6月12日(水)ピーター・フィリップス指揮タリス・スコラーズ
~未来へ。結成40周年記念ツアー<ベスト・オヴ・タリス・スコラーズ> ~
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【曲目】
1. タリス/使徒らは口々に
2. パレストリーナ/ミサ・アスンプタ・エスト・マリア
3. ウィテカー/結成40周年記念委嘱作品 (日本初演)
4. ペルト/マニフィカト
5. ニコラ・ゴンベール/アブサロンを悼む
6. ジョスカン・デ・プレ/わが子、アブサロン
7. バード/聖所にて至高なる主を賛美もて祝え
【アンコール】
1. ラッスス/めでたし、天の女王
2. ペルト/神の母にして処女
またタリス・スコラーズのピュアな声の響きに浸りたくてオペラシティへ。ソプラノ4、アルトとカウンターテナー各1、テナーとバス各2という10人の編成で、ルネサンス時代の宗教作品に加え、今回はタリス・スコラーズ結成40周年を記念した委嘱作品や、ペルトの作品という現代の作品がプログラムに並んだのは興味深い。
まずはこのアンサンブルの名前の由来になったタリスの短い作品でコンサートの幕が開いた。清澄で柔らかい響きは変わることなく息を呑む美しさ。各パートがこれ以上ないというほどの滑らかさでアンサンブルを織り成す。それぞれに息をしている各パートがひとつに合わさり、全体が大きく静かに呼吸をしているのが感じられ、それに合わせて聴いている方も深呼吸したくなる。
続いてパレストリーナの大作のミサ曲が演奏された。パレストリーナの音楽は、ルネサンスの作品のなかでも滑らかな線とハーモニーの美しさが際立つが、タリス・スコラーズはこうした特徴を精緻の極みと言える歌唱で聴かせる。ピッチが完璧に揃っているだけでなく、男女の声質が見事に均一化されている。これがハーモニーの純度を更に高め、この世のものとは思えない響きが、オペラシティコンサートホールを包んだ。ミサの典礼文は、クリスチャンではない身には概して単調だが、それでも「グローリア」の神々しさや、「エト・インカルナトゥス・エスト」での静謐さ、「クルチフィクスス」の深刻さ等々、ドラマを感じるくだりはある。パレストリーナの音楽は、エモーショナルになることは殆どなくて、表情の起伏はあくまで滑らかだが、そうした控えめな中にこそ、タリス・スコラーズの繊細な表現における巧さが光っていることも実感した。
後半はタリス・スコラーズの委嘱作品で始まった。ルネサンス音楽とは全く性格の異なる現代の作品をこの驚異のアンサンブルで聴けるのはとても嬉しいが、不協和音が多用された現代の作品であっても、タリス・スコラーズのピュアな演奏にはいささかもブレがない。トーン・クラスターを思わせる密集した響きは、本当は一つの音の塊として聴こえるものかも知れないが、タリス・スコラーズにかかると、全ての声部が正確なピッチで分離しているために、響きは決して濁ることなく、透明で深い水底を覗き見るような覚醒した感覚に捉えられた。委嘱作を手がけたウィテカーもきっとこの響きをイメージしたに違いない。時に生々しい響きも聴かせ、ルネサンス音楽とは一味違った刺激ももたらしてくれたが、次のペルトの演奏にしても、行き着くところはピュアな祈りの世界であることを、この後再びジョスカン・デ・プレやバードといったルネサンスの作品を聴いたことで、はっきり認識できた。「ピュアな祈りの世界」、これこそが、タリス・スコラーズの真骨頂と言える。
タリス・スコラーズ 2011.6.13 東京オペラシティ
タリス・スコラーズ 2007.6.7 紀尾井ホール
~未来へ。結成40周年記念ツアー<ベスト・オヴ・タリス・スコラーズ> ~
東京オペラシティコンサートホール タケミツメモリアル
【曲目】
1. タリス/使徒らは口々に
2. パレストリーナ/ミサ・アスンプタ・エスト・マリア
