植物のふしぎ

植物をはじめ、生物のふしぎな生態をレポートします。
🌷ガーデニング・家庭菜園・草花と自然🌷

キキョウは雄が先!?

2024年09月26日 | 植物の生態

暑さはようやくおさまって来ましたね。秋の雰囲気を出そうと思って桔梗を買って来ました。

桔梗というと花冠も雌しべの先も5つに割れるのが普通だと思っていました。でもこの花は雌しべの先が4裂です。そういうこともあるのですね。

以下、一つの花に絞ってどのように咲き進むのか調べていきたいと思います。

ちょうど翌日開花しそうな蕾があったのでこれに決めました。でも形がなんかが変・・

正面から見ると四角い小包のよう。??これが5つに割れるのでしょうか?

 

開きました〜。ぱちぱち。開花1日目。あら〜やっぱり花冠は4裂でした。

開花直後は写真のように雌しべに雄しべがべったりとくっついています。仲が良いんですね・・。この段階で花粉はまだあらわにはなっていません。

次の写真が開花2日目・・

 

雄しべの数も花冠の割れと同じく4でした。2日目では雄しべは雌しべから離れて花冠近くまで倒れていました。そしてその葯には花粉が残っていませんでした。花粉はというと、雌しべの側面に生えている細かい毛にべったりと付いていました。雄しべは花粉を雌しべに託してその役割をあっという間に終えるのですね。花粉は雌しべ側面に提示されている一方で柱頭はまだ展開していないので雄が先に熟すという意味で「雄性先熟」といいます。

がくの数はどうなっているでしょうか。後ろから撮ってみると・・

がくも4つに割れていました。この花は全部4つで統一されているようです。同じ茎から出ている他の花では花冠・がく共に5裂で、雄しべが5本というのもありましたので遺伝的に決まっている形質ではないということです。

そして開花6日目の花が・・

柱頭が割れました。これも4裂でした。雄性期に入って4日が経過しており、この段階でほとんどの花粉が虫によって運び去られていました。柱頭が開いて花粉を受け取れるようになったのでここから雌性期になります。このように、雄性期と雌性期をずらすことで自家受粉を巧みに避けているのです。

今後の興味は、蜜のありかと花の微細な構造。それに子室の数。この花では子室が4つになると予想。花冠が5裂で柱頭が4裂の花ではどうなるのでしょうか。花冠が5裂で柱頭が3裂という花もありました。そのあたりは追って報告したいと思います。


【追加情報】

 子室の数は柱頭がいくつに割れているかに関係していました。花冠が5列、雄しべが5本でも柱頭が3裂なら子室の数は3つになっていました。

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マツバボタンの雄しべ・触れると自ら動く!?(改)

2024年09月25日 | 植物の生態

「ポーチュラカとスベリヒユとマツバボタン」シリーズの第6回目(改)です。9月20日に投稿した「マツバボタンの雄しべ・触れると自ら動く!?」は削除しておきました。

今回はポーチュラカとマツバボタンの雄しべが人知れず涙ぐましい努力をしているかもしれないというお話。スベリヒユだって頑張ってはいますが花が小さすぎて観察しにくいため今回はお休みしてもらいます。

動きがあるものはやはり動画の方がわかりやすい・・ということでマツバボタンの雄しべが動く動画をYouTubeにあっぷしておきました。懲りもせずつまらない動画を作ってしまった・・・ブログの方はチャプターの静止画で説明したいと思います。

まずはポーチュラカを観察していると・・

ヒメハナバチがポーチュラカの花に訪れていました。虫が雄しべに触れると雄しべが自ら動くというのですよ。でもヒメハナバチの戯れが激しくてね。雄しべが自ら動いているのか蜂が動かしているのかよくわからん。

ということで、人為的に雄しべに触れてみることにしました。ヒメハナバチ(種類は不明)は花粉を集めるのが好きみたいです。

選手交代でマツバボタンです。まずは触れる前の写真。次に触れようとした写真・・

こんな感じに花の上側の雄しべをさら〜って爪楊枝の先で軽く触れました。すると・・

この写真のように雄しべが触れた方向に「むにょ〜〜」って動いたのですよ。変な擬態語が出ちった・・静止画で説明するのって大変。

そんでもって・・

約4分半後には雄しべは元の位置まで戻りましたとさ。めでたしめでたし・・この写真は載せなくてもよかった?

次に雄しべに強く触れた時、連続して何回くらい反応を繰り返せるのかを調べました。あの・・これから似たような写真が連続しますけれどびっくりしないでください。

まずは1回目。刺激後10秒程度の時、雄しべが最大に動いた時のチャプターです。この後4分半ほどかけて元の位置に戻ります。

そして2回目 同じく雄しべが最大に動いた時のチャプター。注目点は奥側の花弁です。1回目の時と比べると水分を失ってやや萎れた感じがあります。動画を見ると、雄しべが元の位置に戻るのに合わせて花弁も萎れていく印象がありました。雄しべが元に戻る時には花弁に貯めてある水分が利用されているのかもしれません。

