3月22日(土)ユベール・スダーン指揮 東京交響楽団
東京オペラシティシリーズ第78回
東京オペラシティコンサートホールタケミツメモリアル
【曲目】
1.ハイドン/交響曲第1番ニ長調Hob.I-1
2.ハイドン/ピアノ協奏曲ハ長調Hob.XVIII-5
3.ハイドン/ピアノ協奏曲ニ長調Hob.XVIII-11 Op.21
【アンコール】
ハイドン/アダージョ ヘ長調
フォルテピアノ:ピート・クイケン
4. ハイドン/交響曲104番ニ長調Hob.I-104「ロンドン」
10年に及ぶ東響の音楽監督の任期最後となる定期演奏会を聴いた。スダーンの古典ものは以前聴いた自然で活き活き、ワクワクの演奏の記憶が今でも鮮明に残っている。今日はオールハイドンのしかも珍しい曲も入っていて、音楽監督としての締めの演奏会、ということでスダーンもオケもきっといつもに増して気合いが入るに違いない、と期待。
最初は交響曲の第1番。1番といってもモーツァルトのような少年時代のものではなく、ハイドン27歳頃の作品とのこと。当時仕えていたモルツィン伯爵家のために書いたというこのシンフォニーは、ディヴェルティメント的でサロン風のリラックスムードに包まれているが、上品な高級感が漂い、キリっとしたセンスが光っていて、こうして演奏会でじっと鑑賞するに相応しい作品に仕上がったいる。これを聴いたら、ハイドンの他の若い番号のシンフォニーも聴きたくなった。演奏も自然な息遣いが心地よい好演。
続いて、ピート・クイケンのフォルテピアノのソロでコンチェルトが2曲。ハ長調の方は最初にやったシンフォニーと同時期の作品とされているが、これも清々しさと柔らかなセンスが光る。ニ長調の方はハイドンが50歳の頃の有名な作品。こちらはやはり音楽の成熟度も訴えかけてくる力も格が違う。スダーン指揮東響の前奏がとても柔軟でチャーミングに誘いかけるような歌い回しが、ソロを迎える期体感を高める。クイケンのフォルテピアノは、オケの前奏をそのまま受け継いで、デリケートでチャーミング。「ぼくの歌を聴いて」と言っているように語りかけてくる。フォルテピアノの音は大きくないが、音色がとても多彩。ふわっとした音も芯のある音も、明るい音も曇った音も、空気が動くように変化する。
オケはソロが入ると、このデリケートな楽器の音を最優先で聴かせようと、できる限りの弱音で演奏する。もっと小さな場所で、もっと小さな編成でやれば、オケもここまで遠慮せずにもっと伸び伸びとフォルテピアノとの共演を楽しめるんだろうな、と思った。
最後の曲目は期待の「ロンドンシンフォニー」。これも枝葉末端まで神経を行き届かせ、デリケートなニュアンスを大切にした丁寧な演奏で、聴き手の心をくすぐった。ただ、この曲から伝わってきてほしい活力とか覇気があまり感じられない。何度も出てくる同音連打を跳ねずに思いっきりレガートで奏するのは、ピリオドでよくやるが、これもそんな印象の一因。全体的によく考えられ、工夫が凝らされた演奏ではあるが、やり過ぎ、いじり過ぎという印象を受けた。ずっと前にえらく感動したモーツァルトをやったときとは演奏スタイルがかなり変化したのではないだろうか、なんて思ってしまった。
スダーン指揮 東京交響楽団のモーツァルト 2006.9.9 サントリーホール
スダーン指揮ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団 2006.5.24 サントリーホール
東京オペラシティシリーズ第78回
東京オペラシティコンサートホールタケミツメモリアル
【曲目】
1.ハイドン/交響曲第1番ニ長調Hob.I-1
2.ハイドン/ピアノ協奏曲ハ長調Hob.XVIII-5
3.ハイドン/ピアノ協奏曲ニ長調Hob.XVIII-11 Op.21
【アンコール】
ハイドン/アダージョ ヘ長調
フォルテピアノ:ピート・クイケン
4. ハイドン/交響曲104番ニ長調Hob.I-104「ロンドン」
10年に及ぶ東響の音楽監督の任期最後となる定期演奏会を聴いた。スダーンの古典ものは以前聴いた自然で活き活き、ワクワクの演奏の記憶が今でも鮮明に残っている。今日はオールハイドンのしかも珍しい曲も入っていて、音楽監督としての締めの演奏会、ということでスダーンもオケもきっといつもに増して気合いが入るに違いない、と期待。
最初は交響曲の第1番。1番といってもモーツァルトのような少年時代のものではなく、ハイドン27歳頃の作品とのこと。当時仕えていたモルツィン伯爵家のために書いたというこのシンフォニーは、ディヴェルティメント的でサロン風のリラックスムードに包まれているが、上品な高級感が漂い、キリっとしたセンスが光っていて、こうして演奏会でじっと鑑賞するに相応しい作品に仕上がったいる。これを聴いたら、ハイドンの他の若い番号のシンフォニーも聴きたくなった。演奏も自然な息遣いが心地よい好演。
続いて、ピート・クイケンのフォルテピアノのソロでコンチェルトが2曲。ハ長調の方は最初にやったシンフォニーと同時期の作品とされているが、これも清々しさと柔らかなセンスが光る。ニ長調の方はハイドンが50歳の頃の有名な作品。こちらはやはり音楽の成熟度も訴えかけてくる力も格が違う。スダーン指揮東響の前奏がとても柔軟でチャーミングに誘いかけるような歌い回しが、ソロを迎える期体感を高める。クイケンのフォルテピアノは、オケの前奏をそのまま受け継いで、デリケートでチャーミング。「ぼくの歌を聴いて」と言っているように語りかけてくる。フォルテピアノの音は大きくないが、音色がとても多彩。ふわっとした音も芯のある音も、明るい音も曇った音も、空気が動くように変化する。
オケはソロが入ると、このデリケートな楽器の音を最優先で聴かせようと、できる限りの弱音で演奏する。もっと小さな場所で、もっと小さな編成でやれば、オケもここまで遠慮せずにもっと伸び伸びとフォルテピアノとの共演を楽しめるんだろうな、と思った。
最後の曲目は期待の「ロンドンシンフォニー」。これも枝葉末端まで神経を行き届かせ、デリケートなニュアンスを大切にした丁寧な演奏で、聴き手の心をくすぐった。ただ、この曲から伝わってきてほしい活力とか覇気があまり感じられない。何度も出てくる同音連打を跳ねずに思いっきりレガートで奏するのは、ピリオドでよくやるが、これもそんな印象の一因。全体的によく考えられ、工夫が凝らされた演奏ではあるが、やり過ぎ、いじり過ぎという印象を受けた。ずっと前にえらく感動したモーツァルトをやったときとは演奏スタイルがかなり変化したのではないだろうか、なんて思ってしまった。
スダーン指揮 東京交響楽団のモーツァルト 2006.9.9 サントリーホール
スダーン指揮ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団 2006.5.24 サントリーホール