫にするために三角の断面が採用され、シソ科の植物では茎を丈夫にしつつ対生にすれば葉を出す角度に困らない四角が採用されたと推測。ツユクサの断面は丸と考えて良いが成長の過程で図らずも平らな面ができてしまったと。いずれにしても風などの力に対する戦略の違いによって茎の断面の形が違ってきたのだと思います。

「シソと、ツユクサ、カヤツリグサ、みんなちがって、みんないい」

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アサガオの開花時間

2024年10月21日 | 植物の生態

西洋アサガオは秋が深まっても元気に咲いています。10月20日の未明に開花時間の観察をしましたのでレポートします。

アサガオは暗くなってから一定時間経つと開花すると言われています。そうであれば開花は未明に予想されるので、夜中に鉢を室内に取り込みインターバル撮影に設定したカメラに任せて観察しました。2分ごとのインターバル撮影をしたのでスムーズな動きの動画として見ることができました。ただ開花の様子はほぼ予想通りであったので、動画は載せずに時刻順の静止画何枚かで説明したいと思います。

夜中の1時45分くらいから蕾の捩れが解け始め開花の動きが見られるようになりました。

4時ごろになるとほぼ最大に開いた状態に近くなり、その後は大きな変化が見られなくなりました。厳密に言えば花弁が最大に開いたのは4時20分頃でした。

その他に気づいた点として、翌日咲きそうな一つ上の蕾は、この観察の時間中に思いの外大きく膨張していました。人間の時間感覚ではほとんど動いていないように見える植物でもインターバル撮影すると確実に動いて活動していることが実感できて面白いです。

今回の観察だけでは開花のスイッチが暗闇であることを示すことにはなりません。しかし、すでに調べられている開花の性質にどの程度合致するのかや 新たに気づく点はないか、を目的に観察しました。


NHK for school」では、「アサガオの花の一日の動き」の短い動画で

  1. 暗くなってから9時間後に花を咲かせること
  2. 好きな時間に花を咲かせたい場合は、アサガオをその9時間前に暗い部屋などに入れること。
  3. 暗くしてから5時間ぐらい経てば、明るい所に移動しても開花時間に影響が出ない。

と説明されていました。また、日本植物生理学会のみんなのひろば植物Q&A(登録番号1384)では、「気温にも影響し、夜の温度が低いほど花が開く時間は早くなります」とありました。


前日19日の日没は、17時7分、そしてこの日の夕方は雨模様でかなり早い時間から薄暗くなっていました。

日没を基準にすれば、日没後8時間50分くらいから開花の動きが始まり、3時間半くらいかけて花弁が開き切ったことになります。一般に言われている「暗くなってから9時間後」に合っていたと思います。

ここでいう「9時間」は絶対か、と言えばそうではないのでしょう。光を当て続けて暗闇の刺激を与えなかった場合、翌日開花しそうな蕾でも開花しなくなる・・ということは実際には起こりそうもないからです。NHK for schoolでは「好きな時間に花を咲かせたい場合は、アサガオをその9時間前に暗い部屋などに入れること」とありましたが、あまりにも自然とかけ離れた条件では理論通りにはならないのでは、と推測しています。それでも21時まで光を当て続けたら・・あるいは15時に暗い部屋に入れたら・・こんな条件でも機会があったら調べてみようかな。

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エンサイの水挿し(節と発根の関係)

2024年10月17日 | 植物の生態

9月26日にエンサイの水挿しを開始して発根を観察して来ました。

この写真は開始から16日後である10月12日の様子です。上の写真に写っている4本の試料を順に説明しますね。

  1. 一番左:茎を節の上下で切ったもの
  2. 左から2番目:節の上下で切り、さらに脇芽を深く欠いたもの
  3. 左から3番目:脇芽が入らないように節の位置で切り取ったもの(節の一部を含む)
  4. 一番右:節に近い葉柄で切ったもの