3. ウィテカー/結成40周年記念委嘱作品 (日本初演)
4. ペルト/マニフィカト
5. ニコラ・ゴンベール/アブサロンを悼む
6. ジョスカン・デ・プレ/わが子、アブサロン
7. バード/聖所にて至高なる主を賛美もて祝え
【アンコール】
1. ラッスス/めでたし、天の女王
2. ペルト/神の母にして処女
またタリス・スコラーズのピュアな声の響きに浸りたくてオペラシティへ。ソプラノ4、アルトとカウンターテナー各1、テナーとバス各2という10人の編成で、ルネサンス時代の宗教作品に加え、今回はタリス・スコラーズ結成40周年を記念した委嘱作品や、ペルトの作品という現代の作品がプログラムに並んだのは興味深い。
まずはこのアンサンブルの名前の由来になったタリスの短い作品でコンサートの幕が開いた。清澄で柔らかい響きは変わることなく息を呑む美しさ。各パートがこれ以上ないというほどの滑らかさでアンサンブルを織り成す。それぞれに息をしている各パートがひとつに合わさり、全体が大きく静かに呼吸をしているのが感じられ、それに合わせて聴いている方も深呼吸したくなる。
続いてパレストリーナの大作のミサ曲が演奏された。パレストリーナの音楽は、ルネサンスの作品のなかでも滑らかな線とハーモニーの美しさが際立つが、タリス・スコラーズはこうした特徴を精緻の極みと言える歌唱で聴かせる。ピッチが完璧に揃っているだけでなく、男女の声質が見事に均一化されている。これがハーモニーの純度を更に高め、この世のものとは思えない響きが、オペラシティコンサートホールを包んだ。ミサの典礼文は、クリスチャンではない身には概して単調だが、それでも「グローリア」の神々しさや、「エト・インカルナトゥス・エスト」での静謐さ、「クルチフィクスス」の深刻さ等々、ドラマを感じるくだりはある。パレストリーナの音楽は、エモーショナルになることは殆どなくて、表情の起伏はあくまで滑らかだが、そうした控えめな中にこそ、タリス・スコラーズの繊細な表現における巧さが光っていることも実感した。
後半はタリス・スコラーズの委嘱作品で始まった。ルネサンス音楽とは全く性格の異なる現代の作品をこの驚異のアンサンブルで聴けるのはとても嬉しいが、不協和音が多用された現代の作品であっても、タリス・スコラーズのピュアな演奏にはいささかもブレがない。トーン・クラスターを思わせる密集した響きは、本当は一つの音の塊として聴こえるものかも知れないが、タリス・スコラーズにかかると、全ての声部が正確なピッチで分離しているために、響きは決して濁ることなく、透明で深い水底を覗き見るような覚醒した感覚に捉えられた。委嘱作を手がけたウィテカーもきっとこの響きをイメージしたに違いない。時に生々しい響きも聴かせ、ルネサンス音楽とは一味違った刺激ももたらしてくれたが、次のペルトの演奏にしても、行き着くところはピュアな祈りの世界であることを、この後再びジョスカン・デ・プレやバードといったルネサンスの作品を聴いたことで、はっきり認識できた。「ピュアな祈りの世界」、これこそが、タリス・スコラーズの真骨頂と言える。
タリス・スコラーズ 2011.6.13 東京オペラシティ
タリス・スコラーズ 2007.6.7 紀尾井ホール
兵庫芸文のプログラムでは、現代曲を取り上げていません。まあ、僕が避けたと云う事ですが…。
ウィテカーは最近流行っているようで、才子才に溺れるみたいなトコのある作曲家ですが、
タリスス・コラーズコに向けて、マジメに曲を作ったようですね。
ウィテカーが今売れっ子の作曲家というのは知りませんでした。
この委嘱曲(曲名がわかりませんが)は、堅実な感じの音楽でした。
これほどの相手に委嘱を頼まれると、誰しも畏怖の念を覚えるのかも知れませんね。
Pilgrimさんの詳細なレポートも読ませて頂きました。
アンコールでやったペルトの曲は、僕も曲名を見るまでは世俗曲だと思ってました。