10月27日(木)ヘルベルト・ブロムシュテット 指揮 NHK交響楽団
《2024年10月Cプロ》 NHKホール
【曲目】
1.シューベルト/交響曲第7番ロ短調 D.759「未完成」
2.シューベルト/交響曲第8番ハ長調 D.944「グレート」
昨年10月に予定されていたブロムシュテットの来日が体調不良でキャンセルとなり、今年の来日を疑問視する声も多かった。けれど、このところのブロムシュテットのヨーロッパでの活動の様子から、きっとN響を振りに来てくれると思っていた。そしてブロムシュテットさんはちゃんと来てくれた。
今シーズンよりBからCプロの会員に変更し、先月の定期はプラハにいて聴けなかったので、Cプロ会員として初となった今夜のN響定期、超満員のNHKホールはブロムシュテットが登場する前から特別な空気に包まれていた。そして楽員達と共にコンマスの川崎さんのサポートでマエストロが登場すると、尋常ならざるヴォルテージの喝采と早くもブラボーの声。
静まり返ったホールで始まった「未完成」は、無駄をそぎ落とし、厳しく研ぎ澄まされ、極限の静けさと眩しいほどのエネルギーに支配されていた。美しく均整の取れた演奏にはN響の滑らかな弦と、管楽器陣の妙技が大きく貢献した。とりわけ松本さんのクラと吉村さんのオーボエにホレボレ。並々ならぬ「気」が伝わってくる「未完成」ではあったが、期待値が高過ぎたせいか、極め付きの名演という気分までは行かない。しかしそんな桁外れの名演が、次の「グレート」で実現した。
冒頭のホルンのフレーズをあっさりとこなしたブロムシュテット/N響は、この壮大な作品に気負うことなく自然体で向き合った。要所を引き締めつつ軽やかな足取りで進んでいく様子は、荒波をもろともせず意気揚揚と余裕で進む船のような頼もしさに満ち溢れている。キラキラ飛び散る波しぶきの細かい粒までくっきり見えるようなクリアな音たちが清々しく飛び交う。音が浮き立ち小躍りする。第1楽章の短調の第2主題が、こんなにも躍動感があることに気付かされたのをはじめ、この曲の随所が魅力に満ち満ちていることを感じ、聴き進めるほどにただただ演奏にのめり込んで行った。
ロウソクの炎を優しく吹き消すぐらいの小さな息が大木を揺らすように、全く力むことなく的確に核心を突いて最大の効果を生み出すブロムシュテットの指揮は魔法のよう。全てのリピートをやってくれることで、感動に新たな感動が重なった。こんな時間がずっと続いて欲しいのだが、夢のような時間はみるみる過ぎてもう終楽章も終盤。コンマスの川崎さんの気合いが入った姿と共に演奏は躍動を重ねてクライマックスを迎え、終演となった。聴衆は、サヴァリッシュの最後の客演時のような最高潮に達した。
ブロムシュテットの指揮は、年齢からは想像できないほど若々しいとよく言われる。確かに若々しくエネルギッシュだが、若い指揮者の若さとは異なるもっと根源的な生命力に溢れている。これは、97歳になっても若さを失うことなく歳を重ねた名匠のみが達し得る奇跡だ。日本における「グレート」演奏史上でも稀有の名演を体験させてくれたブロムシュテットに心から感謝し、N響の健闘を讃えたい。
N響 2022年10月B定期(ブロムシュテット 指揮) 2022.10.27 サントリーホール
N響 2021年10月A定期(ブロムシュテット 指揮) 2021.10.17 東京芸術劇場
N響 2019年11月C定期(ブロムシュテット 指揮) 2019.11.22 NHKホール
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1.シューベルト/交響曲第7番ロ短調 D.759「未完成」
2.シューベルト/交響曲第8番ハ長調 D.944「グレート」
昨年10月に予定されていたブロムシュテットの来日が体調不良でキャンセルとなり、今年の来日を疑問視する声も多かった。けれど、このところのブロムシュテットのヨーロッパでの活動の様子から、きっとN響を振りに来てくれると思っていた。そしてブロムシュテットさんはちゃんと来てくれた。
今シーズンよりBからCプロの会員に変更し、先月の定期はプラハにいて聴けなかったので、Cプロ会員として初となった今夜のN響定期、超満員のNHKホールはブロムシュテットが登場する前から特別な空気に包まれていた。そして楽員達と共にコンマスの川崎さんのサポートでマエストロが登場すると、尋常ならざるヴォルテージの喝采と早くもブラボーの声。
静まり返ったホールで始まった「未完成」は、無駄をそぎ落とし、厳しく研ぎ澄まされ、極限の静けさと眩しいほどのエネルギーに支配されていた。美しく均整の取れた演奏にはN響の滑らかな弦と、管楽器陣の妙技が大きく貢献した。とりわけ松本さんのクラと吉村さんのオーボエにホレボレ。並々ならぬ「気」が伝わってくる「未完成」ではあったが、期待値が高過ぎたせいか、極め付きの名演という気分までは行かない。しかしそんな桁外れの名演が、次の「グレート」で実現した。
冒頭のホルンのフレーズをあっさりとこなしたブロムシュテット/N響は、この壮大な作品に気負うことなく自然体で向き合った。要所を引き締めつつ軽やかな足取りで進んでいく様子は、荒波をもろともせず意気揚揚と余裕で進む船のような頼もしさに満ち溢れている。キラキラ飛び散る波しぶきの細かい粒までくっきり見えるようなクリアな音たちが清々しく飛び交う。音が浮き立ち小躍りする。第1楽章の短調の第2主題が、こんなにも躍動感があることに気付かされたのをはじめ、この曲の随所が魅力に満ち満ちていることを感じ、聴き進めるほどにただただ演奏にのめり込んで行った。
ロウソクの炎を優しく吹き消すぐらいの小さな息が大木を揺らすように、全く力むことなく的確に核心を突いて最大の効果を生み出すブロムシュテットの指揮は魔法のよう。全てのリピートをやってくれることで、感動に新たな感動が重なった。こんな時間がずっと続いて欲しいのだが、夢のような時間はみるみる過ぎてもう終楽章も終盤。コンマスの川崎さんの気合いが入った姿と共に演奏は躍動を重ねてクライマックスを迎え、終演となった。聴衆は、サヴァリッシュの最後の客演時のような最高潮に達した。
ブロムシュテットの指揮は、年齢からは想像できないほど若々しいとよく言われる。確かに若々しくエネルギッシュだが、若い指揮者の若さとは異なるもっと根源的な生命力に溢れている。これは、97歳になっても若さを失うことなく歳を重ねた名匠のみが達し得る奇跡だ。日本における「グレート」演奏史上でも稀有の名演を体験させてくれたブロムシュテットに心から感謝し、N響の健闘を讃えたい。
N響 2022年10月B定期(ブロムシュテット 指揮) 2022.10.27 サントリーホール
N響 2021年10月A定期(ブロムシュテット 指揮) 2021.10.17 東京芸術劇場
N響 2019年11月C定期(ブロムシュテット 指揮) 2019.11.22 NHKホール
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