結果は・・・

3番が翌日9月27日に発根、節全体を含む1番と2番は28日に発根を確認しました。節全体でなくとも発根することがわかりました。

一方、節を含まない葉柄で切断したものは発根しませんでした。そして1番では3番に比べて根の量が少ないのにも関わらず脇芽がすくすく成長していきました。

次に2番を拡大して撮ったのが・・

節より上部が枯れた以外は無事。これは脇芽を深く欠いた試料ですが開始から5日後の10月1日には節と葉柄が接続するあたりに小さな突起が現れ成長点(芽)の兆しが現れ、10月7日には はっきり芽とわかる状態になりました。その後、通常の脇芽よりはだいぶ成長が遅いものの、12日には小さな葉が観察できるほどになりました。

次に3番の試料を拡大した写真が・・

 

10月8日には突起が現れ成長点の兆しと判断しました。中央の突起部分をさらに拡大したのが右の写真です。カルス状のようであり はっきり脇芽とは言えないものでした。その成長は極めて遅く、本日17日に観察してもこの写真とあまり大差ないように感じました。この後どうなるのでしょう、芽として成長できるのかどうか。試料の中で一番発根量が多いのですがね。成長点が作れないとこのまま枯れちゃうんでしょうね。・・・養分足りないのかな?どうなるか知るために土に植えてみることにします。・・と思ったのですが土に植えると微細な変化も見られなくなるのでしばらくこのまま続けて観察していたところ・・変化があったので10月29日に続報「ビオラの水挿し エンサイの続報」を書きました。

1番と2番と4番は行末がはっきりしたのでここで観察中止です。

さらに・・葉柄からは発根しなかったので、切断面が中空になっているのが良く無いのかも・・・ということで葉の付け根(中空でない)で切って水に浸けておいたものも観察したところ・・

水挿し13日後の写真です。葉柄の切断面がカルス状にはなりましたが発根はしませんでした。その後間もなく葉は黄色くなり力尽きました。カルス状になったから もうちょっと条件良ければひょっとすると葉から直に発根するのか!?。今年はこれから寒くなっていくのでどうやってもうまくいかないと思うので追加実験はしませんけれども。


以上、まとめると、

  • 成長点の有無に関わらず発根には節が含まれることが重要とわかりました。
  • 脇芽(成長点)が欠けていた場合でも一つの節全体が含まれていれば新たに成長点が作られました。
  • 節組織の一部が含まれていた場合、発根はします。しかし新たな成長点ができるかは微妙なところ。この後、もう少しだけ継続して観察したいと思います。
  • 葉から直接根が出るという可能性?。何の役にも立たないゲテモノ見たさ。

今回の実験、家庭菜園に役立つ情報はというと・・一株入手できれば、脇芽を傷つけないように節の上下で切って挿し芽、あるいは水挿しでたくさん増やせます。まぁ、そうするまでもなく数株分の種まきすればいいことだし、成長がものすごく速いので少数でも食べきれないくらい採れますよ。

実験とは別の情報・・エンサイはヒルガオ科であり茎の先端が細くつる状になることがあります。その場合アサガオと同じく右巻きに巻きついていきます。アサガオのような白っぽい花が咲きます。害虫は少ないですが、現在、葉っぱに穴が。。何かに食べられています。芋虫とか見つからないのでバッタかな?

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セイタカアワダチソウ・盛者必衰の理

2024年10月15日 | 植物の生態

10月の連休は全国的に天気が良かったですね。私は長野県小布施町に行ってきました。小布施は観光客で大混雑でした。町の中心部も人がたくさんだったしハイウエイオアシスの駐車場にも満車で入れませんでした。

実はハイウエイオアシスの近くにあったセイタカアワダチソウの群落がどうなったか見たかったのですよ。2007年に訪れた時は大豊橋(たいほうはし)から松川の河川敷にあったセイタカアワダチソウの大群落を見ました。その時の写真が・・

