facciamo la musica! & Studium in Deutschland

足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

小川典子 ピアノ・リサイタル

2017年07月10日 | pocknのコンサート感想録2017
7月7日(金)小川典子(Pf) 
ヤマハホール
【曲目】
1.モーツァルト/ピアノ・ソナタ 変ロ長調 K.281
2.モーツァルト/ピアノ・ソナタ イ長調 K.331「トルコ行進曲付き」
3. リスト/ラ・カンパネラ S.141/R.3b
4. ブラームス/6つの小品~ 間奏曲イ長調 Op.118-2
5. シューマン/幻想曲 ハ長調 Op.17
【アンコール】
サティ/ジュ・トゥ・ヴ

僕が注目しているピアニストの一人、小川典子のソロリサイタルを聴くのは2010年以来。メインに置かれたシューマンの幻想曲は、小川がデビュー当時に聴いて感銘を受けた記憶があったのでこれが一番のお目当て。会場はヤマハホール。このところヤマハホールでのコンサートが続くが、通うごとにホールの響きと雰囲気にひかれている。

リサイタルの前半にはモーツァルトのソナタが2つ置かれた。小川がまだ10代の頃に旧ヤマハホールで弾いた思い出の曲とのこと。変ロ長調のソナタはパリッとした硬質で明晰な響きが鳴り、くっきりとした活きのいい演奏。各声部のフレーズが生き生きと紡がれて行く姿からはスカルラッティの世界が浮かぶ。だけどモーツァルトにしてはどこもかしこも明るすぎで音が鳴り過ぎでは?と感じることもあった。

次の有名なイ長調のソナタを聴いて、その一本調子の印象が益々強まった。最初こそ、主旋律をくっきりと浮かばせて内声とバスを抑えるバランス感覚に好感を持ったが、第1楽章のどの変奏でも、2楽章も3楽章もその調子は変わらない。ひたすらソプラノの声部が美声を披露するのを聴かされ続けた感じだった。

後半はロマン派の名曲たち。リストもやっぱりパリパリでバリバリな演奏。だけどこの曲はそういう演奏を求めているのか、これは聴き応えがあった。クリアなタッチでヤマハのピアノから輝かしい響きを引き出し、 常に「攻め」の姿勢で聴き手をリストの超絶技巧の世界へ引き込んだ。だが、次のブラームスもこの調子で弾かれてはたまらない。哀愁も郷愁も痛みもなく、高らかな勝利を宣言するようなブラームスだった。

期待していたシューマンは、ここまで聴いた印象からちょっと不安になったが、これは充実したいい演奏だった。小川の持ち味の磨きのかかった輝かしい音色を活かし、ブリリアントでゴージャスな外向きのシーンから、胸の中の熱い思いを歌う内向きのシーンまで、幅広いダイナミックレンジを駆使して雄弁に歌い上げていった。小川の演奏は、こういったアグレッシブでパフォーマンス的に目立つ曲がいい。

小川典子 ピアノ・リサイタル 2010.12.9 トッパンホール
CDリリースのお知らせ
さびしいみすゞ、かなしいみすゞ ~金子みすゞの詩による歌曲集~

拡散希望記事!やめよう!エスカレーターの片側空け

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 諏訪内晶子&ボリス・ベレゾ... | トップ | クァルテット・エクセルシオ ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

pocknのコンサート感想録2017」カテゴリの最新記事