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金子亜未 オーボエリサイタル

2014年03月10日 | pocknのコンサート感想録2014
3月10日(月)金子亜未(Ob)/平川加恵(Pf)
~紀尾井 明日への扉4~
紀尾井ホール

【曲目】
1.ドニゼッティ/オーボエ・ソナタ ヘ長調
2. サン=サーンス/オーボエ・ソナタ ニ長調Op.166
3.ポンキエッリ/カプリッチョOp.80
4.プーランク/オーボエ・ソナタ FP185
5.ブリテン/オウィディウスによる6つのメタモルフォーゼOp.49~第2、3、4曲
6.シューマン/アダージョとアレグロ 変イ長調Op.70
【アンコール】
平川加恵/さくらさくら変奏曲

「紀尾井 明日への扉」は、「紀尾井ニューアーティストシリーズ」を引き継いで始まった新進演奏家を紹介するリサイタルシリーズ。このシリーズの会員対象の招待枠に応募して聴いた。今回のアーティストはオーボエの金子亜未さん。まだ20代前半という若さで札幌交響楽団の首席を勤めている。

プログラムは前半にロマン派の耳に心地よい作品が置かれ、後半では今・現代の作曲家による刺激的な作品が中心となった。前半、金子さんは明るく歌に溢れた楽曲を、淀みのない伸びやかな息づかいで素直な歌心を伝えてきた。前半で最も印象に残ったのはサン=サーンスのソナタ。曲自体が持つ甘い叙情性が、息の長い滑らかなフレージングで丁寧に描かれていた。とりわけ第2楽章の、ピアノがハーモニーをシンプルに響かせる上でモノローグ風に奏でられる歌が心に沁みた。

後半の曲目にプーランクとブリテンが入っていたのが、このリサイタルを聴きに来る決め手だったが、後半では音色がより多彩になり、表現の幅も広がり、金子さんの実力が更に発揮された。

特に感銘を受けたのはブリテンの無伴奏の作品と、再びロマン派で締めた最後のシューマン。ブリテンでは物怖じすることなく果敢な攻めの姿勢を貫き、起伏に富んだダイナミックで赤裸々な感情表現を聴かせた。

シューマンのこの曲をオーボエで聴くのは初めてだったが、聴いている分にはオーボエのためのオリジナル作品のようにしっくりしていた。抒情と共にほとばしる情熱に溢れ、音楽の大きな波を捉えて乗っている感じ。平川さんのピアノも熱い息吹を感じる若々しい演奏で、二人の波長が合わさって単純な足し算より遥かに大きな波を作り出した。

集中力と高いテンションを感じる演奏だったが、フレーズの終わりでまだピアノが後奏を弾いているうちに、次のフレーズの準備の仕草を始めることがあったのがちょっと気になった。ブリテンの作品でも音楽が静止しているべき休符の間に動きがあると邪念が入ったように感じられてしまう。譜面は常に先を読む必要があるので難しいこととは思うが、音楽の現在地に全神経を集中させ、かつスムーズにその先に入れる余裕が持てると、高いテンションが更に高まるのではないだろうか。

アンコールは作曲家でもあるピアノの平川さんの書き下ろし? オーボエの繊細さと技巧が活かされた清々しいアンコールピースだった。このリサイタルを聴いて、金子さんのソリストとしての今後の活躍にも注目したいと思った。

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