2007年10月13日午後3時半頃の写真です。河川敷だから当然植物の手入れは誰もしてないのですが、群落を作って一斉に咲いている様子は実に綺麗でした。

そして17年後の今年、10月14日午後1時頃はどうなっていたかというと・・

が〜ん。セイタカアワダチソウの群落は消滅していました。全滅したわけではなくて所々にチラチラ生えてはいましたけれど・・。「セイタカアワダチソウの花の色、盛者必衰の理をあらはす。奢れる草も久からず・・」ですね。なぜこうなるかは有名な話です、以下に簡単にまとめておきます。


セイタカアワダチソウは根や地下茎からcis-デヒドロマトリカリアエステル(cis-DME)という化学物質を作って土壌中に放出しており、これにより他の植物は発芽や成長ができなくなるという現象が起きます。植物が特殊な化学物質を作って他の植物をコントロールする作用をアレロパシー(他感作用)といい、松川河川敷のセイタカアワダチソウもまさにアレロパシーで他の植物が成長できない間に土地を独占してしまったのでしょう、それが2007年。こんな化学兵器使われたら他の植物は全然太刀打ちできないのではないかとも思えます。なのに現在は群落消失している・・自然はそんなに甘くはなかった、盛者必衰なのでした。まず、群落作ると害虫や病原菌が集まってしまいます。それらに抵抗できる形質を持った新たな遺伝グループが代替わりできれば良いのですが、セイタカアワダチソウって自分が出したcis-DMEによって発芽できなくなるんですって。だから徐々に衰退していくしかないのですよ。

それからつる植物であるクズがセイタカアワダチソウの毒攻撃に対抗できると考えられます。2024年の写真の中ほど右から濃い緑色の植物が覆って来ていますが、それがクズです。クズはつるを伸ばして遠征してくるので土壌中のアレロパシー物質は物ともせず他の植物に覆い被さって地上を制覇してしまいます。この攻撃にはセイタカアワダチソウも勝つことはできないでしょうね。とはいっても全面クズに占領されるわけでもなく・・クズはクズなりのウィークポイントがあるのでしょう、バランスをとって他の植物と共存しているのですね。人間の社会でも永遠にオールマイティが存在しないように植物の世界でも皆が折り合いをつけて共存していっているのが面白いです。


追加情報

Googleマップのストリートビューって過去の年代のも見られるのご存知ですか?それでこの地点の過去の状況を調べたのですよ。そうしたら、河川敷に対して色々と人の手が加えられていたことが分かりました。まず、2014年7月〜2017年7月の間のどこかで車止めが設置されていました。これにより自動車が河川敷に降りられなくなり雑草の勢いが強まったと推測できます。2019年6月〜2021年7月の間では河川敷に生えていた樹木や雑草が刈り払われました。それから2023年12月までの間でも新たに除草整地されていたことが分かりました。知らない間にかなり人の手で撹乱されていたのですね。それに河川敷だから当然大水の時には植物が流されてしまったこともあったでしょう。この地に関してはセイタカアワダチソウの群落消失は、害虫や病気だけでなく、人為的あるいは自然災害的な事象も関係していたのかもしれません。

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キキョウの蜜はどこにある?

2024年10月11日 | 植物の生態

キキョウの中心部の構造がぱっと見でよく分からないし蜜はどこにあるのかと思って拡大してじっくり見てみました。

すると・・

各雄しべの根元が三角形に広がって雌しべを囲んでドーム状になっていました。蜜はこの中にたっぷり入っており、ポリネーターは各雄しべ間にできたスリットに口を差し込んで蜜を吸うことになります。写真で分かるようにスリット部分に毛が生えていました。解剖して調べたところドームの内側の見えない所でも同様に毛が生えていました。キキョウは花が横向きに咲くのでこの毛が蜜がこぼれ出ることと雨の侵入を防いでいると考えられます。さらにこの構造はポリネーターが蜜を吸うのに少し手間取ることになります。それにより花の中心部分に提示された花粉と柱頭に近づけさせる役割もあるように感じました。植物は必要とあらばちょうど良い場所にある器官の形を変えて流用させているのですね。植物の柔軟性に感心しました。

 

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