3回目から、雄しべの動き方が明らかに小さくなりました。花弁のしおれ方についてはさらに強まっています。

4回目以降は3回目の時とほぼ同じような感じでした。すなわち、雄しべが動き方は小さい一方、動いた分については数分のうちに元の位置に戻っていました。この写真は7回目のものです。連続7回繰り返して雄しべの動きが完全にストップすることはなく、観察は終わりにしました。


雄しべに触れると自ら動く意義について。雄しべが動くことで訪花昆虫に託す花粉を多くして結実量を増やすとする見解があります。しかし、投稿したYouTubeのポーチュラカとヒメハナバチに見るようにあのクラスの蜂が頻繁に来ればこんな涙ぐましい努力は不要でしょう。蜂の行動量が十分大きいので少しばかり動いたところで大同小異で意味ありません。一方でそれとは別の視点もあります。植物側の本来の目的は自家受粉を避けることで雄しべが雌しべから離れる動きに過ぎないというもの。特に花弁が閉じる前後で雄しべが雌しべに接触しないようにテンションをかけているが、花弁が開いている時も雄しべの感覚の鋭敏さが保たれているので、虫が触れただけで結果的に動いてしまうという見解。雄しべの感度が上がるのは花弁が閉じる前後らしくそのような推測が成り立つそうです。

いずれにしても小さなことからコツコツと・・どんな境遇だったとしても小さのことでも頑張っていることが大切なのかも・・です・・と無理やり終わりにして締めてみた。

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なぜメランポジュームの筒状花には種子ができないのか

2024年09月24日 | 植物の生態

メランポジュームの3回目です。1回目では着果の様子を写真で示しました。 2回目はまとまり良く花がたくさん咲く理由を解説しました。

今回は、メランポジュームのタネが舌状花だけに稔る理由を調べていきたいと思います。

まずは結実の様子から・・

写真右下のように舌状花の下にドーナツ状に並んで種子ができます。

次に咲き始めの花を観察してみます。

1:舌状花の花冠 2:舌状花のめしべ 3:筒状花の花冠 4:筒状花の雌しべ

舌状花から咲き始め、さらに筒状花の外側から中心に向けて咲き進んでいきます。舌状花にはおしべが見当たらず、めしべは先が二つに分かれていました。

さらに咲き進むと・・

舌状花のめしべが一番先に黒くなり枯れます。一方、舌状花の花冠は最後まで枯れずに残り頭花を飾ります。

咲き始めの筒状花を顕微鏡で拡大してみると・・

1:舌状花の花冠 2:舌状花のめしべ 2’:柱頭(花粉を受ける部分) 3:筒状花の花冠 4:筒状花のめしべ 5:筒状花の葯(葯筒)

キク科の筒状花では、めしべを取り囲んで葯が合着し葯筒になります。筒状花の雌しべには毛が多数生えており、その毛が葯筒から出される花粉を受け取ります。

次第にこの写真のようにめしべが伸びて花粉をまとわり付かせて花粉を運ぶ虫が来るのを待っています。

さらにめしべが伸びたところ。花粉の多くは虫に持ち去られて残りわずかになっています。

筒状花で実をむすぶ花(例えばアザミ、ジニア、ヒマワリなど・・多数種)では、この後に柱頭が開いて雌性期になりますが、メランポジュームではこのまま花が終わり種子ができないのです。

まとめると、メランポジュームでは、舌状花は雌花の役割で種子を作り、筒状花は花粉供給の雄花の役割に徹しています。筒状花は外側から順に咲いていくので一つの頭花で長期間花粉が出続けることになります。ほぼ100%の結実率は、雌花に対して花粉の供給が安定して多くなるためと考えられます。メランポジュームは、着果数は少なくても確実に舌状花に稔らせる方針を採っている植物なのです。


ついでに花粉の顕微鏡写真を撮りました。ジニアのそれと比較してみます。

これは今回花粉を調べたジニアの花。ジニアでは舌状花だけでなく筒状花でも種子ができます。この写真でわかるように筒状花の柱頭もくるりと開いて活動します。

花粉を比較すると・・

花粉の大きさ:メランポジュームが約24μm、ジニアが約32μmでした。花粉の大きさはジニアの方が一回り大きいですが、両者ともに表面がトゲトゲしており、この特徴はキク科共通のものです。

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きゅうりの巻きひげが巻く理由とは?

2024年09月18日 | 植物の生態

今回は、きゅうりの巻きひげについてです。タイトル用の写真を準備しようとしたところ、全然撮っていないのに気づきまして。既に家庭菜園から撤収した後だったので仕方がないので水彩画を描いてみました。支柱が1本しかないのもヘンなのですがこれは想像上の絵、背景の里山も想像で描きました。

今年はつるおろし栽培をした関係で巻きひげは邪魔な存在でした。なので気づいたら切除することを繰り返していてほとんど観察はできませんでした。そうした中、撤収前に巻きひげを顕微鏡で観察することにしたのです。

巻きひげはバネ状になっていて弾力を出すことで風雨からの力を受け流しています。バネがそうであるようにその断面は円形と思い込んでいましたが、そうではありませんでした。

このように かまぼこ形をしていました。平らな面が外側で山形の方が内側となっていました。巻いていない巻きひげはどうなのか、と気になるところですが撤収済みでそのサンプルもありません。来年栽培した時に調べたいと思います。また機会があればインゲンやエンドウなど他の種の巻きひげでも調べてみたいと思います。

次にその断面を顕微鏡で見てみると・・

 

これはサフラニンO染色をしたもの。リグニンが沈着して固くなった部位や木部などが赤く染色されています。このように木部はつるの内側に寄っていること、そして、内側の表皮やそれと道管の間の層が赤く染まったことでそこにリグニンが沈着していることが推察できました。リグニンは、特に樹木の強度を保つ成分として知られているように硬い物質、そのためそれが沈着する側では細胞の伸長が抑えられます。その一方、巻きひげの外側ではそれがないので伸びやすくなり、その差により沈着側を内側に巻いて丈夫になっていくという仕組みです。

巻きひげは葉が変形したもので葉に表裏があるように巻きひげにも表裏があるそうです。きゅうりの場合はどうなのでしょうか。色々な部位で観察してみないとわからないかも。それからきゅうりの巻きひげと言えば途中で巻く方向が変わる反旋点の存在。それらの観察や巻き始めるきっかけの接触屈性についても来年の課題にしたいと思います。

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街路樹にサルノコシカケ

2024年09月17日 | 植物の生態

9月12日に日野市のイチョウ並木で枝折れ事故があり亡くなられた方がいらっしゃいました。それを聞いて、木が腐っていたのかと思ったのですが、そうではなかったようです。イチョウは隔年結果の性質により多量に稔らせる年があり、今年の実つきは多く その重みで折れたということ。2022年8月にも鹿児島でイチョウの枝が折れて校長先生が下敷きになってしまいました。この時も折れた枝に腐朽はなかったらしく、実の重さが原因だったようです。めすのイチョウの木は8月〜秋には気をつけなければいけませんね。実を収穫するために剪定を控えがちですが、特に街路樹の場合はこざっぱり剪定しておかなければいけないのかもしれません。


さて、私が住む地域でも街路樹に関して気づいたことがありました。散歩途中で大きなサルノコシカケが出ている木を見つけました。

 

サルノコシカケは木材腐朽菌に属し、半円形の傘を柄を介さずに直接幹から発生させるきのこの仲間です。リグニンを効率的に分解できるので森における分解者としては重要なポジションにあります。ただし、生きている木にも発生することがあり木の寿命を短くしてしまうので注意しなければなりません。写真の場所では、他の街路樹は元気で枝葉も青々としているのですが、この木は勢いが弱く、高いところに枯れ枝も見えました。なのでさらに腐食が進むと枝折れに注意する必要がありそうです。台風被害に遭いやすい地方自治体ではサルノコシカケを街路樹に見つけたら知らせるように案内しているところもあります。

森林総研チャンネル【森林講座 長生ききのこ「サルノコシカケ」の秘密】の説明聞いていたら色々知らないことがわかりました。材木では 心材の方を赤身といって抗菌物質などを蓄積し保護層が作られているので耐久性が高くなるのですが、生きている木の場合はその逆で、辺材の方が防御反応をとれるので心材よりも丈夫になるそうです。なので、この写真の木でも辺材が弱くなったところにサルノコシカケが感染し、心材にある程度蔓延したところで木の表面に傘を発生させたものと考えられます。幹周りの様子は他の木と大差ないように見えますが、内部はかなり傷んでいるのかもしれません。

それから動画での説明では、地球の歴史上で腐朽菌が出現したことによって木がすぐ腐ってしまうので石炭ができなくなってしまったとのこと。すなわち腐朽菌の出現は石炭期の末期であると2012年のサイエンスで報告されたそうです。さらに、半円形の傘が幹から直接出ている形をしていれば、全てサルノコシカケの仲間だと思いこみがちです。しかし、遺伝子解析の結果は そうでは無かったということでした。写真のコフキサルノコシカケ(?)は同じ形をしたレンガタケとは別のグループで、柄付きのきのこを生やすケガワタケと同じ仲間だったということでした。


写真ではサルノコシカケの上に黄色のものがベッタリ付着しています。こちらは、おそらくは地衣類のロウソクゴケでしょうか。地衣類とは、葉緑体を持つ藻類と持たない菌類が共生関係を構築している植物体のこと。菌類は藻類に居住環境と水分や養分を提供し、その代わりに藻類が光合成で作り出した栄養を受け取っています。この共生関係により他の植物が生きられないような樹皮上でも見ることができます。生活の場を広げるときも両者が一緒に含まれる小さな粒になって行動するそうです。そんな生活様式なので、樹木にはほとんど悪影響はないと考えられます。


過去、森の中で撮った写真にもっとすごいサルノコシカケがあったので載せておきますね。

生きている木に出るサルノコシカケは菌糸が維管束に沿って蔓延することも多く、この写真のように縦に連なることがあります。


「サルノコシカケに腰掛ける猿」の写真を撮った方がいらっしゃるのですね。野生の猿が相手では狙って撮れるものでもないけれど・・いい写真でした。#お前よくぞそんなもん撮ってきたな・とツッコミもしたくなります。

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